無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第44話 兄、魔族領に溫泉を作る

まあ、突然のお父様とアスタロトの婚約発表もあって、我が家は大騒ぎだ。

ちなみに、魔王陛下には先に了承を得ていたと言うから、そちらは用意周到だ。仕事のできるアスタロトらしい。

そんな中、私達兄妹三人は、居間で相談をしていた。

二人の結婚祝いの品についてだ。

「アスタロトさんなら、どんな寶飾品でもつけこなせて見せそうだよなあ」

まず、アベル兄様が、オーソドックスな品を挙げる。

「でも、魔族の四天王ですよ? すでにしければ持っていそうですよね……」

その案に、難を示すカイン兄様。

「たちかに、おしゃれだしなあ……」

三人で、うーん、と頭を抱え込んでしまう。

そんな時、私の頭にパッと閃いたものがあった。

「おんしぇん! あっちにも、おんせん、ほしいっていってた!」

私が、パッと顔を上げてそう言うと、カイン兄様が首を捻りつつ私に聞き返す。

「あっちに、って、魔族領にってことかい?」

カイン兄様の問いに、うんうん、と私は首を縦に振る。

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「まあ、あれはかなりの贅沢品だし、一度ると、また……、とは思うよな」

アベル兄様も、同意する。

ここで、不思議に思うかもしれないけれど、アスタロトとお父様は、遠距離結婚という、未だかつてない斬新な結婚をするらしい。

私と同じく、アスタロトも魔族の四天王の位を預かる。そちらの公務もあるし、フォルトナー家の公務にも參加する。

という訳で、自前で持っている飛竜を飛ばして、アスタロトが通い婚をすることになっているのだそうだ。

だから、魔族領にも溫泉があれば、こちらでもあちらでも溫泉をいつでも楽しめる……、と、そういう事になるのだ。

「ふむ。そうすると、二人へ、というよりは、新しい義母上への贈りということで、魔族領のどこかに溫泉を作らせていただくか……」

ふむふむ、とカイン兄様が唸っていると思ったら、その段取りを考えていたらしい。

「リリス。一緒に行って、魔王陛下に、この事のご相談と許可をいただきに行こうか?」

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顔を上げたと思ったら、私にそう提案してきた。

ーー私一人でお願いしに行くよりも、カイン兄様がいた方が説明上手よね。

それに私、噛むしね……。

「うん! いっしょに、おねがいしよう!」

私とカイン兄様は、顔を見合わせて、うん、と仲良く頷く。

決定ね!

そんな中、アベル兄様が一人浮いてしまった。

と言っても、あまりめげる様子もなくて。

「じゃあ、父上の隣の部屋。……亡くなった母上の部屋を、ガラリと模様替えする役を擔當しようかな」

「「……」」

私と、カイン兄様は、一瞬黙ってしまった。

私達三人を産んでくださったお母様が亡くなってから、そのままにしてあった部屋。けれど、正式な夫人として迎えるならば、その部屋をアスタロトの部屋に変えなければならない。

「……しょうだね」

「そうだね。アスタロト様は、母上とは全く違うタイプのだ。思いっきり変えて差し上げるといい」

そうして、兄妹三人で頷きあった。

魔族領の魔王陛下には、カイン兄様の小鳥型の霊さんに飛んでもらって、先に連絡をしてもらった。

そうして、魔王陛下に許可をいただいた日、私とカイン兄様は、ニーズヘッグに乗って、魔族領へ飛んだ。

そして、いつものように魔王城の屋上に著地する。カイン兄様が私を抱いて、小さくなったニーズヘッグは案役の侍さんが抱っこして、客間に案してくれた。

「この度は、我が國に、四天王でもあらせられるアスタロト様を、父の王妃にいただけるとのこと、ありがとうございます」

まず、カイン兄様が、アスタロトをうちにお嫁にいただく事についてのお禮を述べた。

すると、陛下が、意外にも微妙な顔をしながら、口を開く。

「……いや、禮を言うのはむしろこちらかもしれん。アスタロトは仕事一筋というか、男に関してはめっきり興味なしでな。私としても、々驚いているところだ」

そんなこと言われちゃうと、うちのお父様ってもう四十歳前後のいい歳をしているから、どこが良かったんだろう? と首を捻ってしまう。

同じことを思ったのか、カイン兄様がそれを口にした。

「うちの父は既に四十歳になろうかという歳。見目麗しいアスタロト様が、父のどこがいいと思ったのかが、不思議です……」

それを言うと、陛下は、それには自然に笑って答えた。

「魔族は長く生きるのでな。人間に惚れるのであれば、見た目の若さだけでは足りないのだよ。経験やそれまでの生き方、そう言うところが優れている者と寄り添いたくなるものだ。それと、いざ伴を魔族化したくなれば、見た目の年齢は調整できるのでな」

