《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》49.悪役令嬢は求められる

就任式のあとは宴會だ。

新生ギルドの樹立を宣言した一室に留まらず、あっという間に倉庫のそこかしこで酒が溢れる。

あとはベゼルとルキに任せ、クラウディアはヘレンを連れて一足先に辭した。

「ローズ様、どこへ行かれるのかしら~?」

正しくは辭そうとして、ケイラに捕まった。

続いてミラージュとマリアンヌも絡んでくる。

「これからが本番でしてよ」

「あれから全然お顔を見せてくださらないから寂しかったです」

二人に両脇を固められ逃げる隙がない。

しかしすぐにヘレンが助け船を出してくれた。

「みなさん、ローズ様はお忙しいんです!」

強引に娼婦たちを引き剝がし、クラウディアを背中に庇ってくれる。

(流石ヘレン! 一緒に來てもらって助かったわ)

三対一では分が悪過ぎた。

しかも相手は百戦錬磨の娼婦たちである。

「あら~? 獨り占めする気~?」

「わたしはローズ様の侍ですから」

「ぶ~ぶ~」

ふふんっ、と鼻高々にヘレンは宣言する。

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ケイラがらしく頬を膨らませるけれど、次の予定があるのも事実だった。

「公娼も施行される。近々娼館へ寄らせてもらうよ」

「約束ですよ~!」

「永久指名、期待していますわ」

「わたしだって、ローズ様に負けないよう手管を磨いて待っています」

「私はもう客ではないのだが……」

元々、本番をする気はなかった。

を理解しているだろうに、前世の先輩娼婦たちはクラウディアを接待したくて仕方ないらしい。

しいから抜けて、地上へ上がる。

◆◆◆◆◆◆

馬車の手前。

月明かりに照らされる長い金髪が見えた。

「外で待っていらしたのですか?」

「挨拶だけしてすぐに帰るつもりですから」

次の予定、とはスラフィムのことだった。

急遽會いたいと連絡をけたのだ。

ハーランド王國での執務の合間に寄ってくれたらしい。

「アラカネル連合王國は、貴方の後ろ盾になることを決めました」

「……どういうことですの?」

突然のことに頭が真っ白になる。

商館を通して人道支援をおこなうことで、クラウディアは信用を得た。

これだけで十分な果だ。

「貴方のおかげで、連合王國はんでいたもののほとんどを手にれられました」

クラウディアが教會と契約を結んだおかげで、アラカネル連合王國は損することなく砂糖の製を含めた農耕技を得られる。

砂糖は教會の勢力を削ぐための方便でしかなかったはずなのにだ。

修道者の悪事が明るみになったことで教會の力を牽制することに功したのも含めれば、アラカネル連合王國の利益は大きい。

「わたくしだけの力ではありません。むしろわたくしのしたことなど些事に等しいですわ」

「奧ゆかしいのは評判通りですね。確かにシルヴェスター殿下の力があってこそ、ナイジェル樞機卿を追い込むことに功しました」

斷罪するまでには至らなかったけれど、スラフィムとしては一線から退けられただけでも良かったらしい。

「……ルキから助けを求められても、自分は解決できませんでした」

力がなかったのは自分のほうだと、スラフィムは儚く笑う。

「そしてルキが信用しているのは貴方で、シルヴェスター殿下ではありません」

本命はシルヴェスターだと聞いていただけに、クラウディアは首を傾げる。

「頼れる確証があるなら権力は強いほうがいいですが、シルヴェスター殿下に関しては今回に限った話でしょう」

それもクラウディアがいたから立した関係だという。

今後も助けてもらえるとは限らない。

けれどクラウディアは違う。

「貴方は決して弱者を見捨てない。その人となりを連合王國は評価しました」

「言葉を変えれば、まだ理由価値があるということかしら?」

スラフィムを迎えるパーティーのあと、シルヴェスターから王城へ招かれたときのことが思いだされる。

回しのため、スラフィムがクラウディアに接するかもしれないと言い含められた。

クラウディアの返答に、スラフィムは聲を出して笑う。

「あははっ、手厳しいですね」

「タダより高いものはありませんから」

「確かに、おっしゃる通りです。でも悪い話でもないでしょう?」

「連合王國の要求によります。後ろ盾になる見返りに、何をお求めになる気ですの?」

スラフィムがにっこりと笑う。

それは以前、彼の敵は教會なのか、ナイジェル樞機卿なのか問うたときと同じ笑顔だった。

「クラウディア嬢、貴方との繋がりを求めます」

「漠然としていますわね」

「頼れる場所が一つ増えたと考えていただければ嬉しいんですが」

「利害が一致する限りは、そのように考えさせていただきます」

「今はそれで妥協しましょう。自分たちはまだ會って日も淺いですし」

これから信頼を勝ち取っていきます、とスラフィムは宣言する。

彼の熱意が何に由來するのか、クラウディアにはわからなかった。

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