無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第54話 、下剋上する?

「……倒してしまいましたね……」

アドラメレクが微妙に困ったような顔をしている。

私は首を捻る。何困ってるのかしら?

「なんで、くじゃく、へんなかお?」

くいくいとマントの端を摘んで引っ張ってみた。

すると、アドラメレクは、渋顔で私を見やると、ため息をついた。

「……あなたが、陛下を倒してしまったからでしょう。どうするんです。下剋上して魔王宣言するおつもりですか?」

そしてまた、目元を覆い隠して、盛大にはあ〜っとため息を吐いた。

は? 私が魔王に?

あの書類仕事を私が?

「あははは。ありえましぇん。しょるいは、へーかのおしごとぉー」

私は、あっけらかんと笑って、ナイナイ、と手を橫に振る。

すると、回復したばかりの陛下の眉間に深い皺が寄り、アドラメレクは表が緩やかになり、今度は安堵のため息をつく。

「……リリスに書類仕事を依頼するなんて……。紙飛行機にされるくらいしか予想できない」

そう言って安堵で笑顔になるアドラメレク。

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流石に私でも、大事な書類を紙飛行機にはしないと思うけれど……。

まあ、約束も出來なさそうな気がしたから、放っておいた。

そして、陛下はというと。

「……リリス。お前も書類仕事を手伝ったらどうだ?」

ん? と片眉を上げて睨みつけてくる。

フェルマーのパーフェクトヒールは偉大だ。陛下のお腹のは綺麗に塞がって、ローブにが空いているだけになっている。

お腹丸見えで結構けないですよ、陛下。

「いやでしゅ。つまらないでしゅ!」

「いや、譲位しろと言われないのはありがたいが、その言い方はどうかと思うんだがな……」

陛下も盛大にため息をついた。

そんな対戦後の雑談をしていると、観覧者の中から、パズスが浮遊して降りて來る。

「ルシファー!」

彼の顔は赤く、聲は怒鳴り聲。どう見ても怒っている。

「魔王たるもの、第二形態、第三形態ぐらいの予備がないだと!? そんなたらくでどうするんだ!」

ーーはい?

私は確かに、そのセリフを言った。

だって、ノートンに過去の勇者達の書き殘したものがあって、魔王とは、倒したと思っても第二形態、第三形態を取ったり、真のボス(今考えると誰だろう……)が出てきたりするから、油斷するな、ということが書かれていたのだ。

だけど、どう見ても、なんていうか、國の創立者の長男、二世魔王の陛下には、本人が申告するとおりそんな能力はなさそうである。

しかも、創立者たる王って建國のために武力も用いるイメージがあるけれど、二世のお仕事って、平和の礎を築くことだったりする。

それを考えると、いつも、臣民のために一生懸命に書類仕事に邁進している陛下は、立派なのではないかと思うのだ。

そんな陛下は、今、パズスに首っこ引っ摑まれて、「特訓だー!」とか言われている。

ま、まあ、特訓と言うことは、パズスにはその能力があるのだろう。

ーーうーん。

「パズス。だいにけいたい、って、どうやったら、できりゅの?」

陛下を連れて行こうとするパズスのマントを引っ張って、私は尋ねた。

パズスが、陛下を引き連れて行く足を止めて、私を見下ろす。

そして一言。

「……気合とだ!」

パズスが言い切った!

「「はああああ!?」」

私と陛下の聲が重なって唱和した。

ええー。まあ確かにパズスの子(?)の陛下なら、出來るようになる因子とか引き継いでそうだし、可能は高そうだけれど……。

「ち、父上、気合とでは私は変形のまでは會得出來そうにないのですが……」

陛下も引き気味だ。

うーん、何かいい案ないかしら。

うーん。

うーん。

ーーあ。あるじゃない。

私自が、魔導兵を使って、私だけでは何も出來なかったのに、出來るようになったわ!

「ねえ、パズス!」

くいくい、と再び彼のマントを引っ張る。

「まどーけんきゅーじょで、だいにけいたいの、かわり、ちゅくらせる!」

そう。私の時のように、魔導研究所で、魔導武裝を作ればいいじゃない!

「だが、気合とも……」

パズスが、まだ拘って、ゴニョゴニョと言う。

「まどーけんきゅうじょも、よさんを、さいてりゅわ!」

そうよ。お金をかけているのに、努力とみたいなこと言って、有能な研究所を使わないなんてもったいないじゃない!

「みんな!」

私は、研究員達が集まっている場所を見上げる。

「へーかに、まどーぶそう、できるように、かいはちゅ、しなしゃい!」

ビシッと研究員達に向けて指をさして、指示をする。

だって、私は將軍。魔導研究所は私の配下よ!

「……おお……!」

所長のベリトを筆頭に、研究員達が騒ぎ出す。

「未だかつて、將軍閣下自らの任務をいただいたことがあったか!?」

「これは、リリス將軍の魔導兵を作した、その出來をお認めいただけたと言うことだよな!」

「魔王陛下の最終武裝兵の作指示! なんてロマンのあるものを作らせてくださるのか!!」

なんか凄い。

魔道オタク達の熱意に火をつけてしまったらしい。

「ということで、へーかは、かいほうしてね」

ーー書類仕事してもらわないと困るから。

「……マスター。わかりましたよ。愚息のために、英斷をありがとうございます」

パズスが、諦めたようで、陛下を解放する。

「……ぐそく、じゃないわ。りっぱな、みんなの、おうさまよ」

私が答えると、パズスと陛下は一瞬ぽかんとした顔をして、ふわりとらかな笑顔を浮かべた。

こうして無事に陛下は父親の特訓から解放されて、日常に戻ったのだった。

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