《【書籍化】盡くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?》バカップルだとからかわれるのも意外と悪くない

澤は、俺がデートの相談をした直後から休んでしまったので、まだそのときの結果については話ができていない。

他人のをワイドショー覚で面白がるようなところのある奴だが、なんだかんだ助言もくれたし、數ない友人の一人だ。

相談に乗ってくれたお禮と、報告はきっちりしておきたい。

それから、澤だけではなく、かなりためになるアドバイスをくれた麻倉にも改めてお禮を言いたいと思っていた。

そんなわけで、澤と麻倉にデートの顛末とお禮を伝えてもいいかりこに確認を取ったところ、なんとりこは「私も湊人くんと一緒にありがとうを言いたいな」と返してきた。

直接相談に乗ってもらったのは俺だけだけど、澤と麻倉の助言もあって付き合えるようになったのだから、りこも二人には謝しているのだという。

というわけで、久々に澤が登校してきたこの日の晝休み、俺たちは四人で晝飯を食べながら話をすることになったのだった。

◇◇◇

「こ、こここのメンツで集まるのって遠足のとき以來だね! やーなつかしいなー! なー! 新山、おまえもそう思うだろー!」

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「う、うん。……ていうか澤、棒読みすぎるよ」

「仕方ないだろ……! これでも一杯がんばってるほうなんだよっ」

りこと麻倉を前にした途端、澤が挙不審になるのは相変わらずだ。

俺もりこ以外の子に対しては同じようなものなので、澤のことは言えない。

張でガチガチになっている俺たちの向かいで、の子二人はそれぞれ全然違う反応を見せている。

「りこ、私の隣じゃなくて新山くんの隣に座ればいいのに。せっかく付き合ってるんだし」

「湊人くんの隣……! それはうれしいけど、恥ずかしいよぉ……」

「もう~! りこってばほんと初心なんだから! かわいいーっ。私が男だったら絶対付き合いたかった! ん? でも付き合えるか?」

「ええっ、ちょ、麻倉!?」

りこのことをよく理解し、りこからもかなり信頼されている友人の麻倉がライバルに立候補したら、間違いなく俺に勝ち目はない。

慌てまくってガタッと椅子を引いたら、麻倉は大聲で笑い出した。

からかわれたんだと気づき、顔が一瞬で真っ赤になる。

「ごめん……! 冗談だったのに、真にけて騒いだりして……」

ぼそぼそと早口で謝りながら、椅子に座り直す。

「あはは。私のほうこそからかってごめんねー。新山くんもスレてない反応返してくれるから、面白くってついからかっちゃうんだよね。何気にりこと新山くんって、そういうとこ似てない?」

「……! ほ、ほんと……?」

俺が答えるより先に、りこが麻倉に問いかけた。

「うんうん、新山くんからデートのことを相談されたときにも言ったけど、ふたりとも純粋でほのぼのしてて、同じ空気醸し出してるよ。ね、澤くん」

「は、はいっ! 俺もそう思いますっ」

澤が必死の形相で頭を縦に振りまくる。

麻倉の前の澤は、ほとんどオウム返しマシーンになってしまうので、あまり參考にならないけれど、それでもりこはうれしそうにはにかみ笑いを浮かべた。

「湊人くんと似てるなんてうれしいな……。そういうのずっと憧れがあったの。ほら、夫婦っていつの間にか笑い方や顔つきが似てくるっていうでしょう?」

かわいく照れながらりこが言う。

りこのらしさを前に、俺たち三人はほわほわした気持ちになった。

數秒後、ハッと我に返ったように麻倉がツッコミをれる。

「もう、りこったら気が早いんだから! 夫婦じゃなくて二人は人でしょー!」

「あっ……あ、あはは……そ、そうだった……。私ったら間違えちゃった。あははははー」

「りこ? 目が泳いでるけどどうしたの? そんな揺するところだった?」

「うえええ!? 泳いでないと思うよお!?」

ま、まずい。

りこのピンチだ。

「あ、あのっ、それより、ほら! 今日、澤と麻倉に時間をもらったことについて話してもいいかな!?」

「ぷっ、ちょっと新山くんってば。そんな慌ててりこを庇わなくても、これ以上いじめたりしないってー。まったく、ちょいちょい見せつけてくれるんだから」

見せつけたつもりなんてまったくないぞ!?

でも、とにかく麻倉が関心をこちらに向けてくれてよかった。

「えっと、澤と麻倉。こないだはデートの相談に乗ってくれてありがとう。澤が休んでたからお禮を言うのが遅くなっちゃったけど、二人には心から謝してるよ」

「私からもお禮をさせてね。澤くん、レイちゃん、本當にありがとう。湊人くんと前より仲良くなれたのは二人のおかげです」

「改めてお禮を言われると照れるんだけど……」

「うんうん……」

麻倉と澤が照れくさそうに頭を掻く。

二人のきがシンクロしているのがしおかしかった。

「ていうか、まるで結婚の報告されてるみたいじゃない?」

さっきのりこの発言が頭に殘っていたのか、麻倉がとんでもないことを言い出す。

「……へっ!?」

「……わあ!?」

俺とりこは、思わず同時に聲を上げてしまった。

「なんで結婚とか夫婦って単語が出るたび、二人とも過剰に反応するの? ハッ、まさか――」

「えっ、な、何……」

「さてはあれでしょー! 社會人になったら結婚しようねー♥ みたいなやりとりをしてるから照れくさいんでしょー! もー! このバカップルめー!」

「……っ」

からかうような表を浮かべた麻倉が、りこの頬を指先でぷにぷにと突く。

一瞬、バレたかと焦ったが、勘違いをされているだけなのでとにかくよかった……。

ていうか、頬っぺたぷにぷにされてるりこかわいすぎるな。

いつもの癖でポーッと見惚れてると、橫から歯ぎしりをする音が聞こえてきた。

「ぐぬぬぬ……ずるいぞ新山……。……ちょっと前まで俺と同じ底辺で燻ぶってたのに……」

「お、おい? 澤、突然どうしたんだよ?」

「新山の幸せは俺としてもうれしい! でも俺だって幸せになりたいよ! 新山みたいに幸せオーラ出しまくりたい!」

「えっ、俺そんなだった……?」

「そんなだった! りこ姫もそんな新山のことうれしそうに見つめてるし!! しかもまだ學生だってのに、結婚の話までしてるとか!! バカップルめええっ! うらやましすぎる! 俺も彼ほしいーッッッ!!」

それまでカチコチになって固まっていた澤が、突然席を立って吠えるように聲を上げた。

本當に仲の良さを見せつける気なんて全然なかったのだけれど……。

澤には悪いが、バカップルと言われても悪い気が全くしない。

それどころかちょっとうれしい……。

だって、りこと仲がいいって認められているみたいだし……。

なるほど、この発想、確かに俺はバカがつくほど浮かれてしまっているな。

でもずっと片思いをしていた高嶺の花すぎるの子の彼氏になれたんだ。

浮かれずにいるなんて無理な話だ。

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