《【書籍化&コミカライズ】偽聖げられた公爵令嬢は二度目の人生は復讐に生きる【本編完結】》22話 魅

「それじゃあ、ここからは俺とリシェルで行ってくる」

領地の森の中で、小さな祠を前にロゼルトがそう言った。

「お二人でですか?」

リシェルの護衛のシークが不満そうに聞き返す。

次の日、無名な跡があると、馬に乗せられ別の場所に移すれば、領地の小さい森で子供がやっと通れるくらいの祠に案されたのだ。

「だって通れないだろ?」

ロゼルトに言われてシークがうっという顔になった。

確かにシークの巨では通れない。

「この向こうに跡が?」

リシェルが聞けば

「ああ、本當に小さな祠だけどな。

狹い窟が500m位続いてその先に俺たちが立てる位の大きさの空間になってて壁畫があるんだ。

子供同士で遊んでる時俺たちが見つけたんだぜ」

を張っていうロゼルト。

「是非見てみたいです!」

リシェルが目を輝かせた。

誰も知らない跡は聖云々以前に、跡マニアのリシェルが興味をもつのに十分だった。

シークが恨めしそうにロゼルトの護衛に視線を向けるが、彼らはさっと目をそらす。

そもそも公爵令嬢に伯爵家の騎士達が意見を言えるわけもない。

「……わかりました。口を見張っています。お気を付けて」

シークが言えばリシェルは微笑んだ。

「心配しないでください。それでは行ってきます」

と、嬉しそうにリシェルはロゼルトの後に続く姿をシークは心配そうに見送った。

□■□

通された場所は。

確かに本ではどこにも記載されていない小さな祠だった。

祠の中に祭壇があり、その周りに壁畫が描かれている。

「これはラムウ歴以前の壁畫ですね」

壁畫の絵を見てポツリとリシェルが呟けば

「凄いな。よく一目でわかったな」

と、ロゼルトが腕を組んで言う。

「はい。神々が13柱記載され、服の文様がケチャルトゥス文様です。

神殿の勢力がロディウス教に変わったあと描かれた壁畫は服の文様はカルダーヌ文様になっていたはず。

邪神ケトゥラウスが邪神になる前の壁畫ですね」

「ご明答。流石公爵家のお嬢様は頭がいいな」

ポリポリ頭をかいていうロゼルトに

「これくらいは一般的知識です」

と、リシェルが笑ってかえす。

壁畫は聖伝説そのものだった。

數千年前。

神と悪魔が爭った。

神は悪魔と戦い――ほとんどの悪魔を滅ぼし神々の勝利が目前かと思われたその時。

神側から裏切り者がでた。

それが邪神ケトゥラウスだ。

邪神は神々を滅ぼし、世界を滅ぼそうとした。

そこに現れたのが聖なる乙。聖ソニア・テル・ラムウである。

ソニアは神々より賜った聖なる短剣クリフォロスで邪神を倒し闇の奧底に封じたのだ。

祠にはその様子が事細かに描かれている。

が聖剣で邪神を封じたその日からラムウ歴ははじまった。

確かに見たことのない壁畫ではあるけれどよくある容の壁畫であり、あまり新しい報はない。

「うーん。あまり興味はなかったか?」

リシェルの様子を見てロゼルトが頬をぽりぽりとかく。

「い、いえ、そんなことは」

リシェルは指摘されてし狼狽する。

顔には出さないように仕草や表は気を付けているはずだ。

それが出來ていないのではこれからの仕事に支障をきたしてしまう。

「リシェルは何が知りたいんだ?」

「それは……」

が魅などというものが使えるのかを調べたい。

けれどそれを彼に口にだしていいものか迷う。

ロゼルトはこちら側だ。

それに……彼にも聖の魅了を意識してもらうにはいい機會かもしれない。

「聖様に人々を導く力。人心をる力……魅のような力があるのかと思いまして」

リシェルが言葉を選びながら言えば、ロゼルトがきを止める。

「……ロゼルト?」

「……リシェル。お前まさか、マリアのことを調べていたのか?」

ロゼルトの問いに。リシェルはそのまま固まるのだった。

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