《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》50.妹は協力者と落ち合う

授業終わりの自由が利くに、フェルミナは協力者である生徒と顔を合わせる。

昨日の顛末を聞かされた協力者は、口を歪ませるに留まらず、苦々しさを顔に滲ませた。

「こんなことなら、楽を壊しておけばよかったわ」

「ダメよっ、あたしがシルヴェスター様の婚約者になるんだから!」

クラウディアはともかく、リンジー公爵家まで揺らいでは堪らない。

この地位があるからこそ、シルヴェスターに手が屆くのだ。

他の婚約者候補につける隙を見せるのは、真っ平ごめんだった。

それでも楽の紛失に協力したのは、いつもクラウディアの味方をするヴァージルに、しばかり意趣返しをしたかったからだ。

最終的に楽が見つかれば、大きな傷にはならないとわかっていた。

「そういう割りには、失敗続きじゃない」

法を犯して偽まで用意したのに、と不満を隠そうともしない相手を、フェルミナは睨みつける。

「文句があるならちゃんと想定しておきなさいよ! 偽証の件は上手くいったでしょ!」

Advertisement

下位クラスの生徒たちの前で、クラウディアをつるし上げるのに失敗したのは、バカな正義を持った男子生徒が介してきたせいだ。

を発見して生徒會を見返すのに失敗したのは、クラウディアが隠し場所に気づいたせいだ。

想定だった偽証の発覚では、自分も被害者だと言い張れたのに。

「想定できなかったのを、あたしのせいにしないで! 大あんた、偉そうなのよ!」

「元平民がそんなこと気にするの?」

「平民じゃないっ、男爵令嬢の娘よ!」

「一代貴族の男爵のね。公爵の融資があったから、裕福な生活ができていただけよ」

「お父様はあたしをしてるんだから、できて當然の生活よ。それに今は公爵令嬢だということを忘れないで!」

「はいはい。それでまぁ、よくやるわね」

で、どうするの? と、協力者は凄む。

その迫力に、フェルミナは気圧された。

「な、何がよ」

「次の手よ。言っておくけど、偽証した生徒については今も調べられているし、あなたも疑われてるのよ?」

「あたしは関係ないじゃない! それに証拠もないわ!」

証がなくても、狀況証拠が揃えばクロにできる人間が、向こう側にいるのを忘れないでくださる? あなたはまだ殿下の婚約者でもなければ、婚約者候補ですらないのよ」

「あたしは公爵令嬢よっ、確固たる証拠もないのに罰せられるわけないじゃない!」

それにこれからシルヴェスターの婚約者になるの上だ。

クラウディアの汚點さえ曬せば、すぐ乗り換えてくるに決まっている。

「はぁ……とにかく、猶予していられないのは、あなたも一緒。手段を選んでる暇はないわ」

「わ、わかったわよ。楽のときみたいに、機會を見つければいいんでしょ」

シルヴェスター宛ての贈答品に楽を隠そうと考えたのは今目の前にいる生徒だが、それも隠す機會があると知れたから思いついたことだ。

生徒會室報をらし、運び込む機會を探ったのはフェルミナだった。

「できるだけ早くね。楽が見つけられた以上、文化祭が無事終われば、実績を得るのは生徒會だけじゃないわ。あなたの憎きお姉様も、立場を盤石にするわよ」

「わかってるってば!」

教室での二人を思いだし、髪を振りす。

昨日、賞賛をけるのはフェルミナのはずだった。

ヴァージルに見直され、シルヴェスターにされるのも。

なのに、なのに、なのに……!

(あのときたら、あたしのシルヴェスター様にっ!)

人目もはばからず、ベタベタ、ベタベタと。

繰り広げられる景に気が狂いそうだった。

勘違いしているのだ、あのは。

シルヴェスターは誰にも本當の自分を見せない。そうとも知らず、浮かれている。

いくらを振りまいても反応を寄越さないシルヴェスターに、フェルミナは気づいていた。

を知らない、可哀想な人だと。

だからされるフェルミナが、彼には必要なのだ。

決して、父親にすらされなかったクラウディアではなく。

(待ってなさい。あたしが幻想をぶち壊してやるんだから!)

信じていたものに裏切られたクラウディアの顔を想像してほくそ笑む。

そして視線を外している協力者を盜み見た。

(クラウディアが片付いたら、次はあんたよ。あんたなんか、いつでも切り捨てられるんだからねっ)

このときのフェルミナの表は、紛れもなく愉悅に満ちていた。

    人が読んでいる<斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください