《斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】》50.連合王國の王子は弟に蹴られる

「やーい、振られてやんの」

「聞いてたんですか」

地下への口前で弟の姿を見る。

ルキはいつもの黒裝束姿でイタズラな笑みを浮かべていた。

クラウディアを味方にできたからか、今にも鼻歌を歌いそうなくらい上機嫌だ。

ナイジェル樞機卿の脅威は去ったものの、ルキは相変わらずフードを被ったままだった。

彼にとって顔は昔から隠すものだったという。

整い過ぎているのが面倒だと言われたときは反応に困った。

スラフィムとしては、顔を隠すことなく生活してしいと思う。

挨拶をしようと足を向けていたところに現れてくれるのは都合が良かったけれど、ばつは悪い。

「カッコ悪いところを見られましたね」

「クラウディア嬢はシルヴェスター殿下と結婚すんだろ?」

「そうですね」

「おまえに間男は似合わないと思うぞ」

「そういう風に見えましたか?」

「いんや」

ルキは異母兄弟だ。

雙子ではないが、思考は似ていた。

クラウディアへ向けるも、大して違わないようにじられる。

「彼となら、今後も教會と戦えそうですから」

「おまえの野だもんな。教會が憎いわけじゃねぇんだろ?」

「ええ、連合王國が勢力をばすのに邪魔なだけです」

「自分勝手な理由だと、クラウディア嬢は頷かねぇぞ?」

「わかっています。彼も見抜いているでしょう」

あれだけ冷靜に考えられる人だ。

簡単に靡かないのは承知の上である。

「諦めるには惜しい人材なんです」

「気持ちはわかるけどよ。おまえシルヴェスター殿下とやり合えんの? おれは無理だぞ」

「……そこは穏便に」

いかないだろうか。

どうにかして上手く話を付けられないか考える。

「おまえさ、一周回って一番難しい道を通ろうとしてね?」

教會の牽制にはシルヴェスター――ハーランド王國――の協力を得られるだけで十分だったはずだ。

それが今や対象はクラウディアへ移り、共闘のみを葉えるためには結局シルヴェスターを説得せねばならない。

「バカバカしく見えます?」

「足掻く姿が稽だとは思わねぇよ」

々頑張れ、とスネを蹴られる。

「協力していただけないんですか」

「シルヴェスター殿下を敵に回すのは無理。おっかねぇもん」

「自分だって無理です」

「んー、おれにできることってあるのか?」

「応援していただければ、勵みになります」

「何だよ、それ。ま、利があるなら考えるよ」

「事務的で安心します」

本當はし寂しいけれど、を求められる立場にないので口に出さない。

お互い、この距離が一番付き合いやすくもあった。

「暗殺依頼が來たときは教えてやる」

「ありがとうございます。シルヴェスター殿下が依頼主でもお願いします」

「それはちょっと……」

一度捕まったのは聞いているが、どんな目に遭ったのか。

ルキはすっかりシルヴェスターへ苦手意識を持っていた。

「本能的にさ、逆らっちゃいけない相手だってじんだよ」

前にもハーランド王家の怖さについて話したことがある。

実際顔を合わせたことで骨に沁みたらしい。

「おまえも下手こいて早死にしないようにな」

「心配してくれるんですか?」

「バーカ、折角のパイプがなくなったら困んだろうが」

憎まれ口を返されるが、スラフィムは頬が緩むのを抑えられなかった。

「貴方もあまり危険なことはしないように」

「誰に言ってんだよ。おれはローズガーデンの構員だぞ?」

いつだってルキは死と隣り合わせで生きてきた。

本人がまない以上、生活を変えることはできないだろう。

それでも。

「自分は貴方に生きてしいです――って、痛い!」

先ほどよりも強かにスネを蹴られて、目に涙が浮かぶ。

無言のままルキは去るが、何となく気持ちは伝わった気がした。

    人が読んでいる<斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください