《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》47 後悔 8
「選定會議……どういうことだ?」
妃選定會議が開かれるのであれば、事前に連絡がらないはずがない。
だが、私が最後に開催の打診をけたのは、ルピアを選定した3年半前だ。
それ以降、選定會議は開かれていないし、ルピアがいる以上、開く必要もなかった。
確認するためギルベルトを見ると、床に座り込んだままぶんぶんと首を橫に振られた。
王と宰相が知らない重要會議など、開かれるはずもない。
「ミレナ、それはアナイスの虛言だ。妃選定會議が開催されたのは3年半前が最後だ」
しかし、ミレナは私の言葉を疑う様子を見せた。
「そ、そんなはずありませんわ!! アナイス嬢ははっきりと言い切られたのですから! そのうえ、この國の慣習に則って、正妃の寶石を側妃として要求されたのです!」
「……寶石を?」
思ってもみない話が飛び出したため、言葉を発するまでに一呼吸が必要だった。
確かに、ミレナの言う慣習はあった。
スターリング王國において、正妃の子も側妃の子も等しく王位継承権が設定されるため、妃同士の軋轢をなくすため、『姉妹のような関係になりましょう』との意味を込めて、正妃が側妃に寶石を下賜するのだ。
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しかし、側妃になる事実もないのに寶石を要求するとしたら、アナイスの行為は度が過ぎている。
表が消えた私を何と思ったのか、ミレナは的な口調で続けた。
「もちろんルピア様は、王に事実を確認しないことには寶石を差し上げることはできないと、拒否されました。すると、アナイス嬢は『大國の王でもあった方が、寶石一つを出し渋るなんて、しみったれだと思われますわ』と、喚き散らしたのです! ルピア様に対して!! あまりに悔しかったので、未だに一言一句覚えていますわ!!」
ミレナの怒りは、もっともなものに思われた。
そして、先ほどから彼が私に対して好意的でなかったことを納得する。
私のことを一心に思う妃を差し置いて、他の妃を娶ろうとしていると考えれば、立腹するのは當然だ。
「それは、王妃に対する態度ではないね」
私の靜かな聲を聞いて、ミレナがはっとしたように口をつぐんだ。
そんなミレナに確認する。
「それで、私が知っておくべきことは他にあるか?」
ミレナは憑きが落ちたかのように落ち著いた態度を見せると、ぱちぱちとしきりに瞬きを繰り返した。
「いえ……、ああ、はい、ルピア様は直接王に、アナイス嬢の言葉の真偽を確認されたいご様子でした。そのため、必ずその日のうちに、王とご面會の機會を作らなければと努めていましたが、そのまま毒蜘蛛騒ぎが起こりました」
ミレナの言葉により、ルピアが代わりになった日の出來事を、時系列で整理することができた。
私はルピアの狀況を、彼が知らされていた報を、やっと知ったのだ。
「……なるほど。それだけのことをされれば誰だって、私が側妃を娶るものだと信じるだろうね。にもかかわらず、ルピアが……人と爭うことが嫌いで、いつだって黙っている彼が、私に會って確認しようとしてくれたのか」
ルピアの格を理解した今は、その行為が何倍も尊いものに思われてくる。
「ルピアの行為を確認すると……事実に反して、不義の子を籠ったと責め立て、さらには側妃を迎えようとした夫を庇って、代わりになったのか? なくとも、ルピアはそう信じていたはずだが、……そんな慈に満ちた行為が、果たして可能なものか?」
この1か月で思い知った。
代わりになる行為が、どれほど辛くて、苦しいのか。
戦場において、一度傷を負った者は、その痛みを覚えているほどにきが鈍る。
もう一度同じ傷を負うことを恐れるからだ。
それなのに、ルピアは一度私の代わりになり、2年間も苦しんでおきながら、何の躊躇もなくもう一度、私の毒を引きけたのだ。
それも、彼を誤解して責め立て、さらには別の妃を迎えれようとしていた相手を?
―――無理だろう。
どんなに慈の心があったとしても、それは不可能な行為だ。
私は顔の上半分を片手で覆うと、はあっと息を吐きだした。
3度繰り返して考えたけれど、やはりルピアの示してくれたような慈が存在するとは思えなかった。
「今の私にはとても難しく思えるが、……當然のように、ルピアと同じ行為ができるようになって初めて、私は彼に謝罪できるのだろうな」
私は顔を覆ったまま、短い聲で指示を出した。
「アナイスを呼べ。テオもだ」
近くに控えていた侍従は一禮した後、私の命を実行するために部屋を出て行った。
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