自分は未來を験してきた。

まるで夢語のような話を貴族の令嬢は語りだした。

突然、次の舞踏會での裝の打ち合わせがしたいと、公爵家の屋敷の個室に通され、語られたのが――リシェルが斷罪されて死ぬまでの未來だっだ。

これから先の未來にしてはあまりにも王子の行が常識を逸していて、作り話にしてももうしうまく作れるのではないかという話にどう反応していいかマルクは迷った。

い頃から取引があり、目の前のが噓をつくようなではないということはよく知っている。母に似て聡明で、裏表のない純粋なだ。

それでも、リシェルの話す話はにわかには信じられなかった。

いくら賛同するものを周りにはべらしたとしても王子の橫暴を、かつぎ上げた有力貴族が誰も止めないというのはおかしな事だ。

そのような愚鈍な王子なら裏でっているものが誰かしらいるはずで、多の遊びは許しても國が傾くようなそのような暴挙を許すはずがない。

適當に遊ばせておいて、重要な事はすべてかつぎ上げた派閥の貴族が握るはずである。

財務という貴重な仕事を自分の派閥以外の人間に。しかも１８歳のに廻すなど言語道斷だ。

かつぎ上げた貴族達すら王子を制できていない。

いくら傍らに聖が控えているとしてもおかしいとじてしまうのは商人基準で考えてしまうからだろうか？

國王陛下が病気とはいえ、まだ生存している狀態でそのような王子の橫暴が許される狀況に不自然さをじる。

けれど。

リシェルの母がマルクの母親に薬を渡した話をしたことで確信した。

この話は真実だと。

マルクはもともと、父と娼婦の間に生まれた子供だった。

子の居なかった父と義母が、どうせ育てられないだろうと、半ば強引に生まれたばかりの自分をひきとり義母が産んだ事になっていた。

けれど、それを知ったマルクは母親を探し出し――長い間娼館で働き重い病にかかり助からないだということを知る。

商會は父と義母に実権を握られていた。當時のマルクに母を助けるほどの高価なポーションを買えるわけもなく、それを助けてくれたのが學友だったリシェルの母だ。

この事はマルクとリシェルの母親しか知らないはずである。

マルクの出生に関わることゆえ、リシェルの母が他言するとは考えにくい。

彼はそのような人間ではない。

リシェルの母、ラチェルの微笑む顔が脳裏に浮かぶ。

きっとあの時けた恩を自分は今返す時なのだろう。

マルクは一言リシェルに斷りをいれると書類に目を通しながら、リシェルの言葉に耳を傾けた。

必死に自分に関心をもたせようと言葉を選んでいるのはわかる。

確かに國を相手にするのに、一令嬢にすぎないリシェルが何かをしたければ、手足となってく駒は必要だろう。

その手持ちの駒に彼は自分を選んだのだ。

彼は今無防備で、何一つ後ろ盾がない。

恐らくこの様子では父親にもまだ真実は知らせていないはずだ。

父親に話を通しているなら直接父親の方から自分に話がくる。

それにしても……出された資料は財務の仕事を任されただけあって、必要な報が余すことなく書かれている。

これだけの事を１８歳のが記憶し、何が必要で不要な報か選びとり、まとめ上げた事は素直に嘆に値する事だ。

もしこの書類が本當なら巨萬の富を手にいれるのも夢語ではない。

それがゆえ、手持ちのカードを出す順番に問題がある。

恐らく自分を１００％信頼するという、意思表示のために書いたのであろうが……。

このように詳細に憶えているのなら、報をもうし小出しにするべきところを、最初からこのように全てだしては渉人としては失格だ。

これだけあれば儲ける事などいくらでもできる。

報を隠しもっと詳細な報がほしい、このから聞き出そうと興味をもたせる報量を提示すべきで、すべて報をだしてしまっては彼と組む意味がない。

１８歳のなのだから書類に々不備があったほうがかえって相手を油斷させ自分のペースに持ち込みやすくすることも出來たはずなのに　が正直すぎ、優秀がゆえに、他の１８歳の人間ならこのくらいのレベル、というのがわからないのかもしれない。

逆行前の年齢は１８歳。

國でそれなりの役職につかされたようだが……マルクから見ればまだまだ子供。

本人は大人として対等に渡り歩こうとしているが、敵意のある商人などを相手にすればたちどころに言い負かされてしまうだろう。

それだけ言葉の端々にスキがある。

このように証拠に殘るような紙に書いて渡してしまうのも、彼がそういった渉事になれていない証拠である。

後でもうし指導しないといけませんね。

マルクは中で軽くため息をつくのだった。