《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》18.悪役令嬢は妹をゲットする

「こうして口に出したのはクラウディアで二人目だ。一人目はレステーアなんだが、クラウディアまで男裝しなくていいからな」

「クラウディア嬢もきっとお似合いになられますよ」

「やめろ、仲間を増やそうとするな」

茶化すレステーアをラウルが睨む。

會話にってきたのは、レステーアなりに場を和ませたかったからだろう。

好きという面を守っているラウルにとって、この告白が意味するところは大きい。

(それだけ気を許してくれたのでしょうけど)

嬉しく思う反面、進展の速さが心配になった。

クセのあるらかな髪、妖艶な桃花眼にわれて、社界の華たちはラウルに集まる。

格の良さを際立たせる褐も、惹かれる理由だろう。

ラウルは苦手意識などおくびにも出さず、ご令嬢たちに気さくな笑顔を向ける。

けれど瞳の奧は、常に理的だった。

その有様がビターチョコレートのようだと、クラウディアなんかは思うのだ。

娼婦時代、仲が良くなる前の、ほろ苦さが印象に殘っている。

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だというのに、今やもうラウルの瞳は甘い。

「どうしてかクラウディアは平気なんだ。きっと的な目で、オレを見ないからだろう。それはそれで男としての魅力がないのかと心配になるがな」

「ラウル様は魅力的ですわ」

「今は言葉通りにけ取っておくよ」

「まぁ、本心ですのに! どうして打ち明ける気になったか、お尋ねしてもよろしいかしら?」

そうだな、とラウルはコーヒーに口を付けて、間を置いた。

考えをまとめているのかもしれない。

「クラウディアなら言いらす心配はないと確信が持てた、というよりは、隠しているのが嫌になったんだ」

「嫌に、ですか?」

「クラウディアには知っていてしかった、というべきか……」

「他の令嬢と親しく接していても、勘違いしないでしいと正直に言ったらどうですか?」

「オマエな……!」

頬を上気させ、ラウルが聲を荒げる。

対するレステーアは、ちらりと舌を覗かせた。

「おっと、まだ無自覚でしたか」

「勝手なことを言うな! あーもうっ、クラウディア!」

「はい!?」

強い語気で呼ばれて、反的に肩が跳ねた。

がしがしと頭を掻きながら、ラウルは床を見て、壁を見て、コーヒーを見てから告げる。

「そういうことだ!」

「はい……?」

空気を読んで、とりあえず頷いておいた。

元々ラウルを知っているクラウディアが勘違いすることはないけれど、わざわざ言い含められるということは。

(好意があると、判斷していいのかしら?)

急展開に頭がついていかない。

クラウディアの質問に、意図はなかった。

単に理由が気になっただけだ。

(まだどれくらいの思いかはわからないし……)

早合點してはダメだと、自分を戒める。

クラウディアがシルヴェスターの婚約者候補であることは、ラウルも知っているのだから。

それでも、悸は中々治まってくれなかった。

クラウディア以上に、ラウルがぎこちなくなっていたのは、気のせいだと思いたい。

見送りの際、ふと考えが浮かんで、レステーアを呼び止める。

「不躾で申し訳ないのですけれど」

シャーロットの件で、彼が協力してくれるなら心強かった。

かいつまんで事を話せば、レステーアは快く頷いてくれる。

「オレは必要ないのか?」

「あ、ラウル様は大丈夫です」

「そうか……」

目に見えてしょんぼりしないでしい。

苦手なことを打ち明けたからか、ラウルからは壁が一切なくなっていた。

その気安さにクラウディアもつられて、つい手をばしたくなってしまう。

頭をで回して、犬扱いするな、と怒られたのが懐かしかった。

◆◆◆◆◆◆

「クラウディア様、今日はよろしくお願いいたしますっ」

「こちらこそ、よろしくね」

元気良く挨拶するシャーロットの姿は、新人の侍を彷彿とさせる。

の瞳と目を合わせて可いと告げれば、早くも頭から湯気が出そうなほど真っ赤になった。

「は、はみっ……く、クラウディア様もお綺麗でしゅの……!」

呂律すら怪しい。

(ヘレンに言われた通り、やり過ぎたみたいね)

改めて反省しながら、シャーロットを応接間へ通す。

自室でも良かったのだが、今日は他にも人が來るため、そちらを選んだ。

「レステーア様もお呼びしたけど、本當に良かったの?」

最初レステーアには、シャーロットのことを伏せていた。

他人のコンプレックスを勝手に喋るわけにはいかない。

それでもレステーアは協力を快諾してくれ、シャーロットにも話を通したら、この場に呼んでしいと言われたのだ。

件の令息からは、既に直接謝罪してもらったとは聞いているけど、バーリ王國へ対してわだかまりはないんだろうか。

「猛省されていて、とても丁寧に謝ってくださいましたから。同席されたレステーア様のお話で、悪い方ではないとわかったんですの。それに……」

おかげでクラウディア様が相談にのってくださることになりましたから、とシャーロットは嬉しそうに笑う。

対面してソファに座ると、彼の様子がよく見えた。

恥じらいながら、上目遣いを向けられる。

「あたし、ずっとクラウディア様に憧れてて。お茶會で助けてくださったときは、もうがいっぱいで……あのときは、ありがとうございました! 真っ先にお禮を言うべきなのに、あたしったら自分のことばかりで、一番改めないといけないのは自分だって気付いたんです」

「シャーロット様は何も悪くないわ。考えるきっかけになれたなら嬉しいけれど、わたくしはお話を聞いただけよ」

「いいえ、クラウディア様はこうして時間まで作ってくださいました。あたしなんかのために……」

しは心境の変化があったようで安心する。

けれどまだ自信は持てないみたいだ。

「なんか、なんて言わないで。わたくしはシャーロット様だから、この場を設けたのよ」

「本當にありがとうございます! あの……ご迷じゃなかったら、シャーロットと呼び捨てにしてもらえますか?」

「構わないわ」

「本當ですかっ!?」

「え、えぇ」

食い気味に反応されて、ぎこちない頷きになってしまった。

どうやら前回の呼び捨ては気にられたらしい。

「あ、あの、重ねて、お願いがあるんです」

「何かしら?」

「く、クラウディアお姉様とお呼びしてもよろしいでしょうか!?」

お茶會のとき、客室でクラウディアお姉様と言われたのを思いだす。

あのときは混していたけど、普段から心の中ではそう呼ばれているのかもしれない。

「えぇ、いいわよ」

「あ、あ、ありがとうございます! あたし、これだけで生きていけますの……っ」

「大袈裟ね」

お姉様、というフレーズに、ちらりと異母妹が脳裏を過る。

今後はシャーロットが呼んでくれるなら、まだ頭に殘っている彼の聲も薄れるだろうか。

クラウディアを人系と評するなら、シャーロットは可い系だ。

その點では、フェルミナと似ている。

けれど向けられるは、真逆といえるほどかけ離れていた。

「クラウディア様、お客様がお見えです」

ヘレンからレステーアの來訪を聞き、案を頼む。

気持ちを切り替えるのに、ちょうど言いタイミングだった。

「さぁ、対策會議といきましょうか」

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