《平和の守護者(書籍版タイトル:創世のエブリオット・シード)》ダイジェスト版:平和の守護者 - 新時代編 -
――それは、新たな時代の語。
「長谷川大將閣下、お茶がりました……何か重要な案件ですか?」
「ああ、わざわざすまんな岡島佐。いやなに、今期の『ES適検査』の結果が屆いたのだが……とうとう百人を超えたという報告でな」
「『星外者事変』から七年で右肩上がりに増えていましたからね。他國でも同様だとか?」
「それでも我が國ほどの増加ペースではないようだ。かつての戦いで失った戦力が補充できると喜べば良いのか、平和な時世にと嘆けば良いのかわからんよ」
「博孝君も同じことを言ってました。馬場博士に原因の調査を依頼していますが、一度“現地”で確認しないことには……」
「“例の件”か……対『星外者』用の戦力として『活化』済みの『ES能力者』が『零戦』と“君達”、さらには空戦一個連隊。それに準ずる戦力として空戦一個師団に陸戦一個師団。『全天探知』で『星外者』が地球の周囲に現れれば探知も可能……頃合いと言えば頃合いだな」
「それでは?」
「許可する。當面の戦力が整った以上、次の段階に進むべきだろう」
――それは、時を重ねて長した者達と新たに訓練校の門を潛る者達の語。
「検査の間は退屈だったけど、訓練校に著いたらその退屈も吹き飛んだなぁ。これが“第二”ES訓練校かー……って広っ!? 向こう側が見えない!?」
「そこで騒いでる人、邪魔です」
「えっ、あ、ぼ、僕ですか? すいません……って、もういなくなっちゃった。それにしても可い子だったなぁ……」
「そこのクソ。道の真ん中で騒いでんじゃねえよ。端に避けて死ねやボケ」
「今度はガラわるっ!?」
「ああん!? 喧嘩売ってんのかテメェ!?」
――新生も々。
「僕は沖田恵一(おきたけいいち)です。殉職した父のように立派な『ES能力者』になりたいです! 父の仇を討ってくれた『英雄』河原崎さんを尊敬しています! 」
「わたしは砂原楓(すなはらかえで)です。尊敬する『ES能力者』はお父さん……『穿孔』、砂原浩二です」
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「俺は松原忠邦(まつばらただくに)。尊敬する『ES能力者』なんていねえ。いずれ俺が最強の『ES能力者』になるからな」
――かつての學び舎で、“彼ら”は教となる。
「『攻撃型』および近接戦闘の指導を行う長谷川沙織空戦中尉よ」
「『防型』の指導を行う武倉恭介空戦中尉っす」
「『支援型』の指導および戦、戦略に関して講義を行う岡島里香空戦佐です」
「対『星外者』特殊部隊(Anti Outer Special Forces)――通稱『AOSF』の部隊指揮、河原崎博孝空戦中佐だ。新生諸君の“全的な”指導を行う。よろしく頼む」
――ぶつかる訓練生達。
「砂原浩二? それってたしか『星外者』に殺されかけてまともに戦えなくなった『ES能力者』だろ? そんな奴はさっさと引退すりゃいいんだ。年寄りの冷や水はに毒だぜ」
「――前言は撤回しなくてもいいから表に出て」
「け、喧嘩はやめようよ。ね? ほら、松原君も砂原さんのお父さんのことを心配して言ってるんだろうし……」
「アァッ!? 眠いこと言ってるとテメェも一緒に畳むぞゴラァッ!」
「なんでこっちに矛先が向くの!?」
――それを見て和む教達。
「おーおー、グラウンド見てみろよ。“楓ちゃん”と松原の喧嘩だよ。なんか沖田が周りをちょろちょろしてるが……懐かしいねぇ、俺達も何度かやり合ったよな」
「博孝と沙織っちの場合、喧嘩の域を超えてたっすよね。つーか私闘とか校則を思いっきり破ってるんすけど……房江校長なら止めないっすよね」
「……十年経っても言われるなんて。だから悪かったって言ってるでしょ!」
「あはは……まあ、一秒もあれば止められるから見守っとこうか?」
「そうだな。いくら“教”の娘でも沙織みたいに『武化』は使えないし、松原も同じだ。新生レベルの汎用技能での喧嘩なんてじゃれ合いみたいなもんだし、校則を破ってでも主張したいことがあるんだろうさ」
――それは、先達がかつて通った道。
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「さて、諸君らはこの一ヶ月で『ES能力者』として自分の能力やES能力について學び、ある程度は理解し、習得してきたことと思う。そこで、だ……今から模擬戦を行う」
「模擬戦? 訓練生同士でですか?」
「それだと組手と大差ないだろう? 相手をするのはこっちの……尉、挨拶を」
「はい、中佐殿。わたしは教導補助を行う河原崎みらい空戦尉。河原崎中佐と名字が同じだから、気軽にみらい教って呼んでね?」
「河原崎……教の兄妹? あれ、でも髪のとか……」
「可い……って、わたし達より年下?」
「こんな子と戦うなんて……」
――ただし、狀況も環境も違う。
「一つだけヒントをやろう。尉は『豪腕』とも呼ばれる『ES能力者』だ。その點に留意して挑みたまえ。さあ、“模擬戦開始”だ」
「豪腕って……見ろよあの細腕」
「というか俺達よりも年下だろ? きっと俺達に自信をつけさせるために」
「――もう始まってるよ?」
「摑まっ!? 投げっ!? た、高あああああああああああああああぁぁっ!?」
――『ES能力者』は空を飛ぶ。ただし、『飛行』以外でも飛べる。理的に。
「人間お手玉。百……二百メートル?」
「おー……こりゃまたほどよく高く投げたなぁ。みらいも手加減が上手くなって兄ちゃん嬉しいぞ」
「……えへん」
「手加減!? アレで手加減!? 逆フリーフォールってレベルじゃねえ!?」
「手加減という言葉を辭書で引くべき――ああっ、こっちに來た!?」
――死累々。
「今回の教訓は簡潔かつ明確だな。『ES能力者』を外見で侮れば痛い目を見る……ま、わざわざ言わなくても骨に染みて理解したか」
「言っても聞こえてないんじゃないっすかねぇ……いくら教育方針が違うとはいっても、“教”が見たらなんて言うか」
「とりあえず気付けをしてくるね?」
「で、目を覚ましたら下段蹴りでもう一回飛ばすと……さすが師匠!」
「そんなことしないよ!?」
――訓練で実戦よりも恐ろしい目に遭わせればどんな時でもがく。
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「今日からしばらく、近接戦闘を重點的に鍛えるわ」
「あの、長谷川教? だからってなんで刀を抜くんです?」
「……? 近接戦闘の訓練をするって言ったわよね?」
「真剣ですよねそれ!?」
「『穿刃』よ。わたしの二つ名でもあるわ。ちなみに『星外者』も斬れるから」
「名前は聞いてませんし死にますから!」
「大丈夫。さすがに殺しはしないし、仮に死にかけても岡島教が治すから。『全治(ぜんじ)』って呼ばれるぐらい、治療系ES能力の名手だから……授業の一環として重傷者の治療を実演してもらうのもアリね」
「ナシです!」
――二つ名持ちは伊達じゃない。
「今日は防系ES能力の講義っす。というわけで、俺はここから一歩もかないんでみんなで攻撃してみるっすよ」
「でも反撃するんでしょう?」
「しないしない。“そんなこと”する意味もないっすから」
「……さすがに反撃なしは武倉教が不利じゃないですか?」
「そうですよ。俺達だってこれまで鍛えてきたんですから」
「おいおい――舐めんなよヒヨっ子共。俺も一応『堅牢』って呼ばれる『ES能力者』だ。一発でも攻撃が通ったら希する部隊に推薦狀を書いてやるよ」
――最も安全で、最も優しく、ある意味最も危険。
「今日は支援系ES能力の訓練を行います。教育擔當はわたし、岡島が務めますね」
「……真剣で斬りませんか?」
「斬りません」
「……全然砕けない巖をひたすら毆り続けるような苦行は?」
「ありません」
「そ、そうですよね。『支援型』って直接戦闘に向いてませんし、長谷川教達みたいなことにはなりませんよね!」
「ええ、もちろん。わたしは長谷川教みたいに近接戦が得意じゃないし、武倉教みたいに防が得意でもない。河原崎教のような萬能もなければ、みらい教のように莫大な『構力』もありませんから」
「ですよね! 良かった、今日は死にそうな目に遭わずに済みそう!」
「―-でも、支援に特化した『ES能力者』でもどれぐらい戦えるかは見せるから」
「えっ? なんで下段蹴り――」
――教え子は本気、教導する側も本気。
「さて、諸君はこの一年で訓練で攻撃、防、支援、さらには戦や戦略の大切さを學んだと思う。というわけでここは一つ、諸君らの長を見せてもらいたい」
「教方がそういった前振りをする時って、俺達にとって地獄の始まりですよね?」
「なあに、諸君ら全員で俺と戦うだけだ。もちろん俺は全力で戦うから、これまで培ってきた技の全てを発揮して抗ってくれ」
「なにが“もちろん”なんですか!? そこは手加減するべきでしょう!?」
「……? 死力を盡くしてこそ長するってもんだろ?」
「すっごい不思議そうな顔をされた!? 長谷川教と反応が一緒じゃないですか!?」
――定期的な任務もハードモード。
「なんだろうなぁオイ。訓練より任務の方が気が休まるってどういうことだよ……」
「心から同意するけど、この前の任務だって大変だったじゃないか。まさか『ES寄生』と戦する羽目になるなんて……」
「長谷川教と訓練するより安全でしょう?」
『ノーコメント』
「っ! 『探知』に反応が……」
「おいおい、言ってる傍からかよ」
――“実戦”は訓練に勝る。
「仮面……一何者だテメェ?」
「わたしは『天治會』所屬、『火焔』のベールクト。日本の『ES能力者』の卵達を潰せるなんて運が良いわ……あなた達の命、貰いけます」
「そんなっ! 『天治會』は河原崎教達が壊滅させたはずじゃ!?」
「何事にも例外はある。それだけのことですよ」
「二つ名……獨自技能保持者!? クソッ、テメェら早く逃げろっ! 教達を呼んでこい!」
「松原君!?」
「一秒でも多く稼ぐから早く行けぇっ! 弱っちい奴がいたら邪魔なんだよ!」
「っ……『ES能力者』は分隊行が最低基準でしょ!? 砂原さんは教達に報告してきて!」
「で、でも……」
「良いから早くっ!」
――ただし本の実戦とは限らない。
「はい、というわけで今回の仮想敵を務めた河原崎鈴空戦曹長だ。曹長、自己紹介をしたまえ」
「どうも『AOSF』第三中隊所屬の河原崎鈴です。お兄様とお姉様の妹もやってます。お兄様とお姉様に目を使ったら燃やします」
『いやその紹介はおかしい』
「適度に手加減が出來て、なおかつ攻撃系の獨自技能保持者ってことで呼んだんだ。良い経験になっただろう?」
「……マジで死ぬかと思ったっつーの」
「同だよ。あ、ここで死ぬんだって思った……」
――絆は紡ぐもの。
「あ、あの……」
「砂原さん?」
「二人とも、ありがとう。教達が用意した相手だったけど、わたしを庇ってくれて……」
「あはは、僕たちは『ES能力者』だけど、男としてはの子を守らないとね。まあ、守り切れたとは到底言えないけど」
「ケッ、雑魚は邪魔だから消えてほしかっただけだっつーの」
「それでも同期として……ううん、“仲間”として謝する。ありがとう……恵一、忠邦」
「っ! うん、どういたしまして楓ちゃん!」
「…………チッ」
「あれ? 松原君……いや、忠邦君、照れてる?」
「ぶっ殺すぞテメェ!」
――人脈は財産。
「諸君、先日の任務はご苦労だった。ご褒として本日は特別講師をお招きした。こちら、長谷川源次郎空戦大將だ」
「中佐達が鍛えている訓練生か……腕が鳴るな。たまには全力を出しても罰は當たるまい」
「『武神』じゃないですかああああああぁぁ!?」
「どこがご褒だボケェ!? 褒っていうならせめて休みにしろや!」
「はっはっは、そんなに喜ぶなよ。でも、そこまで喜んでくれるなら今度は『零戦』を呼んでみるか」
「やめてくださいっ! フリじゃないですからね!?」
「……強くなれるなら、それはそれで」
「楓ちゃん!? その思考は危ないよ! 長谷川教みたいになるよ!?」
「良い度ね沖田訓練生。貴方には特別授業をプレゼントするわ。容は……そうね、素手でわたしの攻撃を捌き続けてもらおうかしら。1日ぐらい」
「死にますからね!?」
――け継がせたいもの。
「砂原訓練生。これは俺の勝手な傷による提案なんだが……『収束』を覚えてみる気はないか?」
「『収束』……わたし、が?」
「ああ、君がだ。他でもない、君にこそ覚えてほしいと思っている。なにせ君のお父さんが編み出したES能力だからな」
「でも、わたしは落ちこぼれで……」
「たしかに今の君には欠けているものが多い。だが、『構力』の集中に関しては高い才能がある。さすがはあの人の――“砂原教”の娘だと心するぐらいにな」
「…………」
「なあ楓ちゃん、“昔みたいに”腹を割って話そうか。俺が君の教じゃなく、みらいの兄貴として接してた頃みたいに」
「……みらいちゃんのお兄さんとして?」
「ああ……楓ちゃんのお父さんはな、かつて俺達を鍛えてくれた。そりゃもう滅茶苦茶強くて、今でもその背中に屆いた気がしない。『ES能力者』としてはだいぶ近づけたと思うけど、教としては足元にも及ばないだろうなぁ」
「…………」
「軍機が絡むから詳しくは言えないんだが、正規部隊に行ってからは隊長と部下の関係になった。で、俺は任務中にヘマをしちまってな。敵に捕まっちまったんだよ」
「お兄さんが?」
「おう。いやぁ、あの頃はまだまだ弱くてなぁ。それで隊長に助けられたんだが……その時隊長が“大怪我”を負った。『構力』の大部分を失ったのも、それが原因だ」
「っ!?」
――蛙の子は蛙。
「本當は伝えていい報じゃないんだけど、せめて娘の君だけは知っていてほしい。あの人がどれだけ強くて、どれだけ教え子や部下のことを思い遣っていて、どれだけすごかったのかってね」
「パパ……お父さんが……」
「砂原教は否定するだろうけど、あの人が負った傷については俺にも責任がある。他に恨みを向ける相手も“もういない”し、恨むなら俺を恨んでくれて良い。でも、これだけは言える」
「……?」
「良いかい楓ちゃん。俺が近くにいる時なら、どんな奴が相手だろうと絶対に守り抜いてみせる。あの人も……君のお父さんもそう言うだろう。死ぬなら年功序列で、教え子より後に死ぬなんて師としちゃあこれ以上ない恥だからな」
「…………」
「例え君が俺を恨んだとしても、殺したいと思ってもそれは変わらない。殺されてやるわけにはいかないけど、守り抜く……でも、俺や他の教が近くにいない時、自分や仲間を守る時には力が必要だ」
「……うん」
「だからこそ君に『収束』を教える。他の子にも教えるつもりだけど、今のところ在學中に習得できそうなのは君だけだ。君自を守るため、仲間を守るため、無辜の人々を守るため……覚えてみるつもりはないか?」
「本當に……本當にわたしがお父さんの技を覚えられるの?」
「簡単にとは言わない。仮にも二級特殊技能だし、ただの『ES能力者』でも『星外者』を相手にして戦えるようになる技だ。指導は厳しいものになる……それでも、やると言うなら全力で教える」
