《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》48 後悔 9
「ギルベルト、お前はアナイスに何と説明したのだ?」
しばらくの沈黙の後、し落ち著いた私は、未だ床に座り込んだままのギルベルトに質問した。
ルピアが倒れるまでの間、アナイスはしばらく王宮に滯在していたが、そもそもそれはギルベルトが呼び込んだからだ。
その事実が発覚した際、彼を戒めてはいたが、ルピアに側妃の話をしていたことを知らなかったため、大した事柄だと考えずに詳細を確認していなかった。
私の質問をけたギルベルトは真っ青な顔を上げると、途切れ途切れの言葉を吐いた。
「私がアナイス嬢にお伝えしたのは、王國の今後を見據えて、王の近くに仕えてほしいということです。実質的に決定していることは何もないが、まずは王宮で暮らし、アナイス嬢の存在を高めてほしいと、申し上げました」
ギルベルトの良いところは、どれほど自分に不利な場面でも、決して虛言を口にしないことだ。
そのため、彼の言葉を疑う手間を省くことができる。
「なるほど。上級吏お得意のほのめかしか。ルピアにははっきりと側妃との単語を示しておきながら、一方のアナイスには何一つ明示しないとは、お前は優秀だな。宰相まで昇り詰めただけのことはある」
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完全なる皮を口にすると、さすがに理解したようで、ギルベルトは深く頭を下げた。
必要なことは聞き終わったため、宰相を一旦下がらせると、私はルピアが眠っている寢室に戻った。
この1か月、朝も晝も夜も彼に張り付いていたので、ほんの數時間離れただけで、居てもたってもいられない気持ちになったからだ。
ルピアの額に浮かんだ汗を拭いた後、頭をでていると、聖獣が邪魔をするかのように私とルピアの間に尾を差し挾んできた。
「……聖獣様、それでは妃の顔がよく見えません。どうぞ尾を移させてください」
聖獣を見つめながら丁寧に頼んだけれど、聖獣からは聞こえない振りをされただけだった。
聖獣は変わらず私のことを許し難く思っているようで、時々、今のような嫌がらせをされる。
しかし、嫌がらせをされる方が、無関心でいられるより何倍もいいだろう。
私は仕方なく、ルピアの頭をでる代わりに聖獣の尾をでた。
「聖獣様、私はいつもこんな風にルピアをでるのですよ。してみたかったのですか?」
しかし、幾度もでないうちに、聖獣は不愉快そうな様子で、尾を自らのの近くに引き寄せた。
それから、むっとしたように私を見つめてきたので、久しぶりに視線が合ったなと思う。
「……聖獣様、お禮を言わせてください。ずっとルピアを守っていただきありがとうございました」
私は聖獣に対して頭を下げた。
聖獣が私の言葉を聞いてくれるかどうかは不明だったが、聞いてほしいと言葉を続ける。
「先ほど、ルピアの手紙を読みました。その中に、彼が生まれた時からずっと聖獣様が隣にいて、守ってくれたのだと書いてありました。リスの姿をされていた時も、彼と仲睦まじいご様子でしたし、心を通わされていたんですね」
羨ましいと思う気持ちがつい聲に表れ、ふっと自嘲の笑みを零す。
聖獣はルピアと正しく向き合うことで、心を通い合わせたのだろう。
だとしたら、私も同じことをすればいいだけだ。
「バド様が聖獣様だと分かって以降、なぜこれまで聖獣であることを隠し続けてこられたのかと、その理由を考えていました。始めのうちは見當もつきませんでしたが、ルピアのことをしずつ理解できるにつれ、理由が分かってきたように思います」
聖獣は馬鹿にしたように尾をかした。
その様子から、『お前に分かるものか』と言われているような気持ちになる。
「ルピアは優しくて、思いやりがあって、……い頃からずっと、私に祝福を與え続けてくれ、心を守ってくれました。そして、2度も私の代わりとなり、痛みと苦しみを引きけ、命を救ってくれたのです。……それほどのことができる、素晴らしいです」
私は正しく気持ちが伝わるようにと、聖獣をまっすぐ見つめて言葉を続けた。
真摯な気持ちが屆いたのか、聖獣は目を逸らすことなく私を見返してくれる。
私はごくりと唾を飲み込んだ。
「……恐らくルピアは、我が國の『虹の神』に連なる者ですね。もしも聖獣様がそのお姿を現されたら、我が國の者は誰だって神の聖獣だと気付き、ルピアを『神に連なる者』として崇め奉るでしょうが……それが、お嫌だったのでしょう? 彼の人となりを見もせずに、神の系譜という理由だけで崇められる生活を、ルピアが幸福に思うはずもない」
聖獣は私の言葉を味するかのように、目を細めた。
「だからこそ、私たちがルピア本人をきちんと見て、彼の素晴らしさに気付いた後に、聖獣であることを示すおつもりだったのでしょう? ……殘念ながら、ミレナと私の弟妹を除いて、誰もルピアの善なる質に気付きもせず、その存在に相応しい扱いをすることができませんでした。……その結果、リスの姿のままでいたのですよね?」
確認するため聖獣を見つめると、彼は唸るような聲を出した。
「愚かな王だね! 気付けるのであれば、どうしてもっと早く気付かないんだ!」
それは初めて聖獣が私に言葉を発してくれた瞬間だった。
「……返す言葉もございません」
私は謝の気持ちとともに、もう一度聖獣に頭を下げた。
ルピアとともにいる聖獣だけあって、本質は優しいのだろう。
私が真剣に考えて悩み抜いた結果、正しい結論を導き出したことで、歩み寄ってくれたのだから。
聖獣の優しさに謝するとともに、私はこの好機を逃がしてはいけないと考える。
今後もルピアと暮らしていくためには、彼に快適な環境を提供できるよう、彼が大事にするものたちと仲良くしていかなければならない。
その最たるものが聖獣なのは間違いないので、今後は今以上の誠意を持って、聖獣に接していこうと心の中で誓った。
―――その後しばらくは、互いに言葉を発することなく、思い思いのことをして過ごした。
聖獣はふわふわの尾をルピアの腹の上に載せていたし、私はゆっくりと彼の頭をでていた。
そんな風に穏やかな時間を過ごしていたところ―――侍従の一人が訪れ、バルテレミー子爵家の兄妹が王宮に到著したと告げた。
穏やかな時間は終わりを告げたのだ。
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