《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》28 誤解 1
フェリクス様の腕の中で眠りに落ちた翌日、私は私室で診察をけていた。
昨夜、疲労と張から気絶するように眠りについた私を心配して、フェリクス様が侍醫を手配してくれたためだ。
朝一番に、王宮の庭に咲いた花を銀のトレーに乗せて屆けてくれた彼は、私の顔を見て眉を寄せた。
「まだ顔が良くないな。昨日の夜は疲労しているように見えたし、何より君は細過ぎる。今日は一日寢臺の上で過ごしてくれないか」
ただでさえ忙しい一國の王であるにもかかわらず、私のことを心配してくれる彼の優しさを、ありがたいとも申し訳ないともじる。
これ以上心配をかけたくなくて、2年間眠って過ごしたのだから、あと一日くらい眠ってもどうということはないわと頷くと、彼は安心したように微笑んだ。
「よかった。朝食は寢室に運ばせるよ。その後に、王宮の侍醫を向かわせるから、心配事があれば相談しなさい」
素直にうなずくと、フェリクス様はまるで私がい子どもでもあるかのように頭をでてから部屋を出て行った。
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昨日から思っていたけれど、フェリクス様は私を小さい子どものように扱い始めた気がする。
戦場へ2年間出征していたことで、神的に長して余裕が出てきたのかしら、あるいは……と考えたところで、重要なことに気付く。
そうだわ! 私が2年間眠り続けたことで、16歳のフェリクス様と17歳の私だった年齢差は逆転してしまい、18歳のフェリクス様と17歳の私になってしまったのだわ。
「まあ」
今さらながら驚いて目を丸くした後、『年上のフェリクス様』……と考える。
これまで想像したこともなかったけれど、それはそれで素晴らしいことのように思われる。
「年上の夫というのも、頼りがいがあっていいわね」
そうミレナに言うと、微笑みながら返された。
「國王陛下であれば、何でもよく思えるだけではないですか」
……さ、さすがミレナだわ。私のことをよく分かっている。
そう心しながら、私はベッドに背中を預けた。
その後、できるだけたくさんの朝食を取り、侍醫の診察をけたけれど……。
「……え?」
診斷結果を耳にした私は、びっくりして目を丸くした。
侍醫の言葉ははっきり聞こえていたけれど、驚き過ぎて理解することができなかったからだ。
対する侍醫は、辛抱強く同じ言葉を繰り返す。
「王妃陛下、ご懐妊でございます」
2度目の言葉ははっきりと耳に屆き、その意味を理解した瞬間、涙腺が崩壊したかのように涙がぽろぽろと零れ落ちた。
嬉しくて、嬉しくて、気持ちが留まり切れず、から溢れてくる。
私はもう十分に幸せで、満たされているのに、さらなる寶を與えてもらうなんて。
「……フェリクス様との赤ちゃんだなんて、これほどの幸せがあるものかしら」
私の脳裏に、ふくふくした赤ちゃんが丸まって眠っている姿が浮かんでくる。
その隣には、小さな赤ちゃんを抱いて、幸せそうに微笑むフェリクス様の姿が。
「……フェリクス様が喜ばれるわ」
そのことを想像すると、涙だらけの私の顔に笑みが浮かんだ。
眠っていた2年間を差し引くと、実質半年程度の結婚生活だ。
そんなわずかな期間で子どもを授かるなんて、素晴らしいことだわとお腹をでたところで、一つの事実に気付く。
「この子は私が眠っていた間も、お腹の中にいたのだわ。まあ、何て強い子なのかしら」
さすがフェリクス様のお子だわ。
そう考えたところで、既に彼に似たところをさがそうとしている自分に気付き、おかしくなる。
「ふふふふふ」
そう笑い聲を上げたところで、こちらを見つめている侍醫と目が合った。
その冷靜な視線にしだけ頭が冷え、慌てて両手で口元を押さえる。
「ご、ごめんなさい。どうやら私は嬉しくて浮かれているようだわ。初めての子を妊娠していると告げられるなんて、人生で一度しかないでしょうから、大目に見てちょうだい」