「――やります」
「……もうし悩んでもいいんだぞ?」
「お父さんの技を継げるなら、どんなに辛くても頑張れる。それに、自分だけじゃなくて仲間のみんなを守れるようになりたいから」
「そうか……なら加減はしない。訓練生のに『収束』を叩き込んでやる」
「はいっ!」
「よし、良い返事だ。それなら早速訓練を……と言いたいけど、今日はもう遅い。ゆっくり休んで明日からだな」
「わかりました……お兄さん」
「ん?」
「お兄さんは恨んでも良いって言ったけど、わたしは恨まないよ。お父さんは許してるんでしょう?」
「……許す許さないの話じゃなくて、最初から何の問題にもしなかったよ」
「それならわたしもそうする。これでわたしが恨んじゃったら、ただの逆恨みだよ」
「……そうか」
「うん。それじゃあおやすみなさいお兄さん……ううん、河原崎教」
「ああ、おやすみ砂原訓練生。しっかりと休みたまえ」
「さすがは教の娘ってところかねぇ……あの子を鍛え上げるのが、せめてもの恩返しになれば良いけどな」
――変化は急激に。
「『構力』の集中が甘い! そんなんじゃ格上には通じないぞ!」
「はい! 教!」
「よし、その調子だ! 集中させた『構力』を常に意識しろ! まずは利き手だけで良い! ただし、それで周囲への警戒が疎かになったら意味がないぞ!」
「わかりました!」
「ねえ、忠邦君」
「んだよ恵一」
「なんか最近、楓ちゃんが強くなってない? あと、河原崎教との距離が妙に近くない?」
「……知るかボケ」
「教と僕達って十歳ぐらいしか違わないんだよね……社會に出たら十歳差って普通だよね?」
「だから何が言いてえんだ喧嘩でも売ってんのかゴラァッ!」
――新たなる“鍵”。
「このはまさか……僕が、獨自技能を?」
「おいおい、しかもそりゃ河原崎教の……」
「恵一、一発毆らせて」
「なんで!?」
――そしてそれは、仮初の平和が終わりを告げる語。
「太平洋上の『全天探知』の一部が消失……『星外者』です!」
「十年ぶりか……短い平和だったのか、思ったより長かったのか」
「みらいみたいに『空間転移』で突然現れなかっただけマシと思いましょう。真正面から來てくれたのなら、全力で潰せます」
「それもそうか。では河原崎中佐」
「ええ――『AOSF』各隊員へ通達! 現刻を以って第一種戦闘配備! わざわざ遠いところからいらっしゃったクソッタレ共を叩き返すぞ!」
――そして再び現れる『星外者』。
「“アレら”ではなく妙な反応があると思えば……貴様等はなんだ?」
「おいおい、ノックもなしに來たと思えば相変わらず禮儀を知らねえな『星外者』。なんだって言われりゃアレだ――お前らの敵だよ」
――各地での開戦。
「強い反応があるな……貴様、何者だ?」
「白崎……ああいえ、違いました。野口伊織空戦尉です。見知り置かなくてけっこうですよ? すぐに死んでもらいますから。新婚旅行の最中に襲ってくるとか、殺されても文句はないですよね」
「殺した後じゃあ文句を言おうにも言えねえんじゃねえかなぁ……」
――“次世代”同士の激突
「わたしは『天治會』のフェンサー。父の無念を晴らすため、この世界を滅ぼす! まずは手始めに仇の娘である砂原楓! 貴からよ!」
「おいおい、ずいぶんイカレたお姉さんじゃねえか。父の無念って言ってもよ、國際テロリストの無念っつーのはさぞ騒で傍迷そうなんだが」
「忠邦君オブラートに包んで!?」
「売られた喧嘩は買う。長谷川教にもそう教わったから」
「あの人本當に余計なことしかしないっ!? くそっ、この戦いが終わったら絶対に文句を言ってやる!」
――忘れ去られた子ども達。
「あなたは……まさかっ!?」
「初めまして、と言うべきでしょうか。わたしは丙512號、イズヂェーリエ。以後お見知りおきを――『火焔』のお姉様?」
「っ!」
「わたしの『凍結』とお姉様の『火焔』、どちらが上か……試してみましょう」
「待って! わたしはあなたと戦う気なんて!」
「それは余裕ですか? それとも憐れみ? わたし達を置き去りにして“上のお姉様”と一緒に平和な世界で生きていた……それだけで萬死に値する!」
「話を聞いて……ああもう!」
――三つ。
「我々は貴方達が言うところの『星外者』だ。しかしこちらに敵意はない。同胞が攻め込んできたことは謝罪しよう」
「それで『はい、わかりました』って言うと思うか?」
「思わん……が、彼ら『過激派』の行は我々『穏健派』の関與するところではないのだ。こちらの要求をけれてくれれば即座に撤退する。もちろん他の同胞も連れてだ」
「要求をけれれば撤退するってのもすごい話だよな……一応、その要求とやらは聞くだけ聞いてやるよ」
「貴方かそちらの年の柄を引き渡してほしい。貴方がたの力が我々には必要なのだ」
「――は?」
「え? 僕?」
――事態は世界中を巻き込む。
「長谷川大將閣下、合衆國からの通達です! 『我々は『穏健派』と手を結ぶ』と……河原崎中佐および沖田上等兵の引き渡しを要求しています!」
「歐州連合より通達です。奴ら『過激派』と手を結びました! 空戦部隊が急速展開中!」
「っ! 奴らはこの狀況を理解しているのか! 中佐達を引き渡したとしても相手が退く保証などないのだぞ!」
「もしかすると『星外者事変』の時のように他者をれる者がいるのかもしれませんね……“そうであるなら”まだマシですが、彼らが己の意思でいているとなるとかなりまずいです」
「二正面作戦か……いや、『穏健派』や『過激派』が獨自にく可能を考えると、それ以上の難局だな」
「他の國が靜観する保証もありません。また、この騒に乗じて各國家間でぶつかることも有り得ます」
「その場合は第三次世界大戦か、第二次『ES世界大戦』か……岡島佐、君は『AOSF』の指揮を執りたまえ。俺も出る」
「了解いたしました」
――平和な時代は終わりを迎え、騒の時代が訪れる。
「ひいふうみい……數えるのも馬鹿らしくなるぐらいのお客さんだな」
「この狀況で手を出してくるとか、向こうは清香達が何をしたか忘れたんすかね」
「『星外者』への対抗戦力が日本に集中しているのが気に食わなかったんでしょ。あるいは平和ボケしたんじゃないかしら」
「せっかく平和になったのに……新しい妹が見つかったのは嬉しいけど、これは嬉しくない」
「あのー……隊長? なんでそんなに落ち著いてるんです? 隊長と僕の能力が原因っぽいんですけど……」
「松原一等兵の言葉を借りると、んなもん知るかボケってところだな。そんなことで責任じてたら俺は十年前に死んでるっての」
「は、はぁ……そんなものですか?」
「そんなもんだよ……っと、岡島佐から連絡だ。『零戦』および第一から第三までの対『星外者』部隊の展開完了。各『ES能力者』部隊も配置済みだそうだ」
「それじゃあ?」
「ああ――久しぶりの大暴れだ」
――戦いは數である。
「……と、啖呵を切ったは良いものの、さすがにきついなこりゃ。沙織、そっちは?」
「『星外者』を七斬ったわ。どこの國かは知らないけど、『ES能力者』は數えてない。なるべく殺さないようにはしてるけどね」
「そうか。こっちは今ので十目だ。『ES能力者』は同じく……そろそろ退いてくれても良いと思うんだがねぇ。恭介は?」
「こっちは三っす。みらいちゃんが五っすね。『ES能力者』は以下同文っと……しっかし、ここまで被害を出されて退かないってことは」
「何か、“タネ”があるってこと? きょーすけ、無理はしないでね?」
「た、隊長……み、皆さんも、よ、余裕がありますね……」
「鍛え方が足りんぞ沖田上等兵。といっても、よくついてきてるよお前ら。砂原一等兵に松原一等兵もな」
「『ES能力者』の相手をするだけで一杯……悔しいです」
「ケッ、俺らが弱いんじゃなくて隊長達がおかしいだけだろ」
『岡島より『AOSF』各位。各戦線は維持こそできているものの全的に後退中。部隊の孤立に注意されたし……っ、この反応は……』
「佐? どうした?」
『この『構力』の反応に規模……でも……まさかっ!』
――そして訪れる。
『戦闘中の『AOSF』各位へ。これより援軍が到著します! 繰り返します! 援軍が到著します! 各自誤に気を付けて!』
「援軍……どこの部隊っすか? 『零戦』は一番遠い戦線に配置されたっすよね?」
「通信狀況を見るに部隊が接近してるとは思えねえ……『探知』に引っかかる『構力』も――」
「……博孝? どうしたの?」
「おい……おいおいおい! 噓だろ……間に合ったのかよ!」
「お、お兄ちゃん?」
「一個連隊が駆け付けるよりも心強い援軍だ……“あの人”が來たぞ」
――『穿孔』の復活。
「十年間――待たせたな」
そして盛大に何も始まりません。
どうもお久しぶりです、作者の池崎數也です。
今日は4月1日……エイプリルフールということで、ネタとして平和の守護者の『その後』の語をダイジェストで書いてみました。
一度やってみたかったんです、エイプリルフールに何かネタを投稿するということを。
主人公はかつてハリドに父親を殺され、博孝が仇を取ったとある年。そして砂原の娘である楓も主人公でありヒロインでもある、といった形でしょうか。
博孝達はある意味相変わらずで、とある目的から訓練生の教育を希したのですが……。
『あとがき』や想欄での返信でれていた『その後』の語は大こんなじかな、と思いながら書いていました。地の文がほとんどない、臺詞ばかりの話だと中々難しいですね。
それでは、こんな拙作ではありますが今後ともお付き合いいただければ幸いに思います。
新作をそろそろ投稿し始めたいと思いつつ、このようなネタを……
- 連載中150 章
【書籍化】天才錬金術師は気ままに旅する~世界最高の元宮廷錬金術師はポーション技術の衰退した未來に目覚め、無自覚に人助けをしていたら、いつの間にか聖女さま扱いされていた件
※書籍化が決まりました! ありがとうございます! 宮廷錬金術師として働く少女セイ・ファート。 彼女は最年少で宮廷入りした期待の新人。 世界最高の錬金術師を師匠に持ち、若くして最高峰の技術と知識を持った彼女の將來は、明るいはずだった。 しかし5年経った現在、彼女は激務に追われ、上司からいびられ、殘業の日々を送っていた。 そんなある日、王都をモンスターの群れが襲う。 セイは自分の隠し工房に逃げ込むが、なかなかモンスターは去って行かない。 食糧も盡きようとしていたので、セイは薬で仮死狀態となる。 そして次に目覚めると、セイは500年後の未來に転生していた。王都はすでに滅んでおり、自分を知るものは誰もいない狀態。 「これでもう殘業とはおさらばよ! あたしは自由に旅をする!」 自由を手に入れたセイはのんびりと、未來の世界を観光することになる。 だが彼女は知らない。この世界ではポーション技術が衰退していることを。自分の作る下級ポーションですら、超希少であることを。 セイは旅をしていくうちに、【聖女様】として噂になっていくのだが、彼女は全く気づかないのだった。
8 172 - 連載中107 章
【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。
フルバート侯爵家長女、アロナ・フルバートは、婚約者である國の第三王子ルーファス・ダオ・アルフォンソのことを心から愛していた。 両親からの厳しすぎる教育を受け、愛情など知らずに育ったアロナは、優しく穏やかなルーファスを心の拠り所にしていた。 彼の為ならば、全て耐えられる。 愛する人と結婚することが出來る自分は、世界一の幸せ者だと、そう信じていた。 しかしそれは“ある存在”により葉わぬ夢と散り、彼女はその命すら失ってしまった。 はずだったのだが、どういうわけかもう三度も同じことを繰り返していた。四度目こそは、死亡を回避しルーファスと幸せに。そう願っていた彼女は、そのルーファスこそが諸悪の根源だったと知り、激しい憎悪に囚われ…ることはなかった。 愛した人は、最低だった。それでも確かに、愛していたから。その思いすら捨ててしまったら、自分には何も殘らなくなる。だから、恨むことはしない。 けれど、流石にもう死を繰り返したくはない。ルーファスと離れなければ、死亡エンドを回避できない。 そう考えたアロナは、四度目の人生で初めて以前とは違う方向に行動しはじめたのだった。 「辺境伯様。私と契約、致しませんか?」 そう口にした瞬間から、彼女の運命は大きく変わりはじめた。 【ありがたいことに、電子書籍化が決定致しました!全ての読者様に、心より感謝いたします!】
8 123 - 連載中18 章
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8 135 - 連載中86 章
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8 131 - 連載中174 章
魔法の世界でプログラム
序章 2017/06/01 序章スタート。(過労死するまでの話です。IT業界の事がすこしだけ書かれています。) 俺は、真辺。しがない。プログラマをやっている。 火消し作業から久しぶりに戻ってきた會社で、次の現場の話をされる。 営業からのお願いという名前の強制受注が決まった。 5ヶ月近く現場を駆けずり回って、なんとかリリースが見えてきた。 そんな時、SIerの不正が発覚。善後策を考えるために會社に戻る事になる。しかし、そこで更なる訃報が屆く。 俺達は、身體以上に心が疲れてしまっていた。今日は久しぶりに家に帰ってゆっくり休む事にした。 しかし、俺は電車を待つホームのベンチで眠るように死んでしまった。 いわゆる過労死というやつだ。 少年期 2017/06/11 第11話。少年期編スタート(人物紹介や設定紹介が多い) 俺は、アルノルト・フォン・ライムバッハ。辺境伯の後継ぎだと言われている。 俺はどうやら魔法のある世界に生まれ変わった様だ。 最初は言葉もわからなかった。スキルを得て言葉がわかるようになると、次は魔法を使ってみたくなる。 無事魔法が使える事がわかる。 友と出會い。日々を過ごしている。 そんな俺に、一つの情報が屆く。”ライムバッハ家”を狙った賊が居るという物だ。 俺は、その情報を冒険者から聞いて、寮を出て救出に向かった・・・。 冒険者 2017/07/01 第36話。冒険者編スタート。 アルノルト・フォン・ライムバッハは、再出発を行う。それは、冒険者として生きる事になる。 その前に、やらなければならない事がある。それを、片付ける為に、ライムバッハ領に向かう事になる。 ライムバッハ領での用事を終わらせて、共和國に向かう事にする。
8 162 - 連載中5 章
死んだ悪魔一家の日常
延元紅輝の家族は普通ではない。 一家の大黒柱の吸血鬼の父親。 神経おかしいゾンビの母親。 神経と根性がねじ曲がってるゾンビの妹。 この物語は非日常的な日常が繰り広げられるホラーコメディである。
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