《【書籍化】盡くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?》今晩からどうする?

りこの怪我を気遣いつつ、ふれあい牧場から帰宅した俺たちは、雨に濡れてしまったこともあり、まず最初に二人とも風呂にった。

夕食に関しては、りこがいつもどおり手料理を作ると言ってくれたのだけれど、怪我のこともあるし、一日遊びまわって疲れているはずなので、マックのデリバリーを頼もうと提案した。

申し訳ながるりこを説得したりとすったもんだあった挙句、なんとか食事を済ませたのが七時過ぎ。

問題はそのあとだ。

ダイニングテーブルに向かい合って座った俺たちは、やたらともじもじしてしまいお互いの目を見れないでいた。

だって、昨日までの夜とは違うのだ。

今目の前にいるのは、初めての彼になってくれたの子。

好きな気持ちを隠して接していたときとは何もかもが違うから、どう振舞えばいいのかわからない。

りこはどう考えているんだろう。

突然、態度を変えたら引かれるのか。

むしろそういう変化をんでいるのか。

そもそも、人らしい態度がどんなものなのかほとんど想像ができないし、それがわかったところで俺に実踐可能なのかどうかも怪しい。

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腕を組んで考え込んでいると、不意に頬を優しくむにっと押されるがした。

驚いて顔を上げると、ダイニングテーブルに乗り出したりこが、指先で俺の頬をぷにぷ

にと押している。

えええっ、何そのかわいい行!?

揺しまくっている俺にむかって、りこがいたずらっぽく笑う。

「湊人くんが難しい顔をしてるので、ついちょっかいを出してしまいました。えへへ」

いや、機もかわいすぎか!!

りこは一見いつもどおりに見えるけれど、ちょっとした瞬間、恥ずかしそうに視線を落としたり、かと思えば熱のこもった瞳で俺をじっと見つめてきたりして、明らかに今までとは様子が違っている。

そのせいで、ドキドキが止まらない。

「それで、湊人くんは何を悩んでいたの?」

椅子に座り直したりこが尋ねてくる。

一人で思い悩んでいても答えが見つかりそうにないので、ここは素直に打ち明けてみようと思う。

デートの際、何もかも自分の中で完結しようとして、様々な失敗をしでかした結果から、俺は、一人で背負いこむことを努力と履き違えてはいけないと學んだのだった。

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「りこもなんとなくわかってると思うけど、俺、の子と付き合ったりするのって初めてのことなんだ。それで……付き合うって的にどうしたらいいのかわからなくて……。りこはどんなふうに付き合いたいとかって希ある? もしよかったら教えてくれないかな」

「希……」

りこはポッと頬を赤くしたが、考え込むこともなく答えを返してくれた。

「私もお付き合いって初めてで、どういうふうにしたらいいかわからないの。だから、湊人くんがしたいことをしてほしいな」

「俺がしたいこと?」

「あのね……わ、私っ……」

「うん」

「湊人くんにすべてを捧げる覚悟はできているのです……!」

「ぶっ。りこっ、ななな何言って……!?」

すっと立ち上がったりこが、ダイニングテーブルの周りを回って、俺のもとへとやってくる。

目の前に立ったりこにそっと手を取られると、破裂しそうぐらい心臓が騒いだ。

「湊人くんは人になったの子とどんなことがしたい……? 教えて。全部葉えてあげたいの……」

「……っ」

熱を帯びて潤んだ瞳で俺を見つめながら、囁くようにりこが言う。

好きな子にそんな言葉をかけられて、冷靜でいられるはずがない。

俺はごくりとを鳴らした。

りこと一緒に寢ようとしたあの雷の夜のことが、當たり前のように思い出される。

『もしも今、湊人くんがムラムラしてくれていて……そ、その責任を私が取れるなら……私は大丈夫なの……』

そう言って迫ってきたりこ。

俺は、理を総員してりこにれたい気持ちを抑えたけれど、今とあのときでは狀況が全然違う。

あのときは、りこには他に好きな人がいたし、れられても平気だと言いながらも、どこか寂しそうだったから。

俺とそういうことをしたら、りこが傷つくんじゃないかと思って、必死に耐えたのだっ

た。

……でも、今のりこは俺の彼で、俺をす、好きだと言ってくれている。

と、いうことは――。

え……俺ってもう、何も我慢することなくりこにれてもいいのか……?

