僕は、ノートン王國の新たな王、エドワード・フォン・ノートン。十二歳。いわゆる後見者に好きにされるお飾りの傀儡王だ。

母は、元高級娼婦上がりの寵姫だった、父は、前王……だとまだマシだね。

後見人は、母を父に獻上した公爵だ。

ノートン王國は、父である前王や樞機卿の汚れた統治に、臣民からの信頼を失っていたところへ、フォルトナー辺境伯の獨立をけて、領土の多くを失った。

そんなある日、この大陸を大きな地震が襲った。震源は恐らくフォルトナー王國のある辺りだったらしい。

僕が、父の安否が気になって、側近に父の所在を尋ねたら、地下にいると言う。

父を連れ出そうと、その側近と共に僕は地下を探し回り、その部屋に駆けつけた時、その部屋の床はの海だった。

そこはされたの間。

その床には、様々な魔法陣が彫られている。

勇者召喚用を代表として、僕にはわからない様々な呪用の魔法陣が描かれているのだが……。

その中の一つの上で、塗れの父と、樞機卿を発見した。

本來石造りの床の上に彫られた魔法陣は、白で描かれていたはずだが、彼らのでその魔法陣は禍々しい程に真っ赤だった。

「……父上」

「……陛下……」

地震が収まってから、側近に指示をして人を呼び集めさせて、二人のを回収した。

葬儀の後、母は笑っていた。喜んでいたのだ。

やっと息子の僕を王に出來ると。

男にを売らずとも、息子を傀儡にして、好きにできると。

僕には、姉がいる。

いわゆる異母姉だ。名前をフェリシアという。

亡くなった前王妃殿下の一人娘で十八歳。母譲りのそのしさから『妖姫』と稱されていたくらいだ。

淡い波打つ金の髪、優しげな菫の瞳。薄幸さをじさせる儚げな笑み。

結婚の申し込みは多々あったものの、母が邪魔して、良い縁談は全て無かったことにされてしまった。

「ああ、その忌々しい娘は、どこか都合のいい家にでも下賜してしまいましょう！」

父の死をけて早々、母は言い放った。

僕は、姉が好きだった。勿論、じゃない。

僕の母のせいで幸薄い彼を、僕がどうにか守りたいと、幸せにしてあげたいと願っていた。

多分、姉さんの母上、王妃殿下は、母関係で亡くなった気がするから。

それでも、彼は、僕には優しかったから。

「……姉さん」

僕は、母に隠れて、彼の手を握った。

「……姉さんを、不幸にはさせないから。僕を、信じて」

「ありがとう。……でも、無理はしないで」

姉さんは、僕の両頬をそっと包み込むと、僕のおでこにキスをした。

母と、その後見者である公爵は、僕を傀儡として育てるため、必要な帝王學など必要な學びを與えようとはしなかった。

けれど、僕は天からスキルを與えられていた。

それは、『賢王』。

『自ら學び、そして導く者』。

それが、あの娼婦から産まれたのかと思うと笑ってしまう。しかも、父の種かも怪しいのに、だ。

ああ、話が逸れた。

だから、僕は、そのうち、僕を取り囲む環境がおかしいことに気がつけた。

昔の賢者や勇者達といった、本の読み聞かせを、姉さんがしてくれたおかげもあると思う。

だから、宰相に乞い願い、學びたいと訴えた。

彼はその願いを聞きれてくれて、隠れて教師をあてがってくれたり、自ら國の統治というものを教えてくれた。

まあ、彼も國を見限ってフォルトナーに行ってしまったのだが。

さて。

今僕は、僕の部屋で、ナイフを手に持って、部屋を出ようとしている。

僕は、母を殺し、後見と言ってやりたい放題の公爵を殺そうとしている。

ああ、後は、まだ教會で狂気じみたことを言っている法皇も排除しないと。

それから、の粛清を粛々と行い、法律をあるべき姿に正し、臣民のために住みやすい國にする。

その前に姉さんを良いところにお嫁に出してあげないと。

僕のは殘したくないな。

だから、姉さんの嫁ぎ先は重要だ。僕が基礎を固めた國の玉座は、姉さんの子に座ってもらわなければならないのだから。

そう考えて、部屋を出ようとドアノブに手をかけた時。

ドタッ！

と、僕しかいない部屋で大きな音がした。

振り返ると、部屋に何故か黒い裂け目が出來ていて、そこから落ちたと思われる異形のがいた。

「いったぁーい！」

姉さんと同じくらいの年頃に見えるそのは、背中にコウモリの羽を持ち、頭には二本の黒いツノが生えている。

にこりと桜のを笑みの形に変えて、僕に近づいてくる。

姉と同じ菫の瞳が僕を捉える。

「あれ。素敵な瞳。絶に暗く沈んで、それでも足掻こうとする。澱んだ底に、強い信念を持つ瞳。一目惚れしちゃったかも！」

彼は、僕を稱してそう言った。

「……誰だ」

「人に名を尋ねるなら、先に自分が名乗なさぁい」

そう言って、鼻を指先で摘まれた。

そんな扱いはされたことがないので、驚きで僕はドギマギしてしまう。

僕の鼻を摘む指は、手で払い除けた。

「もー。暴力はんたーい」

「……ったく。僕は、この國の王、エドワード・フォン・ノートン。……今から母親を殺しに行こうとしている」

どこからどう見ても彼は異形。そして、多分、良くない存在。

だが、それと裏腹にらしい容姿と、々気が抜ける態度に、僕は思わず気を許して、目的を吐してしまう。

「ふぅん……。私はねえ。悪魔。『』の悪魔、セーレっていうの。ねえ、出かける前に、し、私とお話、しなぁい？」

うふふ、と自らのに人差し指を添える彼は、らしかった。

しばし、ノートンのお話が続きます。

おねショタが書きたくなっただけだろうって？

あ、バレました(ノ≧ڡ≦)☆