《無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第31話 、とんでもない人を喚んでしまう
私が、ぎゅっと陛下に抱きついていると、頭の上から陛下の聲がした。
「気持ちの上で待っていたのもあるんだが、仕事の上でも頼みたいことがあってな」
ーーお仕事?
「なにか、たおしてくればいいでしゅか?」
騒なことを、あえてこてんと首を傾げて聞いてみた。
「違うわ! しかも、わざとあざとい仕草でそういう聞き方をするんじゃない!」
ピシッと、陛下に、制裁のデコピンをくらってしまった。
「いたいじゃ、ないでしゅか!」
弾かれたおでこを両手で覆い隠しながら、ぷうと頬を膨らませて反論する。
「將軍に任命する。魔王軍の兵士達のテコれをしてしい」
ーーあれ、私、。がどうして將軍なんだろう?
おっきな魔族の兵士の人達を、どうやって鍛えるんだっけ?
「わたち、たたかえまちたっけ?」
また、こてん、と首を傾げてみた。
あ、まずい、二度目は悪ふざけすぎたか。
陛下のこめかみに青筋が浮かんでいるわ!
私は、助けを求めるように、陛下のそばを離れて、マーリンの元へいき、抱っこをせがんだ。
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マーリンは、やれやれ、といった顔をしてかがみ込んで、私を抱き上げてくれた。
「おいたが過ぎますよ、マスター」
その言葉に同意するかのように、陛下が頷く。
「リリス。其方はかつての英雄達を喚べるではないか。其方自ではなく、彼らに兵士の訓練を頼むことは可能か?」
私は、抱っこしてくれているマーリンの顔を見る。
意を汲み取ってくれたのか、私の代わりにマーリンが回答を始めた。
「そうですね。剣技に関しては、剣の技に長けた者を喚べば良いでしょう。……ただし」
「ただし?」
マーリンが言い淀んだ、その言葉の語尾に、陛下が意外そうに片眉を上げる。
「人間が得意とする魔法屬と、魔族が得意とする魔法屬はやや異なります」
そこまでいうと、陛下も納得したように頷かれた。
火、水、風、土の四大屬であれば、人間も魔族も適さえあれば行使可能である。だが、、闇、聖、邪となると、得意とする者が異なるのだ。
「……なんとかならんか?」
陛下が、マーリンに尋ねる。
すると、マーリンがし悪戯っぽい印象をける笑みを浮かべた。
「勿論。マスターに不可能などございません。々、マスターにご説明して參りますので、失禮しますね」
マーリンは、一禮すると、私を抱っこしたまま、陛下の執務室を後にした。
パタン、と扉を閉めて、し離れたところまで移して、城の庭のベンチまで移して、私を降ろし、その橫にマーリンが腰を下ろす。
「さてと。適任者はいるんですよね」
くすくすといたずらを思いついた子供のように笑う、マーリン。
「あれ。しょうなの?」
だったら、なんですぐにその場で陛下に教えてあげなかったんだろう?
マーリンの意図が分からずに、私は首を捻る。
「マスター。英霊とは、何も、人間の英雄だけとは限らないのですよ」
ーーん? どういうこと?
よく分からないといった顔を私がしているのを見て取って、マーリンがさらに説明をする。
「マスターは、もともと人間でしたから、英霊と言われると、人の英雄を想像する。ですが、神は平等です。英霊には、偉大な功績を殘した亜人も含まれるのですよ」
あれ? 亜人って、そういえば魔族もだよね?
「まぞくの、えらいひと、いりゅ?」
マーリンはにっこり笑ってコクリと頷いて、私の頭をでる。
そして、マーリンが、その人の名前とどんな方かを私の耳にこっそり教えてくれる。
それを聞いた私は、ニヤリと笑う。
ーーデコピン陛下、見てらっしゃい!
私は立ち上がって片手を掲げる。そして、その名を呼ぶ。
「サモン! 古の大魔王パズス!」
私の手からが溢れ、そのが人の形に集約して、威厳のある魔族が現れた。
彼は、初期の混迷する魔族領を統一して今の王國の形にし、亜人達が安心して暮らせるようにした、偉大なる王なのである。
そして、陛下のお父様なのだ(ここポイント)。
「……ほう。我を英霊と認識し、かつ、私を喚べるほどの魔力を保有するとは、実に面白い人間、いや、魔族化しているのか」
そう言いながら、私を確認した後、私の橫にいる、マーリンに目を止める。
「そうか。我が英霊などと知っているのは、英霊自くらいのものだろう。其方のれ知恵か」
そう言って、パズスは片眉をあげる。
「すみません、パズス殿。マスターの主人である魔王ルシファー殿から、魔族兵の訓練に適切な方を喚べとのご命令でして」
その説明に、パズスは、ふむふむ、と納得したように頷いた。
「まあ、その願いはおいおい葉えるとして。ルシファーと言ったか。……あのヒョロっこい息子だな。まずは奴の力量を確かめたい。奴はどこにいる?」
そうして、私を抱っこしたマーリンが、パズスを執務室に案する。
そして、何食わぬ風を裝って、扉をノックする。
「れ」
いつもの調子で、陛下の聲がする。
ドアを開けて、陛下が手を止めて、こちらを見……。
「……ち、父上。大魔王パズス様!?」
バン、と執務機に両手をついて、立ち上がるルシファー陛下。
「ああ、マスターに招ばれた」
「……マスター……」
しばし、陛下が沈黙する。この狀況を頭の中で整理しているのだろうか。
そして、その沈黙は、私への怒號で破られた。
「リリス! お前の仕業かーー!」
「だって、まじょく、きたえられるひと、いるんでしょ?」
そして私はパズスを見て、ねっ、と笑いかけた。
「そうだ。まあ、其方の願いは兵士の訓練だったか。だがまず、我が後継者たる其方自の力量を確認させてもらう」
「……ひっ」
陛下のから、変な聲がれた。
パズスは大きい。的にも魔力的にも鍛え上げられた、歴戦の王といった様相だ。
それに比べて、ルシファー陛下は、派というよりは頭脳派といった見た目をしている。
「じゃあ、訓練所に行くぞ」
「リ〜リ〜ス〜!」
パズスに首っこ摑まれながら、陛下が連れ去られていく。
「がんばってね〜!」
私とマーリンは、にこやかに彼らを見送るのだった。
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