《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》34.悪役令嬢は頼られる

「ベゼルはおれの育ての親でさ。今のドラグーンが厄介な立場なのもあって、話を聞いてくれたんだ」

「厄介な立場なのですか?」

「あいつは、樞機卿は、こともあろうにおれたちの家族を人質にとったんだ!」

自分たちが守るべき貧民街の住人を人質にとられたドラグーンは、ナイジェル樞機卿の言いなりになるしかなかった。

「人質だなんて……」

繋がりがあるかもしれないと考えていたけれど、あまりのことにクラウディアは絶句する。

修道者としての倫理観はどこへ行ったのだろうか。

「ひでぇ話だろ? おれたちは自分のため、貧民街で暮らす家族のために生きてる。首っこを摑まれて、にっちもさっちもいかない狀況だったんだ」

「共通の敵がいたおかげで、協力はすんなり決まりました」

「ただ奴さん強敵でなー。共闘するとはいえ、スラフィムは軽な立場じゃねぇし、國も違うしよ。正直手詰まりでさ」

「そこへ彗星の如く現れたのがあなたです」

「わたくし?」

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「ローズとしてフラワーベッドへ來ただろ? あとから公爵令嬢本人だって気付いたときは、スラフィムの顔の次に驚いたぜ」

「そういう言い方をされると自分の顔が訳ありのように聞こえるんですが」

「おれからすれば十分訳ありだっての」

クラウディアが娼婦を大事にすることを知り、ルキは現地の協力者として話がつけられないか考えたという。

「ローズの人気はえげつねぇからな。あんたが娼館を作ったら、こそぎ娼婦が移りそうな勢いだぞ」

実際問題、娼館との契約があるため実現しないだろうが、ローズがれられていることにクラウディアは安心した。

「だがまぁ娼婦に理解があるってだけで、信心深いかもしれねぇだろ? 樞機卿もそうだしよ。だからここのところ様子を見させてもらってた」

「まさか菓子店の前で見かけたのも偶然ではないのかしら」

「まぁな。サニーがトラブってたから、出ていくしかなかったけどよ」

ルキはサニーの護衛として、その場にいたわけではなかったらしい。

「んで、今回のこれが決定打だ。あんたには樞機卿に抗う意思がある。スラフィムの暗殺を止めにきたってことは、そういうことだろ?」

熱心な教徒であるほど、異教徒であるスラフィムに対して良い印象は抱かない。

クラウディアが考える以上に、教徒のスラフィムへの當たり強いようだ。

「おかげで敵味方を區別しやすい面もあります。といってもシルヴェスター殿下やクラウディア嬢のように、面を読むのが困難な方もいますが」

二人の事は理解できた。

彼らがクラウディアに何をんでいるのかも。

この期に及んで、ナイジェル樞機卿を支持する気持ちはない。

「一つ質問してもよろしいかしら?」

「一つと言わず、時間が許す限りお答えします」

スラフィムはそう言ってくれるものの人払いをしている以上、長時間話し込んでいるわけにはいかない。

とりあえず一番気になったことをクラウディアは訊ねる。

「スラフィム殿下の敵は、教會ですか? それとも樞機卿ですか?」

アラカネル連合王國にとって、邪魔な相手はナイジェル樞機卿に限らない。

逆にルキにとっては、ナイジェル樞機卿だけが敵に見えた。

クラウディアの質問に、スラフィムはにっこりと笑う。

「どちらも、と張りたいところですが、目下の敵は樞機卿です。彼は修道者としても風上に置けません。それに彼の悪事を明るみにできれば、自ずと教會の力も削げるでしょう」

ナイジェル樞機卿が悪だからといって、教會が悪だとは限らない。

現に、他では善き存在だった。

教會の活がなければ、たくさんの人が命を落とすことになるだろう。

世界勢は混し、戦爭も視野にれなければなくなる。

クラウディアは教會そのものが悪とは思えなかった。

(教會の力がなくとも平穏を維持できる世界が理想とも限らないわ)

國が國民全員を守れたなら、國同士が助け合えたなら、教會の影響力はここまで大きくならなかっただろう。

しかし現実は違うし、これは第三者の影響をけたくない「國」目線の話だ。

平穏が続くのならば、誰の影響力が強かろうが國民は気にしないだろう。

自分たちの生活が守られたら、領主が変わっても気にしないのと同じように。

「で? あんたは協力してくれんのか?」

「考える時間が必要ですわね」

正確にはシルヴェスターと相談する時間が。

「ま、即答は難しいか。おれとしては、あんたのおっかねぇ旦那も巻き込んでもらえたら嬉しいな」

「殿下とはまだ結婚していないわ」

「『まだ』ってだけだろ。あんたのことをだいぶ気にかけてるみたいだからな、優しくしてやれよ」

「言われるまでもないわね」

「そうかよ」

シルヴェスターを怖いと言うことは、どこかで接する機會があったのだろう。

「ルキの本命はシルヴェスター殿下なのね」

「権力は強いに越したことねぇからな」

悪びれない表にはがあった。

自分より年上なのに、弟を見ているような気になる。

(スラフィム殿下にとっては事実そうなのよね)

スラフィムがルキへ向ける目差しは、クラウディアを見るヘレンに近いものがあった。

「あとついでに言っとくと、タダより怖いもんはねぇぞ」

それが何を指しているのかは問い返すまでもない。

ナイジェル樞機卿から提案された件をルキも耳にしているのだろう。

クラウディアは青い瞳を細めて悠然と笑う。

「知っているわ」

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