《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》52 後悔 13
テオの取り付く島もない表を見て、これ以上の話し合いは無意味だと理解した。
また、その頃には私の方も、彼と話をする気が失せていた。
しかし、一言忠告しておこうと口を開く。
「テオ、宰相はその立場上、獨自に行することも多いが、私が確認した際に虛偽の報告をすることはない。それはやってはいけないことだからだ」
そこがギルベルトとテオの決定的な違いで、私が信用できるかどうかの基準になる。
―――いずれにせよ、今後、私がテオの言葉を信じることは難しいだろうが。
そのことに気付いた私は、意識して深いため息をついた。
テオの虛言に踴らされたがため、誤解してルピアを傷付けてしまったのだと、彼に詰め寄りたい気持ちを抑え込むためだ。
數回深い呼吸を繰り返した後、私はテオを正面から見つめた。
テオは私の視線をけ止め、真っすぐ見返してきたが、彼に対してこれまでと同じを抱くことはなかった。
テオは私にとって、最も仲の良い友人だった。
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そのため、以前は彼の姿を見ただけで、楽しさや好意がに込み上げてきたものだが、今となっては、それらのは一かけらも浮かんでこなかったのだ。
……ああ、私はルピアを選び取ったのだと気付く。
だからこそ、彼の害になる者を、彼の側に……ひいては私の側に、置きたいとは思わないのだ。
私が彼と會うことはもうないはずだ……なくとも、個人的には。
「テオ、これまで世話になった」
彼との付き合いに終止符を打つ意味で、私はテオに最後の言葉を掛けた。
彼がどこまで理解したかは分からないが、―――テオはぐっとを引き結ぶと、深く頭を下げた。
數秒ほどその姿を眺めた後、私は侍従に合図をしてテオを退出させた。
それから、しばらくは目を瞑り、組み合わせた両手を額に當てていた。
自分の中で暴れるを押さえつけるためだが、『王はいつだって冷靜でいなければならない』と、何度言い聞かせても上手くいかない。
ギルベルトが斷罪を希した際には、その罰の容を彼自が決定するのではなく、被害者であるルピアが定めるべきだと考えた。
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被害をけ、苦痛を被ったのはルピアなのだから、彼自から苦痛に比例する正しい罰を與えられるべきだと思ったのだ。
しかし、テオの場合には、とてもそんな気持ちになれなかった。
ルピアが目覚め、彼が決定することを待つ気持ちになれないのだ。
なぜならテオには反省がない。
自分の言が間違っていることに気付いていない。
誰に対しても思いやりをもって接し、優しくあろうとするルピアの周りには、同じように他人を思いやれる者しか近付けることはできない、と強く思った。
「……ギルベルト、テオの処遇を決定する前に、アナイスを呼んでくれ。テオとアナイスの行は連している可能があるため、雙方から確認した上で決定すべきだろう」
「はい、私も王の考えに賛同いたします」
ギルベルトの指示で、アナイスが呼び込まれる。
しばらくして室してきたアナイスは、何かを期待するような表をしていた。
テオの発言から推測するに、アナイスも兄と同じく側妃云々の話が出ることを期待しているのかもしれない。
ミレナの話では、アナイスがルピアに直接、妃選定會議にてアナイスが側妃に選ばれたと説明したとのことだった。
それから、側妃になる者として、妃であるルピアに寶石を要求したと。
その話を聞いた時の強い憤りが蘇ってきて、奧歯を噛みしめたけれど、アナイスは知らぬ気にきらきらとした瞳で見つめてきた。
その全く悪びれない様子に、の裡でが暴れ出す。
ルピアが臥せていることは、アナイスも聞いているはずだ。
そのようなルピアに対し、最後に浴びせた言葉が虛言であったことを、そして、その言葉によりルピアを傷付けたことを反省する気持ちはないのだろうかと、心底不思議に思う。
心の裡を荒れ狂うを制することは難しく、口を開くのも厭わしく思われたが、私の気持ちを読み取ったギルベルトが代わりに問いかけた。
「アナイス嬢、君にいくつか質問をしたい。まずはなぜ王妃陛下に、君が妃選定會議にて選ばれたと説明したかだ。なぜそのようなことをした?」
ずばりと核心を突いてきたギルベルトに、アナイスは驚いたように目をしばたたかせた。
テオ同様、まさか自分が審議される立場にあるとは、思ってもいなかったようだ。
それから、彼は探るような表でギルベルトを見やった。
対して、ギルベルトは言いにくそうに言葉を重ねた―――彼にとって全く言い難い容ではなかったため、ギルベルトの演技なのだろうが。
「君が王の前で虛言を述べる、あるいは虛言が疑われるような納得し難い発言をした場合、この確認作業は場所を変えて実施されることになる。その場合の質問役は、私から騎士団の誰かに変更されるだろうから、し荒っぽいやり方になるかもしれない」
ギルベルトが暗示した容を理解したアナイスは、表を強張らせると口を開いた。
しかし、その聲は挑むようなもので、彼が置かれている今の狀況を不満に思っていることが見て取れた。
「ルピア妃は母國で遊戯を楽しまれ、王以外の子どもを籠って帰って來たのです。我が國の王妃として不適格であることは、誰が見ても明らかですわ。ですから、私は我が王國のために、妃がもう一人立つことをルピア妃にご理解いただこうとしただけです」
アナイスの態度は堂々としており、自分の発言の正しさを信じているようだった。
そのため、私はアナイスに反論したくてたまらなかったが、ギルベルトは彼の言葉をけれるかのように頷くと、不思議そうに尋ねた。
「だが、実際に妃選定會議は開かれていない。君の発言が事実でないと、すぐに判明すると思わなかったのか?」
……こういう質問は、ギルベルトが得意とするところだった。
腹の裡で何を考えていたとしても表面に表さないうえ、しやすそうに見える外見から、相手はギルベルトを丸め込めると考えて、口が軽くなるのだ。
実際にアナイスは、ギルベルトを説得するかのように熱心に説明し始めた。
「事後承認という形もありますので、會議開催の有無がそれほど重要だとは思いませんでした。ギルベルト宰相もご存じのように、元々、フェリクス王の妃に定していたのは私です。誰もがそのことをんでいたのに、ディアブロ王國が國力差でもって割り込んできたのです」
それから、アナイスは扇を広げると口元を隠した。
「恐らくディアブロ王國は、慎みがない王を持て余していたのでしょう。そのような相手に選ばれたフェリクス王が、あまりにお気の毒ですわ。今回、予想通り不義の子を籠られたルピア妃に手を焼いて、ギルベルト宰相は私のために王宮に部屋をご用意くださったのでしょう?」
「…………」
さすがに相槌を打つことが躊躇われたようで、無言のままでいるギルベルトに、アナイスは畳み掛けるように続けた。
「宰相は私に言われましたよね。『王宮で暮らして、存在価値を高めてほしい』と。今回、私は『虹の乙』として、どれほど私自の価値が高いのかを実しましたわ。私が王宮に部屋を賜ったことで、誰もが私が妃になるのだと期待し、応援してくださったのですから。だから、私はぜひ皆の期待に応えなければとじましたの」
そう言うと、アナイスはぱちんと扇を閉じ、すねたようにを尖らせた。
「ですが、王はお優しくて、ルピア妃のお気持ちを優先されようとなさいますから、いつまでたっても話が進まないのです。ですから、僭越ながら私がお力をお貸ししようと思いましたの。あの日は王都中央區で開催される『収穫祭』に、王と私で參加しておりました。ですから、中央區に館を持つヘル伯爵に、式典の後、王と私を彼の館に招待する手はずを整えてもらっていました」
ヘル伯爵は、『虹の神』に傾倒している一族だ。
なるほど彼が協力者だったのか、と苦々しく思っていると、アナイスはを歪めた。
「フェリクス王が思っているほど、ルピア妃は優しくも大人しくもありませんよ。大國出で、腐るほどの寶石を持っているというのに、そのうちの一つだって私に與えるつもりはないと、はっきり拒絶してきたのですから」
それから、アナイスは私に嫣然と微笑みかけた。
「殘念なことをしましたわ。あの日、あのまま王と私が伯爵邸に宿泊していたら、そして、ルピア妃から私に寶石を賜れていれば、……私たちが一夜をともにし、ルピア妃から寶石を下賜された事実から、選定會議はすぐに側妃の認定をしたはずですのに」
読んでいただきありがとうございました!
別作品で恐ですが、「悪役令嬢は溺ルートにりました!?」が、マンガUP!にてコミカライズがスタートしました。
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本作品とは異なり明るいラブコメです。よければぜひ覗いてみてください!!
よろしくお願いします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
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