《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》51 後悔 12
しかし、先ほどまでと異なり、ギルベルトの聲はテオに同しているような、溫かいものに変わっていた。
「テオ、君の妹は『虹の神』のし子だ。アナイス嬢を王の妃にと推す一派が、昔から君の周りに集まっていたことは知っている。そのため、彼らの考えに同調し、妹を妃にとんだとしても不思議はない。あるいは、妹の価値を上げたいと考え、王の奇跡に『虹の神』のお名前を借りたいとのに駆られたとしても」
ギルベルトの言う通り、『虹の神』を深く信仰する一派は存在する。
彼らにとってアナイスは神の象徴で、事あるごとに彼を持ち上げていたのだから、近で見ていたテオは影響をけたのかもしれない。
そして、テオが妹を王の妃にしたいとんでいたとギルベルトが口にし、テオが否定しないことから推測するに、ギルベルトの話は事実で、さらに彼は事前に、何らかの報を摑んでいたのだろう。
そんなギルベルトの聲が、自嘲するようなものに変わる。
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「私もつい最近まで、似たようなことを考えていた。國民は皆『虹の神』を信奉しているのだから、神の恩恵に浴している『虹のし子』が妃になれば、それだけで王家への信頼は上がり、國も王家も盤石になると。だが、國民の信頼を上げることは、他の方法でも代替が利くのだから、……『唯一の正解』ではなく、『多くの正解の中の一つ』でしかなかったのだ」
そのことにやっと気が付いた、と呟いたギルベルトは、昔語りを始めた。
それほど親しくない者の前で自らの過去を語るのは、ギルベルトらしくない行為だったので、テオを―――私の數ない友人を、私のために変化させようと努めているのだと気付く。
「……かった陛下が一の髪で苦労されていた姿を、私はずっと間近で見てきた。そして、王を不當に扱う連中に憤りを覚えていた。もちろん、次期王としての才覚に何の問題もなかったため、『必ず一髪のフェリクス様を、次の王にするのだ』と、當時の私は自分に誓っていた。しかし、いつの間にかそのことを忘れていたのだ」
ギルベルトは髪と本人の価値は無関係だと言いたかったようだが、テオはギルベルトの発言に同意することなく、反論してきた。
「ですが、國王陛下は神からその実績が認められ、3の虹髪に変化したではないですか! 神はきちんと見ていらして、正しい行いをする者には正しく恩恵を與えてくださるのです。王妃陛下のことはよく存じ上げませんが、嫁いで來られて2年半も経過しているというのに、いまだに虹でもない白一の髪であることが、全てを証明しているのではないでしょうか」
「テオ、それは違う! 髪で全てが決まるはずもない! その考えでいけば、そもそも王が一で生まれてくる必要はなかったのだから」
ギルベルトが顔をしかめて説得の言葉を吐いたけれど、テオは強そうな表を崩さなかった。
「私はやはり、妹が妃に立つのが皆のためだと考えます! 王妃陛下は調を崩されているので、しばらくはお子様を産むのは無理でしょうし、そもそも國王陛下以外の子どもを籠られていると、貴族の間では噂になっていますよ」
その時、テオが浮かべた表がルピアを揶揄するようなものだったため、私は憤りを抑えるためにぐっと奧歯を噛みしめた。
これは私の責任だと考えながら。
なぜなら私がルピアの噂を放置したから、彼はテオに悪しざまに言われているのだ。
何の咎もない、他ならぬ私の妃が。
だが、今の私には、ルピアの妊娠について何一つ口にすることはできなかった。
彼はこの後、數年間眠り続けるだろうから、彼の妊娠を肯定したら、一年後、生まれなかった子どもについてあれこれと想像され、同されることになるからだ。
だからといって、否定することもできない。
なぜならルピアの腹には実際に子がいるのだから、否定などできるはずもないし、―――それだけは、絶対にしてはいけないことだからだ。
しかし、どうにも我慢ならなくなって、私は言葉を差し挾んだ。
「テオ、……市井に広まっている、ルピアが臥せている理由についての噂は事実だ。本來なら私が死ぬところだったのを、ルピアが代わりに引きけてくれたのだ。そんな彼を差し置いて別の妃を娶ることなど、あるはずもない。私の妃は生涯彼一人だ」
しかし、テオは心をかされた様子もなく、同じ主張を繰り返した。
「もし王妃陛下の善行が本ならば、虹髪に変化するでしょう。白一のままであるのなら、アナイスを妃にすべきです」
それから、さらにテオは興した様子で続ける。
「王妃陛下はこの1か月、ずっと寢臺に臥せっていると聞いています。そのため、本日、私と妹が呼ばれたのは、側妃の話があるためだと思っていました。陛下、私たちは停滯すべきではなく、未來に向かってくべきです!」
私は返す言葉を見つけることができず、テオを見つめた。
けれど、彼からは、熱に浮かされたような表で見返されただけだった。
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