《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》36 真実 1
―――ああ、私は死ぬのだなと、その瞬間に理解した。
呼吸をすることができない。
苦しみとともに命の火が消えていくことをじながらも、最期の瞬間の心殘りはルピアのことだけだった。
―――私がいなくなったら、彼はきっと泣くだろう。
―――このまま死んでしまい、會えなくなるのならば、意地を張らずに彼をけれるのだった。
分かっている。
分かっていた。
もはや、どうにもならないほど彼に囚われていると。
ただ、そんな風に私を虜(とりこ)にしておきながら、私自を変容させておきながら、素知らぬ顔で他の男の子どもを籠った彼がどうしても許せなかったのだ。
だが、それは傲慢な行為だった。
全てをなくすと分かっていたのならば、すがりついてを乞い、ただただ希っただろうから。
私はどこかで彼は私のものだと思っていて、だからこそ傲慢にも『許せない』と考えたのだろう。
その傲慢さの報いをけ、私は彼を誤解させたまま死んでいこうとしている。
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彼を悲しませることだけはしたくないのに、深い傷を與えたまま、彼を一人そうとしている。
ああ、最後に、彼をしていたことをどうにかして伝えたい。
彼には何一つ瑕疵がなく、私を含めた誰もが、正しく彼をしていたと知ってほしい。
そう心の中で希った瞬間―――どういうわけか突然、息苦しさから解放された。
真っ暗な闇の中に閉ざされていた意識にが差し込み、周囲の音が聞こえ始める。
あり得ない事態に驚いて目を見開くと、―――最初に目に映ったのは、國花と同じしい紫だった。
それが彼の瞳だと気付いた瞬間、彼は幸せそうに、まるでしい者を見つめているかのように、私に向かって微笑んだ。
「ルピ……」
しかし、私が名前を呼ぶよりも早くその目は閉じられ、しい瞳が見えなくなった。
「……ルピア?」
私の腕の中に倒れ込んだ、世界で最もしい者の名前を呼ぶ。
しかし、彼が返事をすることはなかった。
その瞳が開かれることも。
―――その後、何年も、何年も、彼は眠り続け、目を覚ますことはなかった。
私がどれほど後悔しても、泣き崩れても、希っても、を乞うても、彼は微だにしなかった。
永遠にも思える長い長い時間、私はただ、そのしい紫に焦がれ続けることしかできなかったのだ―――……。
▲▼▲▼▲▼▲◇▲▼▲▼▲▼▲
「お…………、王!?」
倒れ込んだルピアを腕に抱えたまま、狀況を確認しようと顔を上げると、吃驚した様子のギルベルト宰相と目が合った。
彼はこれでもかと目を見開き、見たこともないほど口を開いている。
狀況が異なればおかしくじただろう彼の表も、迫した狀況下では、常にないことが発生していることを実させ、焦燥を強くするだけだった。
次の瞬間、ギルベルトはどっと涙を流すと、極まった聲を上げた。
「ああ、フェリクス王! ルピア妃が王の毒を吸い出してくださったのです!!」
宰相の言葉を聞いた途端、これまでの記憶が一気に蘇る。
……ああ、そうだ。
私は式典の最中に、毒々しいをした蜘蛛に腕を噛まれたのだ。
すぐに馬車に乗り込み、手當てをけるために王宮を目指したが、無駄な行為であることは自分でも理解していた。
あの毒蜘蛛に噛まれて生き延びた者は、これまで誰もいなかったのだから。
だが、最期ならば、ルピアに會って、話をしなければならないと思った。
私がいなくなった時に、彼が自分を責めることがないよう、彼の誤解を正さなければと。
そのため、王宮を目指すのは正しい行だと考えたのもつかの間、馬車の中で意識を失い……。
次に気付いた時には、國花と同じをした彼の瞳に見惚れていた。
しいな、と心から思った。
そんな私に対し、彼は誰よりもしい笑みを浮かべてくれたのだ……。
―――と、そこまで回想したところで、腕の中の重みがずしりと増したようにじた。
はっとして視線を落とすと、意識を失った狀態のルピアがいた。
「私の毒を吸い出したとは、まさかルピアは蜘蛛の毒を飲んだのか!?」
私の言葉を聞いたギルベルトは、その時初めてルピアの狀況に気付いたようで、揺した様子を見せた。
それから、私の腕の中の彼を見下ろすと、一瞬にして顔を青ざめさせた。
―――一見しただけで、ルピアの狀態の悪さは見て取れた。
先ほどまでの私がそうであったように、ルピアの全はどす黒く変していたのだから。
「まさか吸い出した毒を全て、彼が含んだわけではあるまい……」
確認する私の聲に混じって、ミレナの掠れた聲が耳にった。
「……何ということ、ルピア様、代わり…………」
―――その瞬間、私は全てを理解した。
そして、思い出す。
ルピアが私に話してくれたを。
『私は……失われた魔の末裔なのです』
『私は大きな魔法が1つ使えるのです。夫となった相手の代わりになれるという魔法が』
『陛下が怪我や病気をした時、それを私のに引きけ、治癒することができます。私が代わりになった時點で、陛下のは健康に戻りますし、たとえ陛下の怪我や病気が命にかかわるようなものであっても、引きけた私が死ぬことはありません。時間はかかりますが、私のはそれを完全に治癒できるのです』
婚姻した夜に、他ならぬ彼自が教えてくれた言葉の數々が蘇ってくる。
「……ああ」
私は腕の中の彼を見下ろした。
「私の代わりに、なったのか……?」
発した聲はかすれ過ぎていて、自分でも聞き取れないほどだったが、ギルベルトが息を呑んだ音が聞こえた。
……ギルベルトにも、冗談めかして彼のを話したのだったか……。
私は彼を抱く腕に力を込めると、ゆっくりと立ち上がった。
その様子を見た臣下たちが、驚愕の聲を上げる。
「へ、陛下! おにはまだ、蜘蛛の毒が殘っております! 立ち上がってはなりません!!」
「陛下がご心だ! 毒が全に回っているのに、王妃陛下を抱えていらっしゃる!!」
「騒ぐな! 毒は抜けた!」
普段通りの聲で制すると、皆はびくりとを強張らせ、口をつぐんだ。
臣下たちが驚愕の表で私を見つめる中、ルピアを抱えて通り抜けていく。
驚くほどに、私のは普段通りだった。
痛さも辛さもなく、痺れも作不良もなく、彼を抱え上げることに何の苦労もない。
―――ルピアが全て、そのに引きけてくれたから。
抱え上げた彼の全は燃えるように熱く、汗をかきながらも震えていて、ぜいぜいとおかしな呼吸音がする。
そして、意識がないのに、顔は苦しそうに歪められていた。
ルピアはきっと、苦し気な表を他の者に見られたくないだろうと考え、侍醫とミレナにのみ付いてくるよう指示を出すと、大勢の者でごった返す部屋を足早に後にした。
代わりになったルピアの能力について、はっきりと理解できているわけではなかったが、それでも―――私が彼に救われたことだけは理解していた。
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