そういえば、私が間違って化されてしまった時に、孔雀は「若くするのが常」と言っていたわね。

「ああそうだ。其方達が作りたいと伝えてきた、『溫泉』というものは、ある程度分のあるものには共同で使えるようにしたいのだが、構わないだろうか?」

その言葉に私達兄妹は顔を見合わせる。

「多分、アスタロト様も獨り占めなさろうとは、されないと思います。あれは、人と共に語らいながらるのが良いものですから」

そう、カイン兄様が伝えると、陛下も溫泉に興味があったのか、嬉しそうな顔をしていた。

ドワーフを中心とした技師達も呼んで、的な設計の話をする。

當然、男湯と、湯の二つを作る。

城の屋には、大きな浴槽を設ける程の場所はないとのことで、新たに渡り廊下を経て別館的な溫泉のための建を一棟建ててしまおうということになった。

必要な大きさや、設計は、以前うちの城で作った時のものがあるので、魔族領の技師さんには、それを見て、先に、建作りに著手してもらう。

そうしている間に、霊さんの力で、魔族領で溫泉が湧く場所を探そうと言う事になった。

できれば、結婚式までには完させたいので、技師さん達からすると、なかなかの大急ぎの仕事である。

でも、お父様とアスタロトの結婚が、さらに二國間の融和を進めるだろう、と言って、喜んで引きけてくれた。

そうして、工事も始まり、私達はニーズヘッグに乗って、源泉探しに出かける事になった。

「召喚(サモン)ウンディーネ」

ニーズヘッグの上で、カイン兄様が命じると、一人の水のドレスを纏ったが現れる。

「マスター。ご用向きをお聞かせください」

今日呼ばれた子は禮儀正しい子のようで、恭しくお辭儀をした。

「この魔族領の中で、溫泉の源泉を探したいんだ。探ってくれるかな」

首を傾けながら、霊のの子に優しくお願いするカイン兄様。

「竜よ。し、進むのを止めてくださいませんか?」

ウンディーネが、ニーズヘッグにお願いをする。

いていると、探しにくいのかしらね?

「うん、わかったよ」

そう言うと、ニーズヘッグは、羽ばたきで高度は維持しながらも、進行するのを止めた。

ウンディーネが、目を閉じて、自らのを軸にしながら回転する。

そうして、しばらくじっと待っていると、ウンディーネが目を開け、一點を指さした。

魔王城のし奧の、山間部、その麓だった。

カイン兄様が、ニーズヘッグに指示して、その場所まで飛んでもらう。

「ここかぁ」

「はい」

「じゃあ、召喚(サモン)ノーム」

ウンディーネが答えると、カイン兄様が頷いて、今度はノームを複數人呼んだ。

「マスター。お呼びで?」

ドワーフを黃くして、三角帽子を被せたような、土の霊、ノーム達がお辭儀をする。

「ここにね、溫泉の源泉があるらしいんだ。君達に、それを掘削してしいんだよ」

そう言って、カイン兄様が足元を指さして見せる。

「なるほどなるほど。では、まず、湯を貯める池と、浴場が完するまでの間、川に流し捨てる道が必要ですな。皆様は、高臺に移してお待ちください」

そう言うと、ノームが、「掘削!」とんで、魔法で地中を掘り進めていく。

その橫で、別のノームが、「掘削!」と命じると、土がお椀狀に凹んだ。余った土は、掘った池の周りに盛られていた。その後も、近場の川まで、余った湯を流す道を作っている。

ーーいつ見ても、カイン兄様の霊達って凄い。

やがて、地中へと掘り進んでいたノームが、「よっし!」とぶ。

その聲のし後に、ドバッと熱湯が吹き出してきた。

これで、溫泉のお湯は確保出來た!

あとは、魔族領の技師さんが、城への引き込み路を作ったりして、浴場へお湯を引き込んで。

そうして、なんだかんだと日數をかけつつも、黒大理石作りの贅沢な溫泉浴場が、魔族領にも完したのだった。

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