鳥や獣達の避難は終わった。

次は、隕石召喚(メテオ)で、森を破壊する番だ。

「フェルマー、まず、円筒狀にバリアを、そして、隕石を落としたら、上空から異を出さないように、ドーム狀に形を変えていただけますか」

マーリンが、手順の認識合わせのための説明を、フェルマーに対してする。

「ええ、いいわ。それなら、外に被害が出ないわね」

「理障壁(フィジカルバリア)！」

フェルマーが命じると、魔の森全を取り囲むように、円筒狀のの壁ができる。

「じゃあ、行きますよ！　隕石召喚(メテオ)！」

今度は、マーリンが片手を天に掲げる。

すると、その上の上、ずっと上に、きらりと小さなものがった。

それは、ぐんぐんと空から燃えながら下降してきて、まるで火の玉が一つ降ってくるかのようだ。

そして、それは、やがて私達の目の前に到達し、ズ、ズーン！　と音と地響きを立てて、魔の森を焼きながら押しつぶしていく。

いや、焼く、と言うよりは、溶かしつぶす熱量だ。

「フェルマー！」

「わかっているわ！」

すると、すかさずフェルマーが魔力を作して、円筒狀にしていた障壁をドーム狀に変えていき、やがて、すっぽり隕石の落ちた森に蓋をした。

ちなみに、障壁は空気はちゃんと通すから、魔の森は燃えていく……、というか、なんかグツグツと溶巖狀に溶けているんだけれど（汗）

やがてしばらくしてから、そこに、マーリンが大量の雨を降らせる。

結果としてそこは、熱く煮えたぎっていた巖石も冷え、チリも巖もその窪みに流れ込み、大きな湖となったのだっだ。

「ふう、できたわね」

ただ見ていただけの私が、ちゅかれたー、とため息をつく。こてっと、フェルマーの肩に顎を乗せた。

ーーいや、英霊(エインヘリヤル)達に魔力を提供するから、実際に疲れるのよ？

「はい、お疲れ様でした」

魔力で繋がっていて、そのことはわかってくれているのだろうか、フェルマーが、肩越しに手を回してきて、私の頭をでてくれる。

「じゃあ、もう一箇所の難所、飛竜の谷は明日にしましょうか」

今度はカイン兄様が側に來て、労るように私の頭をでてくれた。

そのが気持ちよくて、ついつい、目を瞑ってしまったら……。

「くー、すー」

「おや、寢てしまいましたね」

眠気に吸い込まれそうになる中、どこか遠くで聲が聞こえる。カイン兄様かなあ……。

「じゃあ、今日は帰りましょうか」

「そうしましょう」

そうして、今日の作業は、魔の森の処理だけで終了となったのだった。

次の日の朝。

食卓には、お父様をはじめとして、家族全員が揃っている。

そんな中、朝の支度を終え、朝食を食べていると、なんとなく、飛竜を私達の都合で殺してしまうのって、可そうなんじゃないかと言うことに、気が付いた。

「ねえ、カインにーさま」

一緒に出かける予定のカイン兄様に、私は聲をかけた。

「ん？　どうしたんだい？」

カイン兄様が、食事の手を止めて、私に顔を向ける。

「ひりゅーって、ころさなきゃ、だめ？」

急に持ち上がった私からの疑問に、兄様が首を捻った。

「急にどうしたんだい？」

「ひりゅーって、まぞくは、のりものにしてる、でしょ？　かえない、かしら？」

殺すのではなく、魔族のように従魔化して、戦力にできないかと提案してみたのだ。

ーーだって、殺しちゃうよりは良くない？

「父上、それは、実現すれば、我が軍に飛行兵ができると言うことです！」

騎士団を取りまとめているアベル兄様が、やや興気味に、お父様に進言した。

「ふむ。リリス、優しい気持ちと他領での見聞から、良い案を引き出したな」

お父様は、目を細めて私を褒めてくださる。

なんだか、ストレートに褒められると、なんだか、心がこそばゆい。なんだか嬉しくなっちゃった。

「そうすると、まずは、飛竜の世話をする、テイマーの能力を持った者を募る必要がありますね……」

カイン兄様が、段取りを見直し出す。

結局、今日飛竜を殲滅しにいくという予定は無くなって、アベル兄様が先頭となって、テイムの能力を持つものの雇用に向けてき出すことになったのだった。

私達の國に移住してきて、冒険者でもしようかと思っていたテイマー職の人達は結構いたらしく、それが、一介の冒険者ではなく、國に雇用される給與も安定した分という破格の條件に飛びつくものもいて、人集めは順調に進んだらしい。