《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》44.悪役令嬢は樞機卿を訪ねる

三日後、クラウディアはシルヴェスターと二人でナイジェル樞機卿が滯在するコテージを訪ねた。

れでは事業についてだと伝えている。

実際、契約もおこなう予定だ。

コテージは人里離れた森にあった。

國際勢から、アラカネル連合王國での修道者に対する國民の心証は良いとは言えない。

炊き出しなどの宣教を妨害することはないが、住民のほとんどは未だ友好的ではなかった。

それが悪意に変わらない保証はなく、を守るために森のコテージに滯在しているというのがナイジェル樞機卿の主張だ。

「漁村の村と比べて、道は整っていますわね」

「外観は素樸でも贅が盡くされているという話だからな」

一見するだけでは気付きにくいが、道中の土は平らにならされていた。

馬車の揺れも石畳の道と変わらない。

人の手が相當にっている証拠だ。

コテージの裝も、客を招く応接間以外は高級ホテルと変わらないという。

表面だけ取り繕われた清貧にシルヴェスターの眉が寄る。

Advertisement

「バイキング時代と変わらずか」

昔から教會の腐敗は存在した。

その最たる例が、表向きは清貧をうたいながら裏では私腹をやすというものだ。

修道者も生活のために商いをする。

しかし商人とは違い、利益追求が目的ではないため、修道者の商いには今でも稅が免除されることが多い。

それを悪用し、不正に稼ぐ者がいた。

稅の免除は、利益追求をおこなわないという國との約束の上でり立っている。

反故にされ、いいように利用された側に立つシルヴェスターとしては、思うところがあって當然だろう。

「沿岸部の修道院がよく襲われたのでしたね」

荒々しく見えて、バイキングは効率的である。

稼げる見込みのないところを襲ったりはしない。

教會は被害しか主張しないが、清貧――國との約束――を守っていたかどうかは自明の理だった。

けれど教會が襲われた被害者であることも確かで、バイキングが悪だという構図は覆らない。

修道者も人であり、腐敗するというだけの話だった。

ナイジェル樞機卿については、単なる腐敗で済ませられないが。

到著する馬車の音が聞こえていたのか、間髪をれず修道者の一人に出迎えられる。

彼はナイジェル樞機卿の部下だという。

コテージは森とよく調和していた。

元は木こり小屋だったと聞いて納得する。

一階建てで広さも限られているように見えた。あくまで正面からは、だけれど。

応接間へ通され、ナイジェル樞機卿と対面する。

悪事を知ったあとでは、気さくな笑みがかえって薄ら寒かった。

「まさか殿下までご一緒いただけるとは、栄の至りです」

「事業容に興味があってな」

「とても素晴らしいお話だったので、勝手ながら殿下にもお話させていただきました。この件、おけしますわ」

「ありがとうございます! 教徒たちも救われます。こちらが用意させていただいた書面です」

協會側で全て用意する旨を確認し、頷く。

タダより高いものはない。

最初から樞機卿に企みがあるとクラウディアは勘付いていた。

契約から尾を摑めればと考えていたが、シルヴェスターと相談して當初の考えは改めた。

笑顔でクラウディアは契約書へサインする。

ナイジェル樞機卿さえいなければ、事業容に問題はなかったからだ。

あくまでドラグーンを支配しているのは彼で、教會ではない。

教會の指示である可能もゼロではないが極めて低かった。

関係者が増えれば増えるほど、報は洩れやすくなる。

唯一神信仰を教義としているハーランド王國だが、教會に全幅の信頼を置いてるわけではなく、それは他國も一緒だ。

信仰心がないわけではない。

人が運営する組織同士の関わり方には線引きが必要で、互いに利害が一致していることのほうが重要なのだ。

でも互いが意図しないところで綻びが生じることもある。

だから報を集め、きを監視することは國として當たり前のことだった。

教會の指示であれば、大がかりな計畫になる。

その兆候を國が察知できないわけがない。

人の社會に、完全は存在しないのだ。

隠す側、暴く側の雙方に言えることだが、もし教會の指示ならば彼らは「善」を放棄したことになる。

ナイジェル樞機卿のおこないは犯罪者そのものだが、教會が狂人の集まりでない限り、この構図は立しなかった。

    人が読んでいる<斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください