《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》39.悪役令嬢は熱に包まれる

な時間であったものの守るべき一線と同様に、ここだけは譲れないとクラウディアは浴する時間を確保した。

片時も離れたくないのは事実だが、それはそれ、これはこれ。

を綺麗にしておきたいのはお互い様で、それぞれの部屋で浴を済ませる。

「クラウディア様、大丈夫ですか?」

「……全然大丈夫な気がしないわ」

部屋著に著替えたところで、自分でも顔が強張っているのがわかる。

(元娼婦でしょ! 意地を見せなさい!)

誰かと夜を過ごした回數は數えきれない。

だというのに、張で頭が発しそうだった。

「今からでもお斷りになられては……」

「一緒にいたいのは、わたくしも同じよ」

ヘレンの提案は正しい。

危ない橋をわざわざ渡る必要はないのだ。

けれど斷れば、シルヴェスターも自分もがっかりするのが目に見えていた。

(斷ったら、絶対後悔するわ)

やらずに後悔するよりも、やってから後悔するほうを選ぶ。

(いえ、ヤッてはダメなのだけれど……わたくしったら何を言っているのかしら)

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答えが決まっているからといって、落ち著けるとは限らない。

そんなクラウディアの両肩に、ヘレンが手を置く。

「いざというときは、間を握り潰してください」

「中々にエグいことを言うわね……」

「クラウディア様のおのほうが大事ですから。こんなことなら男用の貞帯を用意しておくんでした」

後半は呟きだったが、クラウディアの頬が引きつる。

(娼館とは無縁のはずなのに、ヘレンはどこで知識を仕れているのかしら)

帯とは、理的に渉をできなくさせるための拘束である。

用と用とがあるが、大が施錠できた。

一般的なものではないので知らない人のほうが多いだろう。

(この手の知識は、男関係なく興味を引くものだけれど)

ヘレンの友人に経験富な人や浮気に悩まされている人がいれば、伝え聞いても不思議ではない。

ただ公爵令嬢(クラウディア)が知っているのはおかしい気がして、反応しないよう心がける。

けれどおかげでし気が抜けた。

(ヘレンの口からそんな単語が飛び出すなんて予想外だったわ)

に笑顔が戻ったところでシルヴェスターの部屋へ向かう。

先ほどまでいた場所なのに、ドアを抜けると別の部屋のようにじられた。

照明がし暗くなっているからだろうか。

それともシルヴェスターが部屋著でソファーに腰かけているからだろうか。

サイドテーブルへ視線を移すと、お酒が用意されていた。

貴族の令息令嬢は社界デビューを果たせば、大人とみなされる。

お酒を飲むことも許されるが、艶を帯びたシルヴェスターだけでクラウディアは酔ってしまいそうだった。

浴してり気が殘る銀髪は耽的で、が良くなったから目が離せない。

「飲むか?」

「遠慮しておきますわ」

「うむ、私も飲もうかと思ったのだが、理が鈍る気がして止めた」

それはいただけない。

けれど飲みたい心境になったということは。

「シルも張しています?」

「しないほうがおかしいだろう。何度ベランダからびたくなったかわからぬ」

話の流れでシルヴェスターの部屋で過ごすことになったが、クラウディアの部屋を訪れたほうが良かったのではないかと今の今まで悩んでいたと白狀される。

「君をこんな時間に歩かせるなんて」

「ホテルのことですし、部屋は隣ですわ」

歩いたといっても、目と鼻の先である。

「部屋著の君を曬すとは、私はどうかしていた」

「落ち著いてください。ちゃんと上著を羽織っていますから」

人目にれても問題ない格好のはずだ。

そもそもこの階に他の客はいない。

廊下にいるのは侍と護衛騎士だけだった。

いつもなら空気として扱う相手なのに、今晩は違うらしい。

手を取られ、たぐり寄せられる。

シルヴェスターはソファーに座ったままなので、自然と見下ろす形になった。

腰へ腕を回され、自分の越しに黃金の瞳を見る。

「この上著をがす権利を私にくれるか?」

「……っ」

普段とは違う甘えた聲に、一瞬にして顔が沸騰した。

これはズルい、と思う。

上目遣いで子のような顔を見せられて、誰が斷れるだろうか。

は立派な人男なのに、可くて仕方がない。

(シルって著痩せするわよね)

晝間の裝いよりも部屋著のほうが生地がらかだからだろうか、前と比べてさらに強くじられた。

長が高いから細に見えるのも理由の一つだろう。

実際にれると、こんなにがっしりとしていのかと驚かされる。

けれど見下ろすシルヴェスターは可いの一言に盡きて。

(騙されてはダメよ……!)

そう自分に言い聞かせるものの、抗うがなく頷いてしまう。

子の無邪気さとは無縁の指が、腰から背中へと伝った。

シルヴェスターが立ち上がり、肩へ手をかける。

肩甲骨を指ででられると、上著をがされているだけのはずなのにの芯が熱を持った。

部屋著が夏で薄手なのも良くなかった。

シルヴェスターの丁寧な指使いが如実に伝わってくる。

恥ずかしさから目が泳ぎ、シルヴェスターを直視できない。

反応しているのも悟られたくなかった。

どっどっど、と心臓がうるさい。

(敏過ぎるでしょ……)

額に汗が浮かびそうだった。

アラカネル連合王國の夜は気溫が下がる。

夏の暑さを言い訳にするのは厳しい。

られているわけでもないのに鼓が速まり、クラウディアは火照りからいでしまいそうだった。

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