《【書籍化】盡くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?》告白
――りこが好き。
りこに片思いをしはじめてから、誰にも言わずにずっと隠し続けてきた想いを、ついに本人に伝えてしまった。
しかも、告白しようと決意していたわけではなく、りこへの思いが溢れた結果だ。
「みなとくんがわたしをすき……?」
たどたどしい口調で呟いたりこの手から、力がすうっと抜ける。
抱き著いてくれていた溫かいが離れていく。
この行がりこの返事なのだろうか……。
拒絶をけたのかと思った瞬間、心もも凍り付いた。
ところがりこは水溜まりをぱしゃっと踏んで、俺の前に回り込んできた。
雨に濡れたりこと目が合う。
「湊人くん、私のこと好きって言ってくれたの?」
真っ直ぐに問いかけられ、今更自分がすごいことをしでかしてしまったのだと自覚した。
遅れてやってきた恥心に飲み込まれ、揺が止まらない。
俺が慌てふためいて口をパクパクかしていると、さっきとは違い消えりそうな聲で言葉が添えられた。
「安心して……。私、勘違いしてないよ……? 好きって、友達として的な意味だよね。うん、わかってる。それでも十分うれしくて……」
りこはそう言って、気を遣っているのがわかる笑みを浮かべた。
もし今俺が何も言わなければ、先走ってしまった告白をなかったことにできる。
現段階で何の勝ち目もないのに、好きだと言ってしまうなんてどうかしていた。
……そう、どうかしている。
それは重々わかっていた。
けれど、あのとき、あの瞬間、止められないほどりこを好きだと想った気持ちを否定することが俺にはできなかった。
「ごめん、りこ。違うんだ……。友達としてじゃなくて、一人のの子として俺はりこが好きなんだ」
「……っ。……うそ……」
目を見開いたりこが、両手で口を覆う。
突然こんな告白をされて驚くに決まっている。
俺は怯む気持ちを必死に押しやり、両手の拳を握り締めた。
中途半端なままでは終われない。
「りこに他に好きな人がいることは知ってる。だから、本當は振り向いてもらえるよう努力できたと思ったときに気持ちを伝えようと思ってたんだ。今日のデートもそのためにすごい気負っちゃって……それで失敗しちゃったんだけど……」
が強張り、顔が火照り、両足がわずかに震えている。
今までこんなふうに誰かに自分ののを打ち明けたことなどないから知らなかったけれど、気持ちを口にするのってこんなに怖いのか。
「こんな俺じゃまだ全然りこに好きになってもらえないのはわかってるのに、そんな俺なのにりこが優しくて可くて……、どうしても好きだって言わずにいれなかった。――いきなりこんなこと言われて、戸うよね。ごめん。でも、あの、応えてほしいとかそういうことじゃないから、安心して。ただ、気持ちを知ってもらいたかっただけなんだ。それで……、こんなこと言うのはおこがましいけど……俺、これからもっとりこに好きになってもらえるよう頑張るから、このまま好きでいることだけ許してもらえたら――」
「すき」
言葉を紡ぐほどしどろもどろになっていく俺の告白。
後半になってどんどん聲が弱くなり、消えてしまいそうになった時、りこが信じられない言葉をかぶせてきた。
「わたしもすき……。すき……! 湊人くんがだいすき……!!」
「えっ!? ええっ!?」
なんだ。
何が起きてるんだ一。
だってりこが好きなのは俺じゃない他の誰かのはずで……。
なのになんで今、俺のことを好きだって言ってくれてるんだ……。
気持ちを伝えて、りこからも気持ちが返ってくる。
そんな奇跡が起こるなんて微塵も考えていなかったから、予想外の狀況にまったく頭がついていかない。
「ちょ、ちょっと待って……!?」
「むりだよ、待てないよ……! うっ……うわーん……! こんな夢みたいなことが起きるなんてどうしたらいいのぉ……!」
「わあああ、りこ!?」
りこは天を仰ぐと、まるで小さなの子みたいに聲を上げて泣き出してしまった。
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