《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》45.悪役令嬢は味方を得る

埒が明かない。

こうなればフェルミナの獨壇場だった。

は悪い意味で、聲が大きいものの意見が通ることを知っている。

生徒會室へ戻ろうとするクラウディアに対し、逃げるんですか! とフェルミナは聲高にんだ。

「逃げないわ。フェルミナさんも一緒に行くのよ?」

「無実を証明してください!」

どこまでもフェルミナとの會話は立しない。

整合など、彼んでいないからだ。

今はこの場を去ることを優先したほうがいいだろうかと、クラウディアが考えたとき。

人だかりの中から聲が上がる。

「フェルミナ嬢、クラウディア嬢は、お一人で楽を運ばれたのですか?」

その聲は、騒がしい中であってもよく通った。

「フェルミナ嬢、おれは男爵家のものです。でもフェルミナ嬢なら、爵位が低いものの問いでも、答えてくださると信じています!」

「え、えぇ。お姉様は一人で運ばれたようだわ」

取り巻きへ目配せしたあと、フェルミナはそう答える。

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あくまでクラウディア一人の罪にしたいらしい。

「リンジー公爵令嬢であるクラウディア嬢が、ご自分でですか? スコット伯爵令嬢、ありえますか?」

「ありえないわね。そもそも配達人は指定の場所へ運ぶのがお仕事でしょう? もしクラウディア様が再度荷を移されるなら、配達人が運ぶはずよ」

第一、クラウディア様ほどの人が、一人で荷を運んでいたら目立ってしょうがないわ、とスコット伯爵令嬢からも援護撃が送られる。

彼らは以前、クラウディアが仲裁した二人だった。

その後も良い関係が続いているようだ。

通る聲の持ち主である男爵令息ことブライアンは、フェルミナに提案する。

「フェルミナ嬢、クラウディア嬢の足跡を辿ってはいかがでしょうか! とても目立つ方です、配達人以外にも、楽を運ぶクラウディア嬢を見た人がいるはずです!」

そして目撃証言を辿れば、おのずと楽の行き先もわかるだろう、と。

クラウディアが現れるだけで、人は道を譲る。

下位クラスの騒の現場では、人垣が割れたほどだ。

公爵令嬢は、下級貴族にとって雲の上の人である。

それを骨にしみて知っている観衆たちは、ブライアンの提案に納得した。

あくまで問題を解決しようとする姿勢のブライアンに、フェルミナも文句は言えない。

「おい、勝手なことを言うなよ!」

と、ブライアンを止める聲もあったが。

「フェルミナ嬢が困ってるんだぞ!? それを助けて何が悪い!?」

フェルミナのため、と彼が主張を返せば、相手は黙るしかなかった。

むしろ騒の本質に気づいていないフェルミナ寄りの観衆ほど、ブライアンを擁護する。

彼らはフェルミナを信じるあまり、クラウディアの罪を暴こうと躍起になった。

意図したものとは別の流れができつつあることに、フェルミナは慌てた様子で言い募る。

は観衆に言い分を認めてもらえるだけでよかった。

本格的な捜査など必要ない。

「みんな、落ち著いて! このことはあたしがしっかり証明するから!」

「フェルミナ嬢だけが辛い思いをする必要はありません! しっかり公正に判斷してもらいましょう!」

そうだ、そうだと賛同する聲が続く。

もうこの場の流れは、ブライアンが掌握していた。

クラウディアは心の中で謝しつつも、表面上は顰めた顔を彼に向ける。

それを見たフェルミナ寄りの生徒は、より一層ブライアンを支持した。

片やフェルミナの手法をそのまま乗っ取ったブライアンは、クラウディアにとてもいい笑顔を向ける。

(もうっ、化粧水が手にった暁には、わたくしが広告塔になって差し上げるわ!)

予想だにしていなかったブライアンの登場に、クラウディアは不覚にも泣きそうになった。

今までもヴァージルやヘレンを筆頭に、味方になってくれる人はいた。

けれど彼とは、たった一回、諍いを仲裁しただけの仲だ。

それなのにして擁護してくれたことが、クラウディアの心を大きく揺さぶった。

あとでスコット伯爵令嬢にもお禮をしようと誓う。

そんなクラウディアの視界の端に、銀髪と赤が映り込んだ。

「では私が責任を持って、公正な判斷をすると約束しよう」

シルヴェスターが姿を見せたことで、あれだけ騒がしかったのが噓のように靜まり返る。

どうやら狀況を重くけとめたヴァージルによって派遣されたらしい。

彼の宣言を理解した観衆は、一瞬の靜寂のあとで歓聲を上げた。

一方は、クラウディアの罪が明るみになると。

一方は、姑息なフェルミナの噓がバレると。

王太子殿下が約束してくれたのだから、これ以上のことはない。

フェルミナは必死の形相で、証人と証拠があることをシルヴェスターに訴えた。

そして。

このあと、生徒會役員を前にした配達人は、呆気なく証言を覆したのだった。

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