りこもいいって言ってくれてるんだし、問題ないんだよな……!?

「り、りこ……俺からも手にれていい?」

ドキドキしながら問いかけると、りこは恥ずかしそうに頷いてくれた。

どうしよう。

死ぬほどうれしい。

でも、すごい張する……。

ぎこちなく手をかして、俺の右手を握ってくれているりこの手の甲に指先でれる。

繋がれた手を握り返すのとはわけが違う。

自分かられたという事実、それを許されたという現実が押し寄せてきて、がいっぱいになる。

れることを好きなの子から許可される、その喜びが絶大すぎてどうにかなりそうだ。

「はぁ……やばい……幸せ過ぎる……」

言うつもりのなかった本音が、勝手に口から零れ落ちた。

「ほんと……? ……それなら、ね……もっとれて……?」

「……っ」

もっと……。

その言葉の裏に隠された意味を意識した途端、がカラカラになってきた。

頭は熱に浮かされたようにぼーっとなってしまい、まともに回らない。

意識が的な何かに飲み込まれて、普段の自分ではなくなっていく。

りことキスをしたのはたった一度。

一瞬れ合っただけのそれは、りこが與えてくれたものだ。

俺からキスをしたことは當然一度だってない。

りこと手を繋いだことも、まだ數えるくらい。

だから何をどうしたらいいのかわからない。

ていうか大事な過程を全部すっ飛ばして、ゴールに向かっている気がしないでもないが、そんなことを考えている余裕なんて皆無だ。

「りこっ……!」

獣のように荒い呼吸を繰り返しながら、りこの肩を両手でガッと摑む。

そのまま勢い任せで、りこを床に押し倒した。

「きゃっ!?」

さすがにいきなり床に倒されるとは思っていなかったのだろう。

バランスを崩したりこが、驚きの悲鳴を小さく上げる。

その瞬間、に飲み込まれていた俺は我に返った。

「ごめん、りこ……!! あああ、俺、なんてことを……!!」

「あっ、あのっ、私大丈夫だから……。ちょっと驚いただけなの……」

俺の真下にいるりこは、健気にもそんなことを言ってきた。

りこは真剣な顔をしていて、俺がむのなら何をされてもいいと本気で思ってくれているのだろう。

だからこそ、俺だってちゃんとりこの気持ちを思いやらなければいけなかったのに。

馬鹿な俺は夢みたいな展開に浮かれすぎて、完全に我を忘れ、ただ自分ののまま振舞おうとしてしまった。

死にたい。

以前とは違って今はりこと付き合ってるからとか、今はりこが好きだと言ってくれているからとか、そんなものは自分勝手に振舞っていい理由になんてならない。

しかも、冷靜になった今ならわかる。

俺が何をしてもれる気でいるりこは、を固くし、このあと起こることを明らかに恐れている。

りこ自はそれに気づいていないようだけれど。

怖くて當然だよな……。

りこはの子だし、これまで男と付き合ったことすらないのだから。

なのに、俺のためにれようとしてくれていたんだ。

「本當にごめん。怯えさすようなことをして後悔してる……」

りこの手を引いてを起こす。

向き合って座る格好になると、りこは戸ったように瞳を泳がせた。

「あの……私が変な聲を出したから、雰囲気臺無しにしちゃった……? ごめんなさい……。ほんとに私、全然大丈夫だから、続きを……してほしいの……」

「りこ、ありがとう。気持ちはほんとすごくうれしい。それで舞い上がってわけわかんなくなっちゃったぐらいだし。でも、前の時とは違う理由で、やっぱり俺たちにそういうのは早いと思うんだ」

