《【書籍化&コミカライズ】偽聖げられた公爵令嬢は二度目の人生は復讐に生きる【本編完結】》29話 忘れた想い

三日後に全て話す。

そう言って三日後に會う約束をしてロゼルトと別れた。

逆行がロゼルトが関係しているというのなら。

リシェルの願いが神に屆いたわけではなかった。

何がどうなっているのだろう。

そして何より、逆行の真実を知る喜びよりも……たった三日ロゼルトに會えない事実が辛くてしかたなかった。

ロゼルトは呆れながらも功すれば必ず褒めてくれた。

いつも周りの大人はリシェルが出來て當然という態度で褒めてくれる人などいなかったのに。

それに失敗しても、そんなことも出來ないのかとも言われない。

失敗を笑って許して貰えるなんてことはいままでなかった。

失敗をも笑ってれてくれる。

だから――彼の前では何も恐れず素直になれた。

自分と同じ逆行前の記憶があるという似た境遇を共有できる相手がいてくれてとても頼もしかったのもあるかもしれない。

ロゼルトと一緒だと、不安で押しつぶされそうだった毎日がまるで別のようにじられた。

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毎日がとても楽しくて。

ずっとこのままが続けばいいと思っていた。

忘れかけていた。

復讐するという目的を。

自分の復讐に対する気持ちなど所詮その程度のものだったのだろうか?

頭が痛い。

何故かが締め付けられる。

たった三日。會えないのは三日だけなのに。

ロゼルトに會えないというだけで不安で押しつぶされそうなのだ。

私は――どうしたのだろう。

自分はこんなにも人に依存する質だったのだろうか?

一人で戦うというあの決意はどこにいったのだろう。

頭がクラクラする。

どうしようもない寒気にリシェルはそのままベッドに潛り込んだ。

□■□

「お薬をお持ちしました」

シークがリシェルに薬を差し出した。

あれからリシェルは眠ることもできず、シークが様子を見にきたときには高熱でうなされ醫者に診てもらったあとだ。

恐らく、張がとけて疲れが出たのだろう。

シークは高熱でうなされるの橫に座る。

薬をメイドが運ぼうかとも申し出たが、鑑定のギフトもちのシークが飲ませたほうが安心ではある。

ここに來る前にジャミルに毒系統だけは気をつけろと念を押されたからだ。

彼もついてくるのかと思ったが、用事があるからと同行はなかった。

ここの滯在が延びたと連絡をしたときも彼がこちらに訪れる様子はない。

この地なら安全と思ったのかそれとも何か用事があるのだろうか。

「……ありがとう。シーク」

リシェルはそう言って苦しそうに上半をおこし、薬を飲み始めた。

「ロゼルト様がくるのは二日後です。

それまでに風邪をなおしましょう」

「はい。そうですね。治さないといけませんね」

そう言ってリシェルは微笑むがかなり辛そうだ。

シークが手から冷気の魔法をだせば、涼しいのかリシェルが目を細める。

「ありがとうございます。でも無理はしないでくださいね」

薬が効き始めたのかしウトウトしだす。

「リンゼは……まだこちらにこられないのでしょうか」

「はい。一応便りは送ったはずですが……」

「そうですか……」

そう言ってリシェルはため息をついた。

ロゼルトと遊んでいた時はそればかりに気を取られていたが、時々無にリンゼのお茶が飲みたくなるときがある。

こんな時彼の溫かいお茶があればいいのだけれど。

薬が効いてきたのか、リシェルは眠気に意識を奪われるのだった。

■□■

がしゃん!!!

何かの割れる音ともみ合うような音でリシェルは目を覚ました。

朦朧とする意識の中で目をあければ……何故か自分の前に守るようにシークが立ち、ジャミルがリンゼを押さえ、その様子をリシェルの父が見ている。

狀況が一瞬把握できなくてリシェルは固まった。

どういうことだろう。

唖然とその様子をリシェルが見つめる。

「な、何をなさるのです!?」

リンゼがジャミルに抗議の聲をあげ

「どういうことか説明してください」

と、シークも剣を構え、ジャミルを睨みつけた。

実際、護衛のシークも狀況が摑めていなかった。

便りをだしたリンゼが到著し、お嬢様のお茶の用意をしますね。

と、寢ているリシェルの橫で靜かに二人でリシェルの看病をしていたところに、いきなりジャミルとリシェルの父グエンが乗り込んできて、リンゼを押さえつけたのだ。

シークは狀況がつかめずリシェルを守る事を優先した。

どちらにせよ、シークの護衛対象はリシェルだ。

もし仮にグエンとジャミルがリシェルに危害を加えるつもりなら二人に逆らう事も厭わない。

「シーク、リンゼはもうお嬢様にお茶を飲ませたりはしてないよな?」

ジャミルがものすごい剣幕でシークに尋ね

「……まだです。ですがそれが何か?」

「毒だ。あの茶の分から毒が検出された」

と、グエンが答える。

「な、何を言ってるのですか!!お二人とも!!

お茶は毎回シーク様が鑑定してくれています!!

毒など検出されなかったはずです!!!」

ジャミルとグエンにリンゼが食ってかかる。

「そうです。鑑定ではそんな結果は……」

「あれは特殊な毒なんだよ。

紅茶単では毒として作用しない。

一緒にいつもビスケットを食べていただろう?

それと一緒に摂取すると作用する毒だ」

ジャミルが説明すればリンゼの顔が青ざめる。

「……その話……本當なのですか?」

リシェルが聞けば、リンゼは目を逸らした。

「……騒がせたなリシェル。

お前はゆっくり寢ていなさい。

しばらく辛いだろうが、毒が抜けきれば、その熱も収まる」

そう言って、グエンがリシェルの頬をでた。

ついていけない。

何がどうなっているのだろう。

朦朧とする意識の中で、この出來事は夢なんじゃないかとリシェルは戸う。

ずっと小さいときから一緒にいるリンゼが私に毒を?

だってそれはおかしい。

リンゼは私と一緒に殺されてる。

敵のはずない。

「噓…ですよね?リンゼ?」

ポロポロと涙が溢れる。

リンゼだけはずっと味方だと思っていたのに。

前世からずっと私は裏切られていたの?

リシェルの疑問にリンゼは何も答えない。

「どうして何も言ってくれないのですか?

いつもみたいに笑ってくれないのでしょうか?

お願いです。どうか否定して」

すがるように手をばした瞬間。

「睡眠(スリープ)」

父グエンの言葉とともに――リシェルはそのまま意識を失うのだった。

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