《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》64 王妃の戸い 1
翌朝、私が目覚めた時、フェリクス様は私の寢室にあるソファに座って、書類を読んでいるところだった。
けれど、私が目覚めたことに気付くとすぐに書類を置いて立ち上がり、足早にベッドまで歩み寄ってきた。
「おはよう、ルピア。調はどうかな?」
そう言いながら、彼は自然な様子で手をばしてくると、私の額にれた。
どうやら私の顔を見る度に、発熱の合を確認することが、フェリクス様の癖になっているようだ。
熱がないことに安心して笑みをらすフェリクス様に、私は疑問に思ったことを質問する。
「私が目覚める前から、フェリクス様はこの部屋にいらしたの?」
すると、彼は一瞬言葉に詰まった様子を見せたけれど、バツが悪そうに口を開いた。
「その……、君が眠っていた10年間、私はそこの長椅子で寢ていたのだよ。枕が変わると眠れないという繊細な者がいるようだが、どうやら私もその1人でね。その長椅子でないと上手く眠れないのだ……(とはいっても、昨日は長椅子でもなく、椅子に座っていたが)」
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「…………」
私は驚いて長椅子を見やった。
先日も思ったことだけれど、目の前にいるフェリクス様と長椅子を比べてみると、フェリクス様の長の方が高い。
この長椅子は彼が眠るには狹すぎるし、ベッドほどにらかいわけでもないから、ベッドの方が快適に眠れると思うのだけれど……人によって、快適な寢臺は異なるのかもしれない。
どういった経緯か分からないけれど、フェリクス様は私の長椅子が、眠るのにぴったりの寢臺だと気にったのだろう。
けれど、勝手に私の部屋から持ち出すわけにはいかないと考えて、この部屋で眠り続けていたに違いない。
「でしたら、後ほど、この部屋の長椅子を、フェリクス様の寢室に運ばせるわね」
彼のためを思ってそう提案すると、フェリクス様は焦った聲を上げた。
「ルピア! ……私は靜かに眠れるタイプだ。この部屋で眠ったとしても、決して音を立てないし、君の眠りを妨げないと約束する」
私はフェリクス様の真意が分からずに、困って彼を見やる。
「フェリクス様……あなたは王なの。そして、そんなあなたにとって、1番大事なのは時間なのよ。私が眠り続けている時ならばまだしも、目覚めてしまった今、私の方が夜中に起きて音を立て、あなたの睡眠の邪魔をするかもしれないわ。だから、この部屋で質の悪い睡眠を取るよりも、自室でぐっすりと眠って、すっきりした狀態で政務を行ったり、貴族との流を楽しんだりした方が、いいと思うのだけど」
私はできるだけ分かりやすく説明したつもりだったのに、フェリクス様にしては珍しく、私の発言全ではなく、その1部に著目して論點をずらしてきた。
「夜中に起きて音を立てるだって? 君は真っ暗闇の中、寢臺から立ち上がるつもりなのか!? それは危ないから、絶対にやめた方がいい! いいかい、恐らく君が目覚めたら、私もすぐに目覚めるとは思うが、そうでなければ、必ず私に聲を掛けてくれ。が渇いただとか、必要ながあるのならば私が取るから」
「……それは王の仕事じゃないわ」
間違いなく彼が口にしたのは侍の仕事だというのに、フェリクス様はきっぱりと斷言した。
「間違いなく私の仕事だ。他の者に譲るつもりはないよ」
……何だか、今日も話がズレているように思われる。
困って返事ができないでいると、フェリクス様は張した様子で言葉を続けた。
「ルピア、君がもはや、私への思いを捨て去ったことは理解している。そして、それは當然のことだ」
「えっ?」
突然、らしていない心を言い當てられ、私は驚いて目を見張った。
これまでの態度から、私がフェリクス様を好きだったことは見抜かれていたかもしれないけれど、眠っている間に心を捨て去ったことを、どうして知っているのかしら? と、びっくりしたからだ。
