《【書籍化&コミカライズ】偽聖とげられた公爵令嬢は二度目の人生は復讐に生きる【本編完結】》8話 最初の駒
「何故そのような重要な事を私のような一商人にお話しに?」
館にあるリシェルの部屋で。
新しいドレスがしいとリシェルが呼びだしたのは高級品を一手に引きけてくれている商人カティ家の當主マルクが、出された紅茶のティーカップを置きながら尋ねた。
人払いをした上で、リシェルは逆行前の過去にあった事を全てマルクに話していた。
もちろん盜聴などされないように盜聴阻止の魔道を設置した上で。
「ええ、簡単な事です。
私は貴方を信用していますから」
そう言って、ティーカップを持ったまま優雅に微笑む。
もちろん、リシェルも100%、マルクを信用しているわけではなかった。
けれどリシェルは彼に賭けるしかない事がある。
まだ人もしていない令嬢が騎士達に極に命令できるわけもなく、リシェル単獨でかせる人材がいない。父グエンは國王派だ。王家に逆らおうなどと言う娘の話など聞いてくれもしないだろう。
父に頼らず、人材を得るには……資金がいる。
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王族と闘うにはそれなりのリスクもおかしたうえで戦力を整えないといけない。
資金力のあるマルクを味方につけなければ最初の段階でつまずいてしまう。
現時點でリシェルに手持ちの駒など一つもない。
何か戦力になる駒をもたなければ、戦いようがないのである。
これは賭けだった。
逆行前の彼の人柄を知っているからこそリシェルはマルクに話す選択肢を選んだ。
信頼をよせれば、その信用に応えてくれようとする人柄を、最大限に利用するために。
リシェルは思い出す。
逆行前の13歳の時。
「貴方の母君、ラチェル様には借りがありますからね」
そう言って微笑んだのは領地一の商家カティ家の當主マルクだった。
茶髪の30代くらいの中年男。
彼はガルデバァムの奇襲をけて経済的に困窮していたラムディティアのためにほぼ全財産をなげうってくれたのだ。
確かにラムディティアと取引は多かったがそこまで盡くしてくれるほどの間柄でもなかった。
何故そこまでしてくれるのか不思議でリシェルが聞いた時返ってきた答えがそれだったのである。
マルクの母が重病で薬も買う事のできないほど貧窮していた時代、高価な薬をくれ、援助してくれたのがリシェルの母だったと教えてくれた。
マルクもを壊し引退を考えていた時期に戦爭がおこりラムディティアに財産を寄付してくれたのだ。
「もう私には何も殘っていませんが、お役に立てる事があるなら何でもお申し付けください」
そう言って笑ってくれたマルク。
その二年後には病で息を引き取ったと聞いている。
逆行前の約束だが、彼の人柄の良さに賭けるしかない。
利用しているようで心苦しくはあるが……神に復讐を誓った以上、手段は選んではいられない。
「先ほど説明したとおり、貴方はこれから起こりうる未來で、母の恩義から我が家の危機に全財産をなげうってくださいました。
その時の約束です、何かあれば頼るようにと」
「……なるほど」
マルクはまるでリシェルを探るようかの目で見やる。
確かに、このような夢語のような話を聞かされて信じろと言う方が無理だろう。
リシェル自、そんな話をされれば、何を言ってるのかと眉を顰めたに違いない。
「もちろん。すぐに信じてくれなどとは言いません。
ですから……」
言って、リシェルはマルクに何枚かの紙を差し出した。
「これは?」
「私の知りうる限りの、需要品の値上がりの相場表です。
來年、魔石の代わりの燃料が魔導都市クリアトロスで開発されたと発表され、その燃料も一度功することから魔石の値段が大幅に下がります。
それを機に、冒険者ギルドのいくつかがダンジョン攻略の廃業を宣言し、新大陸発見の方に力をれることになります。
けれど、クリアトロスで開発された燃料は魔道に負荷が高すぎてすぐ壊れてしまうことが知れ渡りその2年後反で魔石の相場が一時期いまの2倍以上になります」
「程。そのお話が本當なら確かに儲け話ではありますが」
そう言ってマルクが無意識なのか顎を手でなぞる。
「お疑いならこちらの紙を。
近々おこる各地の災害も記してあります。
一番近いのがラドゥウ領での不作です。
麥の産地であるラドゥウ領で日照りがおき、麥の値段が高沸します。
まずはこちらで様子見をしていただけると」
リシェルがにっこり微笑めば
「それでお嬢様。このお話は私の他に誰が知っているのでしょうか?」
と紙に目を通しながら聞いてきた。
「現時點では貴方だけです。
私が記憶を取り戻したのもつい最近ですから」
そう言えば、マルクが突如、リシェルの書いた紙を火の魔法で一瞬で灰にした。
その様子をリシェルは無表で眺める。
失敗した。
リシェルの話など信じるに足らないと思ったのだろう。
だから紙を灰にした。
リシェルは判斷を誤ったと後悔した。
前世の知識で彼はぼかして話すよりも真実を告げた方が信用してくれる人と見込んでいたのに。
やはりもうし信頼を得てから、話を進めるべきだったと、リシェルは思う。
最初の賭けで……失敗するなんて。
ショックはけたが顔にはなるべくださないようにリシェルは無表を裝った。
まだマルクに斷られただけ。
マルクはを誰かにらすような人ではないはず。
また別の手を……などと考えていれば
「ではお嬢様。今後このようなお話は紙などへの記はおやめください。
相手にするのが國なのならば、証拠になるようなものを殘すのは悪手です。
全て頭に叩き込むように。
もしもの時のためにそういった事を裏にやり取りできる魔道もお渡しします」
「……それでは……」
リシェルの問いににっこりと、マルクは微笑むのだった。
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