《無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第53話 、再戦を挑む
ふふ。魔導兵は完した……(けれた)。
そうしたら、やることは一つ!
ーー打倒魔王!
(部下であることをすでに失念している)
「マーリン、だっこ!」
はいはい、と言うように、私を抱き上げ、片腕で抱く。
そして、一度私の部屋を経由して、あるものを取ってから、陛下の執務室を訪れた。
コンコン。
マーリンにドアをノックしてもらう。
「リリスでしゅ」
そう言って、名を名乗る。
すると、室から「れ」と陛下の聲がしたので、マーリンがドアを開けて室する。
そして、そのまま執務機で書類決裁をしている陛下の前に立った。
「ん……。何のようだ?」
陛下は書類を捌くのに忙しいらしく、顔すら上げない。
「さいしぇんを、きぼうしましゅ」
再戦を希する、と、そう告げて、私は部屋から持ってきた手袋を投げつけた。
手袋を投げつけると言うのは、人間の貴族の間では、決闘を申し込むという意味を持つ。
陛下はそれを手に取って、意味がわからないのか、手袋を眺めている。
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「しょれは、けっとうのもうしこみ。しょれをひろったということは、うけるという、いみになるのれしゅ!」
私はビシッと陛下を指さした。
「……ほう」
陛下が片眉を上げて、ニヤリと笑う。
「まだそんなにデコピンをされたいのか。そうかそうか」
さらに鼻先で笑ってまでいる。
「……しょの、はな、あかしてやりましゅ! けっとう、れしゅ!」
私は、その陛下の態度に怒りを覚えて、陛下を再び指さした。
そして、再び練習場に立つ。今度の相手は騎士団長ではなく、魔王陛下である。
「前回同様、ルールは同じ。英霊(エインヘリヤル)に頼るのはなしだ」
そう言って、観覧席にいるマーリン、フェルマー、パズスを見上げる陛下。
そして、騎士や魔導師に加えて、今回は、魔導研究所の皆も、その結果を見守りに來てくれていた。
「……わかってまちゅ。わたちの、まりょくで、まおうを、たおしゅ!」
ビシッ! と私が陛下を指さす。
このセリフが許されるのか微妙なところだが、互いの合意の上の決闘という名目もあるので、咎め立てする者はいない。
魔王四天王のアスタロト、ベルゼブブ、アドラメレクも、見守っている中。
アドラメレクの聲で、決闘を開始する旨が告げられた。
「これから、魔王陛下と四天王にて將軍リリスの決闘を開始する。両者、用意!」
彼の言葉に、互いの表が真剣なものに変わる。
「開始!」
「サモン、うさぎたん!」
私は両手をばんざいして、私の新しい眷屬を呼ぶ。
その言葉に応じるように、どこからともなく、らしい小さな赤い目のついた、白いうさぎのぬいぐるみが、私を取り囲んで七浮遊する。
「は? ぬいぐるみ? ……なんだ、それは」
呆然として私のその姿を、目を見開いて凝視する陛下。
陛下も、本來なら魔法を撃とうと思ったのだろう。利き手が私に向かって差し出されているが、そこから魔法が発出される様子はない。
「やっちゃえ、うさぎたん!」
すると、うさぎさん達の手が、一斉に陛下に向く。
「……いや、何かが絶対におかしい! 闇の壁(ダークウォール)!」
陛下が、ひとまずなのだろう、自分の前に闇魔法での壁を作った。私の行の予測がつかないから、まずは防しながら様子見、それは、戦略としては良いだろう。
だが。
「いけー! うさぎたん!」
うさぎ達の赤い目がり、その二本の手から、一個ずつ魔法が放出される。
蒼炎(ファイヤーボール)、氷の楔(アイズエッジ)、石の楔(ロックエッジ)、風の刃(ウインドカッター)、闇の弾(ダークボール)、太線(サンレイ)、聖なる(ホーリーレイ)を二個ずつだ。
「なぁ……ッ!」
陛下の目が驚愕に見開かれる。
うさぎ達の放った魔法は、初級魔法。けれど、その魔力のもとになっているのは私の魔力。だから、陛下の闇の壁を容易く破壊し、そのままの勢いで一斉に陛下自に襲いかかった。
「うわあああああああ!」
そのまま陛下はうさぎ達の魔法をそのにけて、地に倒れ込んだ。
「勝者リリス! そこまで!」
アドラメレクが決すると、會場の一部だけがわいている。そう、魔導研究所のメンバー達だ。
「やったー! まおう、たおちたー!」
私も笑顔でいっぱい手伝ってくれた魔導研究所の人達に向けて、勝利に片腕を掲げる。
「だ、大丈夫ですか?」
そこに、陛下の容が心配で、フェルマーが浮遊して降りてきた。
陛下はピクピクしている。あちこち焦げているし、お腹にが空いているし、なんか痛そうだけれど。生きているみたい。
「ねえ、へーか」
私が地に倒れている陛下を上から見下ろす。
「……何だ」
陛下がギロリと私を睨め付ける。
「まおうは、にだんへんげとか、だいさんけいたい、とか、ないんでしゅか?」
いやほら、魔王っていうと、倒して「やったー!」って喜んでいると第二形態とか第三形態だ、ふはははー! ってなるから、用心しなさいって言われない?
「……俺を何だと思って、いる、……普通の魔族、だ……ツッ!」
流石にを貫かれるような痛みに我慢も限界のようで、陛下が顔を大きく顰める。
「パーフェクトヒール!」
流石に長引かせるのは良くないと判斷したのか、フェルマーが最上級の回復魔法で陛下を癒した。
【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
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