もしかしたら眠っている前と後では、彼に対する私の態度が異なっているのかもしれないけれど、……斷言できるほど明確な違いは、見せていないはずだわ。
そう結論付け、戸ってフェリクス様を見つめると、彼はくしゃりと顔を歪めた。
「そんな君に対して、今さら何を言うのだろうと思われるだろうが、……私は誰よりも1番、君を大切にする。世界にどれほどの數の男がいたとしても、彼らの誰よりも君を幸せにすると誓う。だから、……もう1度チャンスをくれないか?」
「…………」
フェリクス様の表はどこまでも真剣で、そのため、かないはずの心がつきりと痛む。
誰よりも1番私を大切にして、幸せにするなんて、……それが現実になったらどれほど幸せだろうと、以前の私は考えていたはずだ。
けれど、それは魔の夢見がちなみに過ぎない。
互いにそう思い合えるなんて、まず滅多にないのだ―――なくとも、私のはそうでなかった。
私はできるだけ頑張ったけれど、それでも、どうにも葉わなかったのだ。
それなのに、ただ漫然と眠っていた間に、葉うはずがない。
「私は10年間眠っていたので、現狀を把握できていないけれど、10年もの間、王妃が不在というのは大変なことだわ。そのため、あなたには新しいか……新しい生活があるのではないかし……」
『新しい家族』と言いかけたけれど、なぜかその単語は口にすることができず、『新しい生活』と言い換える。
けれど、せっかく勇気を出して言いかけた私の言葉は、慌てたようなフェリクス様の聲に遮られてしまう。
「ルピア、君は1度も不在にしていない! ずっとここで、私の隣で眠っていたのだ。ずっと私の隣にいたのだから、私はこの10年の間も、君と生活していたに決まっている!!」
いつも読んでいただきありがとうございます!
7/15(金)、「転生した大聖は、聖であることをひた隠すZERO」1巻が発売されます。
スピンオフ作品になりますが、1冊でも楽しめる作りになっていますので、最強×溺保護者がお好きな方は、ぜひ手に取っていただければと思います。
☆story☆
強大な癒しの力を持つ、い最強聖のお話。
ナーヴ王國の王、セラフィーナは生まれつき目が見えず、隠れるように森で暮らしていた。
い霊たちとともに、穏やかな日々を送っていた6歳のセラフィーナのもとに、一人の訪問者が現れる。
「君がセラフィーナだな。シリウス・ユリシーズ、君の従兄だ」
若き騎士団副総長、シリウスは王都への帰還を無理強いすることなく、セラフィーナに寄り添うように森で過ごすが、ある事件をきっかけに、彼の能力が覚醒し……。
小さな聖と最強騎士の、楽しくにぎやかな語。
どうぞよろしくお願いします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
【書籍化】 宮廷魔術師の婚約者
★角川ビーンズ文庫さまより2022/06/01発売予定★ 今まで數多くの優秀な魔術師を輩出してきた名門スチュワート家に生まれたメラニー。 しかし、彼女は家族の中で唯一魔力の少ない、落ちこぼれだった。 人見知りの性格もあって、いつも屋敷の書庫に篭っているようなメラニーに、婚約者であるジュリアンは一方的に婚約破棄を申しつける。 しかもジュリアンの新しい婚約者は、メラニーの親友のエミリアだった。 ショックを受けて、ますます屋敷に引き篭もるメラニーだったが、叔父で魔術學校の教授であるダリウスに助手として働かないかと誘われる。 そこで発揮されたメラニーの才能。 「メ、メラニー? もしかして、君、古代語が読めるのかい?」 メラニーが古代魔術を復元させて作った薬品を見て、ダリウスは驚愕する。 そして國一番の宮廷魔術師であるクインも偶然その場に居合わせ、異形の才能を持ったメラニーを弟子に誘うのだった。
8 101人類最後の発明品は超知能AGIでした
