無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第47話 、叱られた結果、逆襲を誓う

ここは魔王陛下の執務室である。

私は、フェルマーに抱っこしてもらいながら、陛下の機の前に立たされていた(正確にはフェルマーが)。

なぜか、部下達の軍事訓練終了後に呼ばれたのだ。

「リリス。なぜ呼ばれたかわかるか」

低い聲で陛下が私に問う。

うん、思い當たることはないわね。

だって、今日も立派に將軍として部下の訓練を見守ってきたんだから!

それなのになぜ、陛下は眉間に青筋立てているんだろう?

「わかりまちぇん」

私は、こてっと首を傾げる。

「……お前は、部下に地獄のような訓練をさせながら、自分は観覧席で優雅に菓子を食っていたのか」

うーん、執務機の上に拳を作って置かれている陛下の手が、プルプルと震えている。

あ、まずい。

これ、『激オコ』だわ!!

「……えっと、はい」

こくんと頷いて、正直に答えてみた。

「……フェルマー殿。もうしリリスを甘やかすのは程々にしてはいただけないか」

私に対して、「あーん」なんてやっていたフェルマーも、思い當たるところがあったらしく、まずっ! と言った顔をする。

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二人で顔を見合わせて、肩をすくめ、小さく舌を出して「てへっ」って顔をした。

ーーしたら、陛下にばれた。

「てへっ、ではない! 『自分達には苦行を強いておきながら、ご自はおやつを食べている』と、騎士達から泣き言がって來たんだ!」

陛下は、握っていた拳で、機をダン! と叩く。

ちょっと、事態を甘くみていた私達二人は、陛下の剣幕にビクッとしてしまう。

でもなあ。私がおやつを食べていたからって泣き言?

それは、ちょっとよわよわすぎないかしら?

そう思って、つい、首を捻ったのを、陛下に見つかったらしい。

「……これは、をもってしないとわからないようだな。……お仕置きだ」

そうして、私は訓練場の真ん中に立たされている。

私に向かい合うように、騎士団長が一人立っていた。

「英霊(エインヘリヤル)の助力は止!」

観覧席には、あの時の私のように椅子に腰掛け、テーブルには紅茶と茶菓子を置いた陛下がいて、そう厳命した。

陛下の橫で、訓練の時にいたパズス、アーサー、フェルマーが、心配そうに私を見下ろしている。

「マスター……」

そう、フェルマーのくのが見える。

観覧フロアには、多くの部下達も、「さすがにリリス様お一人では……」と心配の聲が上がる。

いや本當に、この條件下で私は騎士団長相手に何をせよというのだろうか。

「日の聖杖」

なんの役に立つのかわからないが、ひとまず、私の中では唯一の武(?)を呼ぶ。

すると、手の中に聖杖が現れ、私はそれをぎゅっと握りしめる。

「ベリアル。わかっているな。……これはお仕置きだ」

ベリアルというのは、騎士団長の名前だ。彼が、陛下に言われて、ごくりと唾を飲み込みつつも頷く。

「始め!」

陛下が大きな聲で開始を指示する。

私は、えいやっと杖で騎士団長を叩く。

ただ、鎧を叩く、コツン、という音がした。

ーーなんの効果もないようだ。

そして、私はというと。

「陛下のご命令なので! 申し訳ありません!」

その一言ともに、ビシッと強くデコピンされた。

「いったあい!」

デコピンの勢いで、私はぺしょっと地面に餅をつく。そして、おでこの痛みで涙目になる。

そんな私を見下ろしながら、陛下が私に聲をかけた。

「おい、リリス」

何よ! と思いながらも、陛下のいる方を見上げると、なんともわざとらしく大きく口を開けて、「あーん」とチョコレートを食べるではないか!

陛下はチョコレートを咀嚼し終わると、口を開く。

「リリス。これで、部下達の気持ちがわかったか。訓練時は、部下の心に寄り添った練習容と、己の行為に配慮することだ」

そう言うと、陛下は観覧席から立ち上がって、練習場を後にされた。

騎士団長も私に一禮して、その場を立ち去る。

観覧していた部下達も、散り散りに立ち去っていく。

そうして、地べたに座ったままの私と、パズス、アーサー、フェルマーが練習場に取り殘された。

「「「マスター!」」」

三人が高い位置にある観覧フロアから飛び降りて、私の元にやって來る。

「おかわいそうに。ヒール」

まずは、フェルマーがおでこの痛みを取ってくれる。

「まあでも、不満が上がるにあたって、マスターのお菓子以外にも、彼らには訓練容が厳しすぎるとか、不満があったのかもしれません」

アーサーが、気遣うように、我々の訓練方法にも落ち度があったと言ってくれる。

「まあ、厳しいのはわかるが……。私の領土統合時代に比べたら、魔王軍も気合が抜けたものだな」

パズスが、嘆かわしいと溜息をつく。

「まあ、しょうね。いましゅぐに、せんそうをひかえているわけでもない、でしゅし」

私はパズスに同意する。命がけで戦っていた辺境伯領では、おんなじ訓練をしたのだもの。

だが、今すぐ命がけで戦う必要のない平和な時代では、そんな訓練は不要と言うことだろう。

「まあ、いいでしゅ」

私は、手を差し出してくれたフェルマーに立ち上がらせてもらって、私は、土のついたスカートを叩く。

「でも、へーかには、めにもの、みせてやりましゅ」

私は、きっ、と陛下の執務室のある方向を睨むのだった。

何をしでかすか、予想しててくださいw

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