《無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第58話 年王と、毒
セーレの説明によると、姉さんの摂取してしまった毒は、ある植のに含まれるもので、量を常用した場合には、最終的に不妊質になるもの。大量に、もしくは濃度が高いものを飲めば命を落とすものなのだそうだ。
「契約は立したわ。……じゃあ、まずはお姉さんを解毒しましょうね」
そう言って、セーレが立ち上がって、ベッドに眠る姉さんの傍に立つ。そして、片手を姉さんの胃の腑の辺りに添えた。
「解毒(アンチドーテ)」
すると、姉さんののあちこちから紫の靄が立ち上がってくる。そしてそれらはセーレの手のひらの中に集まり、禍々しく毒々しい濃い紫のとなった。
姉さんは、青白かった顔も回復して、本來の淡い薔薇のような頬を取り戻している。
僕が姉さんの顔を見て安心していると、急に聲をかけられた。
「ねえ、綺麗な空き瓶なぁい?」
セーレに尋ねられて、僕は姉さんの部屋を見回す。
すると、未使用の裝飾の凝った飾り瓶があったので、それを渡す。
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多分、部屋に飾ってあったということは、姉さんのお気にりだったのだろうけれど、今は急を要するから仕方がない。
空いた手でセーレは僕から空き瓶をけ取り、片手で用に蓋を開ける。
すると、水球狀になっていた、姉さんから取り出した毒が、するりと空き瓶の中にっていく。そして、セーレがパチンと蓋をした。
「……増えよ(インクリーズ)、濃くなれ(インダーク)」
セーレが何ごとか唱えながら、蓋をした瓶の底を振って、中の毒をくるくると回していくと、中のの量が増え、もさらに濃くなった。
「出來たよ、エド♡」
ちゅっとほっぺたにキスをされる。
そして、呼び方がいきなり稱に変わっていた。
「えっと、何が……」
突然のキスに僕はドギマギと揺し、キスされた頬を手で押さえながら、セーレに尋ねる。
すると、さっきのらしい顔から豹変して、ニヤリと悪魔らしい暗い笑みを浮かべる。
「……これで、君のお姉さんを傷つけた人達に使ったらどうなると思う? ……うふふ」
僕は暫し考える。
姉さんと同じ毒。それよりも濃いものを多量に持っている……。
「……誤って飲んだと偽裝できる。そして、同じ毒でより濃く多量に持っていれば、元々彼らのもので、姉さんに飲ませたのも彼らであると言うことが出來る」
僕のその答えに、セーレの笑顔がニンマリと明るいものに変わる。
「エド。やっぱり私が見込んだだけはあるわ!」
そう言って、ぎゅっと僕を抱きしめる。
ーーえっと、その大きなの弾力が僕を押してくるんだけれど……。
それと、そんな危険な毒を手に持った狀態で、いきなりのハグは危ないと思う。
僕は、冷靜にそっちのことを考えることによって、セーレのらかさから思考を逸らした。
しばらく抱きしめて、満足したのか、セーレが僕を解放する。
「じゃあ、行ってくるね。……ちょっといい子にして、待っていて。ああ、そうね。後で証言者に出來るような人を部屋にもう一人呼んでおくといいわ」
そう言うと、セーレは例の瓶を持って霞のように消えてしまった。
僕は、一度部屋から出て、廊下を見回っていた警備兵を呼び止めた。
「陛下! 何か、用でしょうか」
「うん、フェリシア姉さんの侍のミレニアを呼んできてくれないかな」
「はっ! 承知しました!」
警備兵は、侍の控室の方へ歩いて行った。しばらくしたら、ミレニアも來ることだろう。
僕は、姉さんの枕元に戻って、彼を見守りながら待つことにした。
しばらく待つと、部屋の扉がノックされた。
「ミレニアです。お呼びと伺い、參りました」
「うん、ってくれ」
すると、ミレニアが部屋にって來た。
「その、姫様がお倒れになられたと……。すみません、私がお世話しようとしたのですが、王太后様のご命令で、離れろと言われてしまって……」
ミレニアは、すでに涙ぐんでいたらしい。話の合間に、しゃくり上げる聲が混ざる。
「大丈夫。こっちに來てごらん。姉さんはもう落ち著いているよ」
「えっ!」
驚きながらも、ミレニアがパッと喜を浮かべる。
僕はなるべく優しい笑顔を作って、ミレニアの方に振り向く。そして、彼に手招きをした。
「……姫様……!」
侍としてはマナー違反かもしれない。けれど、よほど早く姉さんの容を確認したかったのか、小走りに僕の隣にやって來た。
そして、姉さんの顔を見るなり、また嬉しそうな顔をする。
「元のお綺麗で健康なに戻られて……!」
この娘は、姉さんの母の娘で、まるで姉妹のように育ったから、それこそ、主人と言えどもが助かったように嬉しいのだろう。
そんなミレニアを呼んだのは安心させるためだけじゃない。頼みたいことがあったのだ。
「ミレニア。まだここだけの話だ。……に頼む」
「はっはい!」
すると、ミレニアは、居住まいを正して、僕の方へを向ける。
「……僕は、姉さんに他の國の者と婚姻を結んでもらうつもりだ。殘念だけれど、今の國の狀態では、他國の方が姉さんの安全度も高い」
「……そう、ですね……」
ミレニアが、僕と姉さんの立たされている立場を汲んで、靜かに答える。
「……その時には、君に、姉さんと一緒に國外に出てしい。僕は、姉さんが一番信頼できる使用人は、姉妹同然に育った君だけだと思ってる」
「……勿ないお言葉です。ぜひ、お供して、行き先でもご不便のないように盡くしましょう」
「……ありがとう」
姉さんには済まないけれど、眠っている間に話を進めさせてもらおう。
ーーもう、相手國は決めているのだから。
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