《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》40 後悔 1

「ルピア、ブランケットから腕が出ているが、寒くはないか?」

寢臺に橫たわっていた妻が、ブランケットから腕を突き出したのを見て、心配になって聲を掛ける。

もちろん返事があるはずもないので、私は椅子から立ち上がると、彼の狀態を確認するため寢臺に近付いて行った。

―――彼が私の代わりとなり、昏睡狀態に陥った日から、2か月が経過していた。

倒れた直後の彼は酷い狀態で、耐えられないほどの苦しみに四六時中襲われていたが、最近ではしずつ穏やかに眠れる時間が増えてきた。

とは言っても、未だ安心できる狀態には程遠く、彼から目を離すことはできなかった。

そのため、私は彼の寢室に小さな機を持ち込むと、寢臺の近くに備え付けた。

そして、定期的に彼の狀態を確認しながら書類仕事をするのが、私の日常となっていた。

今日も普段通りに急ぎの書類を確認していたところ、目の端で彼くのが見えたため、心配になって聲を掛けたのだ。

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季節は冬に差し掛かろうとしている時期で、腕を剝き出しにしては寒いだろうと彼れると、予想に反してその腕は熱っぽかった。

つい先ほど確認した時は平熱だったため安心していたが、どうやら発熱してきたようだ。

ルピアの熱は簡単に、上がったり下がったりする。

そのため、これはよくない兆候だと心配しながら、彼の額に浮かんだ汗を拭っていると、その間にも彼の熱はさらに上昇してきた。

はあはあと彼の吐く息が荒くなってきたことで、濃い毒が彼を回り始めたことを確信し、またもや苦しみの時間が彼を襲うのかと考えて顔が歪む。

部屋の隅に控えていたミレナも、白い布を手にすると、慌てた様子で近付いてきた。

果たして悪い予想通り、ルピアは突然、呼吸困難に陥ったようで、目を瞑ったまま眉を寄せると、苦し気にシーツを握りしめた。

私はすかさず寢臺に腰を下ろすと、彼の上半を抱きかかえたが、腕の中の彼の顔はみるみる青ざめていった。

「ルピア、ルピア」

聲を掛けても彼に聞こえるはずもなく、ルピアは上半を折り曲げると、ミレナが差し出した布の上に吐した。

そのはどす黒く、彼の中に酷く悪いものが溜まっていることを示している。

「……っ、…………」

聲も出せずに苦しんでいるルピアの背中を、私は必死でさすった。

「ああ、苦しいね、苦しいだろう。すまない。私より何倍も細くて、弱々しい君にばかり負擔をかけて」

腕の中の彼はかすかに震えていて、そのは燃えるように熱かった。

息ができずに苦しいのだろう。閉じられた彼の瞳から、涙がぽろぽろと零れ落ちる。

「……ああ、ルピア、ルピア。すまない、すまない。苦しいね……」

何の役にも立たず、同じ言葉を繰り返すだけの私の腕の中で、強張ってガチガチになっていた彼からふっと力が抜けた。

同時に、彼溫がどんどん下がっていき、がくがくと寒さに震え始めた姿を見て、慌ててブランケットをに巻き付ける。

寢臺の上に橫たえると、彼は私に背中を向け、まるで胎児のようにを丸めた。

同じタイミングで、寢臺の上で大人しくしていた彼の守護聖獣が、大きな尾をふわりと広げ、まるで溫かな寢でもあるかのように丸まった彼の上に乗せる。

そのが心地いいのか、ルピアは安心したように息を吐くと、そのまますーすーと穏やかな寢息を立て始めた。

私はミレナから濡れた布をけ取ると、未だ汗でっている彼の額を拭いた。

日に何度も訪れる苦しみの時間が、やっと1回終わったと考えながら。

そして、あと何回、彼はこの苦しみに耐えなければいけないのだろうと考え、を噛みしめた。

―――ルピアが倒れた直後は、全てが混していた。

そもそも私が運び込まれた部屋には、王宮中にいた高位貴族や上級文たちが集められていたが、とても今後の狀況を話し合える狀態ではなかった。

なぜなら王である私が、猛毒を持つ蜘蛛に噛まれたからだ。

その場にいる全員が國王の死を確信し、混のるつぼと化していた。

そんな中、最期の言葉を聞き取りにきた王妃が、王の毒を吸い出し―――その場にいた多くの者はそう信じた―――死にかけていた王が立ち上がったのだ。

ルピアを抱えて退室する私を、彼らはまるで、死を見るような目つきで見つめていた。

しかし、その場にいた皆と同じように、実際は私自も混していた。

ミレナのつぶやきが耳にった途端、ルピアが告白してくれた彼を思い出し、彼に命を救われたことだけは理解していたが、真には『代わり』の意味を理解していなかったからだ。

―――その殘酷さも。

私は意識を失った彼を抱えたまま、長い廊下を進んだ。

それから、彼の寢室に足を踏みれると、寢臺にゆっくりと彼を下ろした。

してくるわずかの間にも、彼の狀態は悪くなっていた。

倒れた直後から熱かったはさらに熱を持ち、時々呼吸が途切れるとともに、びくりと痙攣するかのようにが跳ねる。

見下ろした彼の全は、深紫とも黒とも言えるに変していて、尋常な狀態でないことは一目で分かった。

すぐ後ろに付いてきた、王宮付き侍醫を振り返る。

「妃を見てくれ!」

しかし、彼がルピアにれるより早く、彼は苦し気に息を詰めた後、真っ黒なをごぽりと吐いた。

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