私の言葉を聞いた侍醫は小さな笑みを浮かべると、使用した診察を片付け始めた。
「この後、國王陛下のもとにお伺いし、王妃陛下の病狀をお伝えすることになっています。そのため、ご懐妊の旨を報告しようと思うのですが、よろしいですか?」
「ええ、お願いするわ」
フェリクス様はどれほど喜ばれるかしらと考えると、自然と顔がほころぶ。
「……っ、うっ、うっ」
その時、嗚咽をかみ殺したような聲が聞こえたため、驚いて後ろを振り返ると、ミレナが涙をぼろぼろと零していた。
「ルピア様、お、お、お、おめでとうございます……」
私の妊娠を同じように喜んでくれるミレナに、私は両手を広げた。
たったそれだけの作を見て、ミレナは私のもとまで駆け付けると、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「本當におめでとうございます、ルピア様! まあ、戦爭に勝利しただけではなく、王國の未來までご誕生あそばされるとは、我が國にとって何と素晴らしいことでしょう! ルピア様は、我が國に幸福を授けてくださる存在なのですわ!!」
「ミレナったら大袈裟だわ。でも、私もすごく嬉しいの。ああ、歌って踴り出したい気分だわ」
「えっ! 歌うのはまだしも、踴るのは我慢してください。ただでさえ、昨日はお倒れになったうえ、お腹にはお子様がいらっしゃるのですから」
たしなめられた私は素直にうなずくと、もう一度ミレナを抱きしめた。
その後、侍醫が部屋を出て行ってからも、私は興冷めやらぬ狀態で、お腹にいる子どもについて々と思い巡らせた。
その中で何度も何度も考えたのは、フェリクス様はものすごく喜んでくれるだろうということだった。
彼は忙しいだろうから、政務が終わるのは夜更けになるだろうけれど、もしかしたら今日はいつもよりほんのちょっと早めに切り上げてくれるかもしれない。
そんな風に想像して、浮かれた狀態で過ごしていた私のもとにフェリクス様が訪れたのは、診察からわずか一時間後のことだった。
まあ、診斷結果を聞いて駆けつけてくれたのだわ!
嬉しくなった私はぱっと寢臺から降りると、扉口に立っているフェリクス様のもとまで走り寄る。
「ルピア様、走ったりしては危のうございますわ!」
慌てて制止するミレナに対し、「外せ」とフェリクス様が短く言葉を発した。
その口調が普段よりも鋭く聞こえたけれど、嬉しい報告を聞いて、普段にない狀態にあるのだわと解釈する。
ミレナも同じようにじたようで、笑顔でフェリクス様と私に頭を下げた後、退出していった。
ぱたりと扉が閉まり、2人だけの空間になった途端、私は「フェリクス様!」と名前を呼びながら、満面の笑みで彼を見上げた。
ああ、幸せで笑いが零れる瞬間とは、こういう時を言うのだと実する。
「侍醫から話を聞いて、駆け付けてくれてありがとうございます。私も先ほどから笑いが止まらなくて、困っていたところだったの。ああ、フェリクス様、私は今、これ以上はないというほど」
「………誰の子だ?」
私の言葉を遮って彼が発した言葉は低く、きしみ過ぎていて、上手く聞き取ることができなかった。
そのため、私はぱちりと目を瞬かせると、小首を傾げて彼を見上げる。
「ごめんなさい、もう一度言ってもらえるかしら?」
その時初めて、彼が険しい表をしていることに気が付いた。
歯を食いしばっているのか顎は強張っていて、瞳はぎらぎらとっている。
「………え? フェ、フェリクス様?」
一どうしたのかしらと驚いて見上げる私に対し、フェリクス様は強張った口をかし、きしんだ聲を出した。
「腹の子の父親は、………誰だ?」
「え? もちろん、あなた………」
フェリクス様を見上げながら、私は何を當たり前のことを答えているのかしらと、戸っていた。
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