《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》37 真実 2
―――私はどれだけ、ルピアのことを理解していたのだろう?
恐らく、全くと言っていいほど理解していなかった。
全てが思い込みによる誤解であり、だからこそ、私は今、その報いをけている。
ルピアとの思い出を見つめ直す度に、彼が與えてくれた思いやりとに気付かされ、が締め付けられるのだ。
彼は恥ずかしがり屋で、言葉が足りないタイプだと理解していたはずなのに、彼が口にしなかった多くのことを、なかったものとして扱ってしまった……目に見えていた、數々のヒントに気付きもせずに。
……ああ、私はもっと多くのことを、彼に尋ねるべきだった。
彼の言葉をしっかりと聞いて、彼が見つめている世界を理解すべきだった。
そうすれば、これほどまでに彼のことを見誤ることもなかっただろうに……。
彼との関係におけるターニングポイントは、隣國との戦爭だった。
その時までの私は、ルピアにゆるやかな好意を抱いていた。
彼は優しくて思いやりがあり、自分のことよりも相手のことを優先していたから。
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真面目で一所懸命で、どんな小さな事柄にも熱心に取り組んでいたから。
いつだって、「フェリクス様、フェリクス様」と私を気に掛けてくれたから。
―――そんな彼に見つめられることが嬉しくて、彼に名前を呼ばれることが嬉しくて、……あの時既に、私は妃に特別な思いを抱いていたのだろう。
だからこそ、開戦が決まった時、彼を我が國に殘すことができず、母國へ戻るようにと頼んだのだ。
―――責任の強い彼がこの國に殘りたがっていたことも、王妃のあるべき姿としてこの國に留まらせるべきであることも分かっていたが、自分の要を優先させたのだ。
なぜならルピアが危険な場所にいると考えるだけで心が休まらなかったし、彼が私を待っていると考えるだけで、何としても彼のもとに戻らなければならないとの気持ちになれたからだ。
そして、その気持ちは戦爭中も変わらなかった。
それどころか、彼と離れたことで、私にとって彼がいかに大切な存在かを認識させられた。
ふとした時に思い出すのは、いつだってルピアのことだったからだ。
―――週に1度、ルピアは戦場の私に手紙をくれた。
季節の移り変わりを教えてくれ、彼が元気だと知らせてくれ、私のことを心配してくれる、読むと心が溫かくなる手紙を。
己の命と兵の命を守ることに一杯で、余裕も娯楽もない毎日の中、彼からの手紙を唯一の寶のようにじていた。
そのため、屆くとすぐに皆から離れた場所に座り、一人で読むのが習慣となっていた。
―――あの日、戦場で敵兵から奇襲された時も、私は一人離れた場所に座り、彼からの手紙を読んでいた。
油斷していたところを襲われ、驚く間もなく、を刺し貫かれる痛みと熱さを覚える。
しかし、ここで死ぬわけにはいかないと、無我夢中で足をかした。
そして、わずかな可能にかけて崖から飛び降りた。
次に目が覚めた時には、テオを含めた1ダースほどの兵に囲まれていた。
驚くべきことに、痛みも苦しみもなく、確認すると跡形もなく傷が消えていた。
命にかかわるほどの大きな傷であったはずだ。
何事が起ったのかと驚愕する私に、テオは『虹の神が現れて、王の傷を治した』と説明した。
そのようなことがあり得るのかと半信半疑だったものの、傷が消えた理由を他に説明することができず、テオの証言をけれた。
傷一つない姿で戻った私を見て、兵たちは『虹の神のご加護だ!』『王が大義を果たすことを、神はおみになっておられる!!』と高揚し、その勢いは戦局に大きく影響した。
一方、ビアージョ騎士団総長は私を見て、地面に平伏した。
「尊きをお守りできず、申し訳ありませんでした。心よりお詫び申し上げます」
彼の忠誠心は理解していたので、片手を上げて制する。
「お前のせいではない。元々、私が一人離れた場所にいたのが原因だ。そのうえ、畏れ多くも神にお助けいただいたのだから、問題になるはずもない。……ただ、私は意識を失っていたので、実際に神にご助力いただいたかどうかは不明だがな」
ビアージョは重々しい様子で口を開いた。
「陛下、恐れながら、全ての事には対価が必要だと、私は考えています。たとえ奇跡であったとしてもです。神が陛下に常ならざる恩寵をお與えくださったのであれば、それ以上のものを神にお返ししなければなりません」
「それでは、この戦いから生きて戻り、神が守る我が國の繁栄に努めよう。そして、神の名を、我が國の隅々まで行き渡らせるのだ」
私の言葉を聞いたビアージョは、深く頭を下げた。
―――その後、神の加護を得たと信じた兵たちに支えられ、我が國は勝利した。
高揚する兵たちとともに帰國の途についた私は、しかし、一つだけ気掛かりなことがあった。
戦の途中から、ルピアの手紙が屆かなくなったことだ。
調不良を心配したが、代わりにルピアの無事を知らせる報告がディアブロ王國の名で屆き、その懸念は払拭される。
殘念なことだが、素直に考えれば、ルピアの手紙を書く気が失せたのだろう。
忙しさを理由に、ほとんど返事も出さない私が相手では仕方がないことだと、その時の私は考えていた。
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