《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》39 真実 4
一夜明けて、翌朝。
ギルベルトは頭にが上っている狀態であることを、私は理解した。
なぜなら朝早くから、アナイスが私を訪ねてきたからだ。
宰相の要をけ、しばらく王宮に滯在する旨を告げた後、彼は普段よりも親し気に手をばしてきた。
その様子から、ギルベルトが側妃について何らかの話をしていると推測する。
彼が私の意志に反して何事かを推し進めようとしたことは初めてだったため、ルピアをけれる話はそれほど耐え難いことだったのかと、心苦々しく思った。
いずれにしても、私が意向を伝えた以上、ギルベルトは己のを抑え、ルピアをけれることが役務だ。
後ほど注意をしなければならないと心に留めながら、これ以上問題が拡大しないよう、アナイスにはっきりと告げる。
「アナイス、宰相が君にどんな説明をしたのか不明だが、王宮で何らかの立場を得るための相談があったのならば忘れてくれ。私の妃は一人だけだ」
アナイスは驚いた顔をした。
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その表を見て、ギルベルトめ、やはり余計な話をしているようだと、腹立たしく思う。
しかし、ギルベルトとの不調和はアナイスに聞かせる話でないため、軽い調子で続けた。
「私と宰相の間に、ちょっとした齟齬が生じたようだ。そのせいで、わざわざ王宮まで出向いてもらうとは、申し訳ないことをした。だが、せっかくの機會だ。このまま『神のし子』として王宮に滯在し、妃に神の祝福を分け與えてくれないか。どうも最近、妃の調が思わしくないようだからね」
アナイスが長期滯在用の荷を持って王宮を訪れたことは、多くの者に見られているだろうし、彼が滯在するための部屋を整えた侍もいるはずだ。
彼をこのまま帰すと不審に思う者が出てくるだろうから、もっともらしい役割を與えなければと考えての提案だった。
それに対し、アナイスは微笑みを浮かべて了承した。
―――その日、朝食の席に現れたルピアは、普段通りの表を浮かべていた。
同席しているアナイスが賑やかに話し続けるのをいいことに、さり気なくルピアを観察していると、表は変わらないものの、気落ちしているようにじられる。
そうだとしたら、原因は明白だった。
妊娠を発端にした、私との不和を憂いているのだろう。
ギルベルトにルピアと腹の子は私のものだときっぱり言い切ったものの、そのことを彼にどう伝えるべきか、私は考えあぐねていた。
なぜならルピアはどうあっても、腹の子の父親は私だと言い張り続けるように思われたからだ。
彼の意見に同意することは簡単だが、今後も彼と噓偽りない関係を続けていきたい私には、それが正しい方法だとは思えなかった。
そのため、彼に何と言って理解させるべきだろうかと悩んでいたのだ。
また、一方では、自分のを持て余していた。
なぜならルピアが過ちを犯したという事実はどうにもけれ難く、ふとした時に思い出しては私を苦しめていたからだ。
果たして寂しさだけで、ルピアがを任せるだろうか。
彼は子どもの父親をしていたのではないだろうかと、答えの出ない問いを考えては、を焼かれるような思いを味わっていた。
そして、そのことを不公平だとじていた。
いつの間にか私は変容させられ、これほど彼に囚われているのに、彼にとって私は替えのきく相手で、裏切ったことに彼が何の痛もじていないように見えることを、悔しく思っていたのだ。
そんな自分のに折り合いをつけることができず、意地もあって、彼への話を先延ばしにしていた。
私の中で彼と同じ未來を歩んでいくことは決定事項であったため、時間は無限にあると思い込んでいたことも、先延ばしにした理由の一つだった。
しかし、その後、私は出席していた式典にて事故に遭い―――猛毒を持つ蜘蛛に腕を噛まれた。
そして、本來ならば、そこで死ぬところだった。
私が続きの人生を與えられたのは、奇跡のような彼の力のおかげに過ぎない。
定めに従うならば、そのまま不幸なエンディングを迎えていたのだ。
―――なぜならそのまま死んでいたら、彼をしていると告げることはできなかったから。
―――ルピアは私にされていないと誤解したままで、されない原因は自分にあったのだと、自らを責め続けただろうから。
あるいは、それが現実になるのか。
彼は私の思いを知らぬまま、いつ目覚めるのか分からない眠りについたのだから。
- 連載中101 章
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