「世界最初の超知能マシンが、人類最後の発明品になるだろう。ただしそのマシンは従順で、自らの制御方法を我々に教えてくれるものでなければならない」アーヴィング・J・グッド(1965年) 日本有數のとある大企業に、人工知能(AI)システムを開発する研究所があった。 ここの研究員たちには、ある重要な任務が課せられていた。 それは「人類を凌駕する汎用人工知能(AGI)を作る」こと。 進化したAIは人類にとって救世主となるのか、破壊神となるのか。 その答えは、まだ誰にもわからない。 ※本作品はアイザック・アシモフによる「ロボット工學ハンドブック」第56版『われはロボット(I, Robot )』內の、「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」を目的とする3つの原則「ロボット工學三原則」を引用しています。 ※『暗殺一家のギフテッド』スピンオフ作品です。単體でも読めますが、ラストが物足りないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。 本作品のあとの世界を描いたものが本編です。ローファンタジージャンルで、SFに加え、魔法世界が出てきます。 ※この作品は、ノベプラにもほとんど同じ內容で投稿しています。
8 81女顔の僕は異世界でがんばる
主人公はいつもいじめられていた。そして行き過ぎたいじめの果てに“事故”死した。はずだったが、目が覚めると、そこは魔法も魔物も存在する異世界だった。 *以前小説家になろうというサイトで投稿していた小説の改変です。事情があって投稿できなくなっていたので、こちらで連載することとしました。
8 192朝起きたら、幼馴染が悪魔に取り憑かれていた件
ごくごく普通な學園生活を送る、 高校1年生、西田 徳馬は 一つだけ誇れる自慢があった。 それは、成績優秀、運動神経抜群、 容姿端麗な宮園 愛花の幼馴染だということ。 いつものように愛花の家のインターホン を押し、愛花の可愛らしい聲で 1日がスタート。ーのはずだったが⁉︎ ☆不定期更新m(._.)m☆ ☆率直なコメントお待ちしております ☆1話1話が短めです(((o(*゚▽゚*)o)))
8 111俺は、電脳世界が好きなだけの一般人です
簡単に自己紹介をしておこう。 俺は、高校生だ。確かに、親父に騙されて、會社の取締役社長をやっているが、俺だけしか・・・いや、幼馴染のユウキも社員になっていた・・・と思う。 俺の親父は、プログラマとしては一流なのだろうが、面倒なことはやらないとという変わり者だ。 そんな親父に小學生の頃から、プログラムやネットワークやハードウェアの事を叩き込まれてきた。俺が望んだと言っているが、覚えているわけがない。 俺が、パソコンやネットワークに詳しいと知った者からお願いという名の”命令”が屆くことが多い。 プログラムを作ってくれとかなら、まだ話ができる。パソコンがほしいけど、何がいいくらいなら可愛く感じてしまう。パソコンが壊れた、辺りの話だと、正直何もできないことの方が多い。 嫌いな奴が居るからハッキングしてくれや、元カノのスマホに侵入してくれ・・・犯罪な依頼も多い。これは、”ふざけるな”斷ることができるので気持ちが楽だ。それでも引き下がらない者も多い。その時には、金銭の要求をすると・・・次から話にも來なくなる。 でも、一番困るのは、”なんだだかわからないけど動かない”だ。俺は、プロでもなんでもない。 ただただ、パソコンが好きで、電脳世界が好きな”一般人”なのです。 そんな”一般人”の俺に、今日も依頼が入ってくる。
8 128感傷
悲しみ、怒り、喜びなどの 人間の感情を話の軸にした短編小説集。 「犠牲」 とあるきっかけで殺人を犯してしまった遠藤翔 (えんどうしょう) その殺人の真相を伝えるための逃走劇 そして事件の真相を追う1人の若き記者、水無月憐奈の物語 「メッセージ」 20歳の誕生日の日、家に帰ると郵便受けに手紙が入っていた。 その內容は驚くべきものだった。 「犠牲」のその後を描いたAnother Story 「ニセモノカゾク」 當たり前が當たり前じゃない。 僕は親の顔を覚えていない。 ここに居るのは知らない親です。 家族の形が崩壊していく様を描いた物語
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