《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》45.悪役令嬢は樞機卿の拘束を見屆ける

(単獨犯だからこそ、今まで隠れてこられたのだわ)

穏やかな時間は、ここで終わりを告げた。

急に玄関が慌ただしくなり、スラフィムが騎士を連れて現れる。

クラウディアたちにとっては予定通りだ。

「ナイジェル樞機卿、貴方の柄を拘束させていただきます」

「これはこれは……穏やかではありませんな」

ナイジェル樞機卿は驚いた表を見せるものの、慌てた素振りはない。

証拠はないと高をくくっているのだろう。

確かに現狀あるのは、ルキをはじめとしたドラグーンの証言だけだった。

港町で現地の犯罪ギルドにシルヴェスターを襲わせたように、近年のドラグーンの勢力拡大にはナイジェル樞機卿が関わっていた。

一見するとドラグーンが抗爭に打ち勝ったようだが、ナイジェル樞機卿がタイミング良く告発によって相手組織を弱化させていたのだ。

犯罪ギルドのきには國も目をらせている。

ドラグーンに力が集まり過ぎると警戒されるため、中には併合せずに裏で繋がっている組織もあるという。

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この中でナイジェル樞機卿のきは犯罪ギルドの告発しかない。それも報を流しただけで、告発にいたのは別の人間だった。

彼は己の発言力をよく理解していた。

言い逃れができる範囲でしか行を起こさず、樞機卿という立場で得られた報を悪用していても証はない。

しかし報の提供はドラグーンに留まらず、ケイラからも得ていた。

に見栄を張りたいのはナイジェル樞機卿も一緒なのか、彼は睦言の中で自慢を洩らしていたのだ。

娼館はドラグーンの資金源だ。

その事実がなくとも娼婦の地位は低く、世間での証言の信憑は犯罪ギルドと変わらない。

だが証人としては呼べなくとも、報の価値をクラウディアは理解していた。

ケイラの話だけでは単なる自慢にしか聞こえなくとも、ドラグーンの報と掛け合わせると見えてくるものもあった。

ナイジェル樞機卿は自分がいかに事を隠すのが上手いか、金銭に余裕があるかを語り、いつか湖畔へ行こうとケイラをっていた。

他にも花の群生地や現地に行かなければわからない話もあったという。

語られた地域の特徴は、ドラグーンが摑んでいたナイジェル樞機卿の行経路と符號した。

(自慢の中で語られた場所に何もないはずがないもの)

一緒にしい景を見るだけなら、えばいいだけの話だ。

彼がそこで見せたいのは景ではなく、己の権威であることは容易に想像がついた。

(権力者って、考えることが同じなのかしら?)

娼婦時代、クラウディアも客の自慢によく付き合った。

立場を自慢したい客ほど、縁の地をクラウディアに案したものだ。

貴族なら一族の歴史を語る建や領地。

商人なら保有している劇場などの不産を見せられた。

修道者ならば、王都の大聖堂が真っ先に思い浮かぶ。

しかしナイジェル樞機卿が語った場所にあるのは、廃れた修道院や教會だった。

コテージのつくりを鑑みても、何か隠されていると思わざるをえない。

シルヴェスターも同じ判斷をし、現地へ早馬を走らせた。

結果、ナイジェル樞機卿がいかにして資金を稼いでいたのかが判明した。

貧民街と併せて王都郊外では既に部隊が指揮され、悪事の証拠が集められている。

この三日間は、シルヴェスターだけではなくクラウディアも奔走した。

ナイジェル樞機卿に気取られることなく、ハーランド王國と連攜する必要があったからだ。

さらには証拠隠滅を防ぐため、彼の柄も拘束しなければならない。

間違いは許されず、慎重を期す場面だが時間は限られていた。

きが鈍ればそれだけ逃げる隙を與えてしまう。

本國の部隊のきとナイジェル樞機卿の拘束は、同時であるのがましかった。

ナイジェル樞機卿の視線をけて、シルヴェスターが眉を落とす。

「実に殘念なことだが、貴殿には犯罪の容疑がかかっている。ここで柄は拘束されるが、すぐにハーランド王國へ移されるゆえ安心してしい」

教會に懐疑的な國と、信仰心の篤い國では居心地が違う。

ナイジェル樞機卿の油斷をうため、シルヴェスター――ハーランド王國――としては、親な対応を貫いた。

だが嫌疑がある以上、ここから渉相手はナイジェル樞機卿ではなく教會へ替わる。

ハーランド王國としては教會に責任を求める意向だ。

「私も最善を盡くすゆえ、ご協力いただきたい」

穏やかなシルヴェスターに、ナイジェル樞機卿は従順だった。

「もちろんです。疑われているのなら、なおのこといくらでも協力しましょう」

余裕の笑みさえ浮かべている。

この期に及んでだ。

(樞機卿の地位があれば、裁かれないと思っているの?)

罪が明るみになれば斷罪は免れない。

政治的配慮があったとしても、深手は避けられないはずだ。

「何らかの行き違いがあったこと、お手間を取らせたことを申し訳なく思います」

騎士に囲まれる段階に至っては、スラフィムへも殊勝な態度をとる。

ナイジェル樞機卿の様子に危機じられず、クラウディアは気味が悪かった。

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