《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》31.悪役令嬢は樞機卿と対峙する
屋と同じ紺で彩られた窓枠から、ほど良い風が吹き込んでいる。
「本日はご訪問くださり、ありがとうございます。樞機卿の訪問をけたとなれば、わたくしの商館も箔が付きますわ」
「こちらこそお忙しい中、快くけれてくださり謝のしようもありません」
漁村のときとは違い、今日はきっちりとした正裝姿だ。
けれどざっくばらんな姿を見ているだけに、以前と比べて気さくにじられた。
「まずは商館をけ継がれたこと、お祝い申し上げます」
「ありがとうございます。に余ることと存じますが、誠心誠意つとめていく所存ですわ」
「聡明なクラウディア嬢であれば、何の心配もいりますまい」
挨拶をわしながら様子を窺うけれど、表から読み取れるものはなかった。
人したクラウディアを見る男の目は大決まっている。
相手はこっそり見ているつもりだろうが、に濡れた視線は娼婦でなくても気付きやすい。
シャーロットはそれでコンプレックスを抱えたほどなのだから。
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けれどナイジェル樞機卿からは一切それをじなかった。
単に小娘に興味がないだけかもしれないけれど。
(ケイラお姉様の顧客かどうかも、わからないままだわ)
同じ時期に滯在している以上、偶然ではないだろう。
しかしスラフィムもドラグーンと繋がりがあるようだ。
ナイジェル樞機卿ではなく、彼らのほうがナイジェル樞機卿を陥れようと企んでいる可能も否定できない。
(どちらも政治面では目の上のこぶだもの)
影響力を増したい雙方にとって、それぞれが邪魔な存在だ。
どちらか片方ではなく、どちらとも企みを抱いていて不思議じゃない。
(この辺りは見極めが必要ね)
「今後はクラウディア嬢も積極的に事業に関わられるのですかな?」
「連合王國の商館に限っては、その予定ですわ。現地でのことはオーナーに任せることになりますけれど」
「なるほど……では折りって相談させていただいてもよろしいでしょうか」
「もちろんですわ」
早速きを見せたナイジェル樞機卿に神経を尖らせる。
もちろん表には一切出さない。
(樞機卿もしくは教會が商館に頼ることって何かしら?)
思い付くのは寄付か、教會堂を建設するための援助ぐらいしかない。
しかしナイジェル樞機卿の頼みは、そのどちらでもなかった。
「現在、アラカネル連合王國において教會の教義は一般的ではなく、教徒たちは肩の狹い思いをしています」
「存じ上げておりますわ。樞機卿は彼らのために、王都からはるばる足を延ばされたのですわよね?」
「いかにも。アラカネル連合王國は表面上、かに見えますが、事実はその限りではありません」
昨日訪れた漁村の村がいい例だ。
地方民の多くは漁業で生計を立てているが、裕福とは限らない。
だから寶くじに夢を見るのだろう。
(けれど要因の一つには、教會からの締め付けもあるのではないかしら?)
教會は唯一神信仰の教徒なら手厚く保護するが、それ以外は容赦なく切り捨てる。
教義が異なるアラカネル連合王國は爪弾きにされ、流通を大きく制限されていた。
アラカネル連合王國にとっての不運は、周辺國がみな唯一神信仰だったことだ。
一番流したい相手との間に、壁を設けられている狀態だった。
「困窮にぐ教徒に炊き出しをおこなっても一時しのぎにしかならず、解決には至りません。この地には修道院もないため、私共の行も制限されます」
「なるほど、教會の行が制限されることでより厳しい狀況にあるのですね」
教會の政策について指摘したい気持ちはあっても表には一切出さず、ひとしきりナイジェル樞機卿へ理解を示す。
共と理解。
心証良く話を聞く上で、この二つは欠かせなかった。
口には出さなくても聞き手に求めるものは男共通だ。
「ハーランド王國なら対処できるのですが……そこで私共が一考したのが、彼らをハーランド王國へ招けないか、ということです」
「移住させるということですか?」
「いえいえ、そうではありません。一時的に招く、とお考えください」
國民の大規模な移住は國家間でじられている。
両國の同意があれば別だが、流石にそこまで大それた話ではないらしい。
「彼らが貧しいのは、仕事に就けないからです。技がないため、八方塞がりになっています。修道院があれば私共が教えられるのですが、それもできない」
「だから教えられる場所に招くということかしら?」
「その通りです! やはりクラウディア嬢は聡明であらせられる」
本來なら教會からアラカネル連合王國へ訴えかけたいところだが、いい返事はもらえないとナイジェル樞機卿は眉を落とす。
「私共の力が至らないばかりに、教徒には辛い思いをさせています」
「さぞ歯がゆいこととお気持ちをお察ししますわ」
「痛みります。私共の考えは、彼らを招いて技を教え、それを持ち帰ってもらうというものです」
教會の施策ではアラカネル連合王國にけれられないため、クラウディアの商館に協力を仰ぎたいという。
「商館で一定數の人材を募集し、職業訓練をハーランド王國でおこなうという形であれば、問題視されることはないでしょう。募集さえかけていただければ、あとのことは全て私共のほうでさせていただきます」
「募集をかけるだけでよろしいの?」
「こちらが勝手を申しているのです。クラウディア嬢の手を煩わせることはないと斷言致します」
招く人材の選定、往復の輸送、ハーランド王國での教育も全て教會のほうでまかなうという。
事実上、商館は名前を貸すだけだった。
「私どもの行に、表向き連合王國は良い顔をしないかもしれませんが、悪い話ではありません。連合王國側からしてみれば、タダで技を持った人材を得られるのですから」
ハーランド王國へ招かれた人たちは技を持ち帰る。
それは彼らが生きるためのものだが、結果としてアラカネル連合王國の底上げにもなるのだ。
誰が斷るだろうか。
「素晴らしいですわ! 関わる人たちが、みな幸せになれるなんて!」
「教會に協力していただくのです、商館も相応の名聲を得られるでしょう。私のほうからも教皇へ、貢獻を申し伝えておきます」
「一教徒として、協力は當然だと思っておりますけれど、わたくしのこともお考えいただけて嬉しい限りですわ」
「賛同いただけて謝の極みです」
不備がないよう、改めて書面も用意してくれるという。
話を聞いた限りでは、クラウディアにとって何ら悪い話ではなかった。
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