《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》54 大國からの訪問客 1
バルテレミー子爵家の兄妹と話をした2日後、ルピアの母國であるディアブロ王國から一人の訪問客が訪れた。
それは先ぶれも何もない突然の訪問だったが、「ルピア王妃から、貴國へ招待された」との言葉とともに、訪問客は王宮の門をくぐった。
いずれにせよ、彼ののこなしやに付けているから、ひとかどの人であることは誰の目にも明らかだった。
そして、確かに訪問客の分が高かったため、玉座の間での謁見がセッティングされた。
彼が何者であるかの報告をけた私は、玉座に座ると隣にギルベルトを立たせた。
周りには廷臣と侍従を配置し、左右の壁際には騎士を並べる。
「お初にお目にかかります、イザーク・アスターです」
深紅のマントを翻しながら、堂々とした足取りで室してきた男は、にこやかに自己紹介をした。
そこにいるだけで圧倒的な存在を主張してきたが、名前を聞いて納得する。
なぜなら彼の名前は大陸中に轟く、誰もが聞き覚えがあるものだったからだ。
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ディアブロ王國のアスター公爵。それは、大陸でも5本の指にる名家だ。
その歴史は古く、偉業は數えきれないほどで、各國の上位貴族に縁がいる。
そして、アスター公爵家の當主といえば、私より1歳年上の19歳という若さながら、大國ディアブロ王國の王太子の片腕として、辣腕を振るっている傑だった。
ルピアの従兄でもある。
玉座が備えられているのは、通常の床から數段高い場所になっているため、私は公爵を見下ろす形で彼を観察した。
アスター公爵は背が高く、しなやかなを高級で華々しい貴族服に包んでいた。
きらきらと輝く金髪を肩までばし、けぶるようなまつの下で深い海のような碧い瞳を輝かせる姿は、全ての乙が夢見る理想の貴公子そのものだ。
従兄妹という関係ではあるのだろうが、これほどの丈夫を手紙1通で呼び出すことができるルピアと公爵の関係に、心穏やかでない思いを抱く。
公爵は禮儀正しい微笑みを浮かべると、優雅な仕草で片手をの前に持ってきて頭を下げた。
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「フェリクス王にお會いでき、恐悅至極に存じます」
それから、公爵は顔を上げると、獨り言とも思われるような言葉を呟いた。
「……これはまた、寶石のようにしい國王だね。3の髪に藍青の瞳だなんて、こんなしい組み合わせがあるものなのか。顔立ちも上品で整っているし、我が従妹殿が夢中になるのも致し方ないね」
その言葉から、私もまた公爵から観察されていたことに気が付く。
公爵は片手を腰に當てると、ぐるりと周りを見回した。
それから、不思議そうに小首を傾げると、尋ねるように口を開いた。
「だが、その肝心の我が従妹殿が見當たらないのは、どういう了見だ? さて、僕がいつだって甘やかしてしまう、夢見る乙はどちらかな。いや、今や王妃陛下におなりあそばせたのだから、『乙』と呼ぶのは失禮だったな。……ルピア! 隠れているのなら、出ておいで」
公爵は最後の一言を、周りに響くような大きな聲に切り替えた。
しかし、玉座の間はしんとしているだけで、何一つ反応がなかった。
そのため、アスター公爵は不思議そうに片手で顎をつまんだ。
「おかしいな、僕を呼びつけたのはルピア自だ。それなのに、彼の要に応えて訪問してきた僕を出迎えもしないなんて、彼の格からあり得ないのだが」
誰もが答えられないでいると、アスター公爵は両足を広げて立ち、腕を組んだ。
「この場合、どんな可能が考えられるのかな?」
とんとんと指で自分の腕を叩きながら、首を傾ける。
「そうだな。たとえば……一國の王妃にもかかわらず、敬意を払われるべき廷臣たちから侮蔑をけ、気分不良で部屋に籠っているとか?」
公爵は視線だけをかして、居並ぶ廷臣たちを眺め回したが、誰からも発言がなかったため、異なる可能を列挙する。
「……あるいは、全全霊で夫に好意を示したものの、不要なものと投げ返されたため、部屋で嘆いているとか?」
私は肘掛け部分を摑んでいた手にぐっと力を込めると、公爵を見つめた。
公爵はそんな私を穏やかな表で見つめ返すと、意味あり気に微笑む。
「または、命懸けで夫の代わりになり、昏倒したにもかかわらず、夫は人に夢中で気にもかけないため、ろくな治療もけさせてもらえなかった。結果、……重病狀態が継続している、とかだろうか?」
言い終わると、公爵は両手を広げて、返事を待つかのように口を噤んだ。
―――公爵が口にしているのは、痛烈な當てこすりだった。
まさか公式な場で、立場も分もあるアスター公爵が、直接私を攻撃してくるとは思いもしなかったため、そして、彼の表があくまで穏やかだったため、……抗議をしても、『冗談だ』と返される可能を考えて、対応を躊躇する。
加えて、心のどこかでは、ルピアを深くする者ならば私を糾弾して當然だという思いがあったため、私はぐっと口を引き結んだ。
すると、そんな私の様子を観察していた公爵が、楽しそうな笑い聲を上げる。
「ははは、冗談だよ! そのようなことがあるはずもないからね」
高らかに笑う公爵の聲が、玉座の間に響き渡る。
その様子を見て、周りにいた廷臣たちがほっとの力を抜いた瞬間―――アスター公爵は笑みを収めると、がつん! と音を立てて片足のかかとを床に打ち付けた。
表も一変し、挑むような目つきで下から見上げてくる。
「もちろんそのようなこと、あるはずもない。なぜならルピアは、我がディアブロ王國國王陛下の掌中の珠だからね。慈しんで、慈しんで、だけを與えられてきたお姫様だ。だからこそ、あの子は疑うことを知らないし、裏切られることを知らない。そんな彼はどんな相手にも、一切を守ることなく善意だけで接するから、相手が傷付けようと意図してきたら傷だらけになるだろう」
公爵はつと視線を床に落とす。
「そんな所業、一國の王妃に対してできるはずもない」
一拍の間の後、アスター公爵は再び視線を上げると、挑むように私を見つめてきた。
その碧眼には、ぎらりと剣呑なが宿っている。
「さあ、冗談はここまでだ! フェリクス王、ルピアを呼んできてくれ」
彼はに付けていたマントを暴に外すと、側に控えていた従僕に投げ渡す。
「我がディアブロ王國は、國中で最も尊く、貴重なる姫をこの國に差し上げた! 誰からも敬われ、傅かれてしかるべき、どこに出しても恥ずかしくない王殿下だ! 僕が彼に恭順の意を示すのは、限られた者しかいないプライベートスペースでではない!」
公爵は握りこぶしを作ると、どんと自分のを強く叩いた。
それから、傲然たる態度でぶかのように言い放った。
「ルピア・スターリングは、このイザーク・アスターが敬すべきただ一人と、多くの耳目がある場で示すに値する姫だ!!」
彼が言い終わると同時に、しんとした沈黙がその場に落ちる。
―――アスター公爵が本気で怒っていることは、誰の目にも明らかだった。
大國一の大貴族だ。その諜報能力は抜きん出ており、ルピアが私を庇って寢込んでいることは既に知っているはずだ。
その上で、公爵は我が國に挑戦してきたのだ。
アスター公爵の立ち向かってくるような表を見るまでもなく、彼がたった一人で大事な従妹姫のために、我がスターリング王國に喧嘩を売っていることは明白だった。
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(更新頻度が遅くなりすみません。待っていただきありがとうございます)
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