「ど、どうして……?」

「だって、りこ、震えてるよ」

「えっ。あ、あれ……な、なんで」

本気で焦っているりこが、泣きそうな顔で問いかけてくる。

「ち、違うの。私、本當に湊人くんが好きだから、なんでもできるって思ってるのっ。待ってね。今、ほんとだって証明するね……!」

涙目で必死に訴えてきたりこは、何を思ったのか指先を自分のパジャマのボタンにかけた。

指が震えているせいで手間取りながらも、第一ボタン、第二ボタンが外される。

わけがわからずりこの様子を眺めていた俺は、そこでハッと我に返った。

「わああああっ! りこ、だめ! ストップー!!」

慌てて手を振り回しながら、止めにる。

「りこの気持ちは本當にちゃんと伝わってるから! だからこそ、俺はりこにすごくれたいし。けど、前にも言ったとおり、ただれればいいってわけじゃないんだ」

俺は、シャツの隙間から見え隠れするの谷間から必死に目を逸らし、りこを諭した。

「俺にとって、何より大事なのはりこの気持ちで……なんて言ったらいいのか……ごめん、説明がへたくそで。ただ、俺たちまだ心が近づきはじめたばかりだって思っていて……。心が寄り添っていないのに、だけ近づけようとしたら、俺絶対さっきのようにりこを傷つけちゃうし」

「私、湊人くんになら傷つけられてもうれしいよ……?」

「……っ。り、りこっ……そういうのは俺の頭がまた沸騰しちゃうから言っちゃだめだ……。ていうか、俺はりこを傷つけたくないからね! そういうのは絶対だめだ。俺はりこを死ぬほど大事にしたいんだから!!」

「あ、わああ……そんなこと言われたらキュンだよお……」

なんだか勢いに任せてとんでもないことを言ってしまった気がする。

目の前で頬を両手で押さえたりこが、かわいいことを言って悶えているし……。

「湊人くんにれてもらえたら、絶対うれしいはずなのに……。ずっとそのことを夢見てきたのに、どうして私、れ合うことを怖いって思っちゃうんだろう……」

俺の手をキュッと握りながら、りこが問いかけてくる。

俺だってりこにれたいけれど、れ方を間違えて傷つけないか死ぬほど怖い。

まだちゃんとりこの心にれたことがないのに、心と、どちらも大事にしながら同時にれるなんてハードルが高すぎたのだ。

「多分だけど、俺たちどっちもまだ心の準備ができていないんだと思う。だけ先走って、心を置いてけぼりにしたりしたら、心が怖がってもしょうがないよ」

「心の準備ってどうしたらできるかな……?」

「うーん、無理することじゃなくて、日々の積み重ねで自然とできるもんじゃないのかな」

「日々の積み重ね……毎日しずつれるとか?」

「お、おそらく」

「なるほど……」

それまでしょんぼりしていたりこが、元気を取り戻したように微笑んでくれた。

「それじゃあ私、これから毎日湊人くんにって、しでも早く心の準備が終わるようにがんばるね! では、さっそく――ぴとっ」

俺に抱き著いてきたりこは、そのまま俺のに頬をすり寄せてきた。

かわいくてどうにかなりそうだ。

しかも、さっきのようにりこが震えることはない。

「りこ、今は怖くないの……?」

「うん、今は平気。湊人くんの腕の中、すごく安心するの……。あ! もしかして……」

「ん?」

「私かられるのは怖くないのかも……」

「……!」

「ね、試しにキスしてもいい?」

「んんんんっ!? い、いや、待った! うれしいけど、今はだめだ……!!」

「……だめなの?」

「だ、だめです……!」

を総員して、必死にかぶりを振る。

これまでの一連の流れを考えると、ここでキスなんかされたら、また理が吹っ飛んでしまう恐れがある。

二度とりこを怖がらせないためにも、そんな事態は何が何でも避けなければいけない。

くっ……りこからのキスを諦めることになるなんて……。

「殘念だな……。また明日もキスしていいか聞くね」

「……!?」

「これから毎日、キスしていいか聞いちゃおうっと!」

「……!?!?」

付き合う前と付き合ってから、たしかに毎日の生活がガラッと変わりそうだ。

今回の話書くのが楽しくて長くなってしまいました……

9章ラストへの想たくさんありがとうございます!

中學時代の話はもうししたら書く予定です。

一応そこがこの語のクライマックスになるかなと思っています。

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『★★★★★』に変えて応援してくれるとうれしいです……!

想欄は楽しい気持ちで利用してほしいので、

見る人や私が悲しくなるような書き込みはご遠慮ください( *´꒳`*)੭⁾⁾

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