無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第1話 召喚師、裏切られる

「あ、れ……」

赫い花びらが宙に散った。

初め、その一瞬だけ、そう思った。

それは、私の顔を含めた上半を濡らし、その生溫さに、新鮮なであることを知る。

私の目の前に展開されていた障壁がパリンと割れた。

ーーあれ。私は、魔から皆を守るために、最前線に立って障壁展開していたんじゃなかったっけ?

私の片腕は、背後からばされた誰かの腕に摑まれていた。

なんとか首を捻って背後を見ると、仲間のはずの勇者ハヤトが、私の肋骨の隙間をそれは巧みにって、私の心の臓があるはずの場所を一突きにしていた。

彼の周りには、かつて仲間だったメンバー二人が薄ら笑いを浮かべて立っている。

「どう、いう、こ……」

それは、最後まで言葉にならずに、私は、カハッと、を迫り上がるを吐き出した。

「俺は勇者だ。勇者のいうことを聞かないなんていらない」

ぐいっと腕を摑んだまま、勢いよくハヤトが剣を抜く。

ーー出抑えるために、抜かないでしかったんだけどな〜。

まあ、そういうわけにもいかないか。

再度の痛みと、傷口がわになって、どんどん失していく。私はそれを防ぐために、こっそり圧迫止をしながら、時が経つのを待つ。

「さ、帰ろうぜ! 新規加者さんが待ってるしよ〜!」

私が防ごうとしていた魔を切り捨ててから、立ち去っていく三人の聲が遠ざかる。

私はチラリと橫目で見ると、彼らの姿はかなり小さくなっていた。

「召、喚(サ……モン)、大聖フェルマー」

私の倒れている頭上に、古の大聖フェルマーが顕現した。

「マスター! なんてことでしょう! パーフェクトヒール!」

の最上級回復魔法で私の傷は癒えていく。

しかし、を流しすぎた。

ーーたとえ私の心臓が一般人とは反対側にあったとしても。

無理だ。

私はそのまま意識を失った。

私、魔族の四天王アスタロトは、木からその一部始終を見ていた。

魔族領に勇者一行がやってきたと聞いたからだ。

そしたら、彼らは仲違いを起こし、メンバーらしきの一人を、卑怯にも背後から剣で突き刺し、そのまま去っていった。

そして、橫たわるまだ若い人間のの元へ駆けていく。

脈に手を添える。

「……いている」

と、すると、失量の多さに気を失っているだけかしら?

「……凄いわ。傷も綺麗に無くなっている。まあ、ここに放っておくわけにもいかないわね」

アスタロトは、しゃがみ込んで彼をいわゆる姫抱きにして抱き上げる。

ーーそれにしても、軽いわね。

まあ、彼なのだが。

それを考慮しても、彼は細かった。

歳のころは十五、六といったところかしら?

「一旦、城へ連れ帰りましょうか」

奇しくも、彼が、いや、彼がかつて在籍していた勇者パーティーが目指していた最終地點に、魔族の手によって、あっさりと連れていかれるのだった。

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