《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》43 後悔 4
ルピアが倒れてから1か月が経過した。
未だ予斷を許さない狀態であるものの、ルピアの調はしずつ落ち著いてきており、その影響か、私は初めて『政務はどうなっているのだろう』と気になった。
思い返してみれば、この1か月の間、全く仕事をしていない。
時折、ギルベルトが持ってきた書類に、言われるがままサインをしていただけだ。
ギルベルトは今回の件に罪悪を覚えているようで、普段であれば『王の仕事です』とかっちり私にやらせる書類を、一切私のもとに持ってこなかった。
それどころか、ルピアの寢室にすら近付き難いようで、どうしても私のサインが必要な書類を持ってきた時も、何部屋も離れた先の廊下で待っていた。
その日、日に3度の定期診察に訪れた侍醫に、2時間ほどルピアのもとを離れる旨を相談した。
侍醫が、自分とミレナが付いていれば問題ないと請け負ってくれたので、ルピアの調に問題がなければ、その日の午後、久しぶりに執務室を訪れることにする。
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そのため、いつものように、寢臺近くに座って診察を見守った。
侍醫は慎重にルピアを診た後、私に向き直る。
「王妃陛下はよく頑張っておられます。のがしずつ元に戻ってきておりますので、毒が抜けてきているものと判斷されます。王妃陛下のおにも、お腹のお子様にも問題はありません」
私は無言のまま、ルピアに頭を下げた。
そして、自分にこのようなことを聞く権利はないと分かっていながら、侍醫に質問した。
「一つ尋ねたい。妃の懐妊を確認し、彼に伝えたのはお前だったな。……その時、ルピアは何か言っていたか?」
―――愚かな、愚かな私の最大の過ちは、ルピアの腹の子を私以外の男の子どもだと信じたことだ。
愚昧なことに、當時は自分の考えを疑うこともなかったが―――今となっては、なぜそのような間違いをしたのか不思議でならない。
あれほど真心だけをくれた彼を、なぜ私は疑ったのだろうと。
彼が魔であることを信じる方が簡単だったというのに。
そして、ルピアが魔であることをけれた時、當然のこととして、彼の腹の子の父親は私だと理解した。
―――不面目なことに、その瞬間、私の裡に湧き上がった最も強いは歓喜だった。
誤解からルピアに酷いことをしてしまったと、心底申し訳ない気持ちを覚えたけれど、それよりも、私が父親であったのだという歓喜の方が上回っていたのだ。
ルピアには謝しかない。
たった半年で私の子を籠ってくれ、そして、ずっと腹に抱えてくれているのだから。
……嬉しい、と思う。
素直に、彼が私の子を籠ってくれたことが嬉しい、と。
本當に自分勝手なことに、その時、私はルピアの足元に跪くと涙した。
嬉しくて、嬉しくて。ありがたくて。
―――そのような資格は、自分にはないと分かっていながら。
なぜなら彼の腹の子を、私自が否定したのだから。
その行為は、何の拠もない言いがかりでしかなかったというのに。
ルピアは泣いただろう。私の非道さを、悲しんだに違いない。
そんな彼自は、一片の過ちもなかったのだ。
―――だから、分かっている。
私には、侍醫に質問する資格がないということは。
私が自ら捨て去った時間なのだから、彼が妊娠をどのようにじたかを知る権利はないのだ。
分かっていながらも、私はもうどうしてもルピアの気持ちを知りたくなって、侍醫に質問した。
彼はしの間、黙って私を見つめていた。
今さらそのようなことを尋ねるとは愚かだなと考えていたかもしれないし、その時のルピアの言を思い出していたのかもしれない。
張しながら待っていると、侍醫は靜かに口を開いた。
「ご懐妊ですとお伝えしたところ、王妃陛下はぽろぽろと涙を零されました。にたまった激しいを零されるかのように。でも、すぐに花が開くように微笑まれて、『フェリクス様が喜ばれるわ』と口にされました」
私はしばらく聲を出すことができなかった。
溢れ出る激しいに、がいっぱいになったからだ。
「……ありがたい、ことだな。ルピアは私が喜ぶことを、信じてくれたのだ」
なくとも、その瞬間の彼は幸福であったのだ。
……ああ、ルピアはなぜこれほど優しいのだろう。
いつだって、私のことを思いやってくれる。
そんな風に、その時の私は彼のことを理解したつもりになっていたが、―――すぐに、実際には何一つ理解していなかったのだという事実を目の前に突き付けられた。
その日、私は執務室で一通の手紙をけ取った。
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