無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第64話 両國、対面する

立ち話もなんだということで、フォルトナー王に、ソファ席へ移ることを提案されて、皆がそちらへ移した。

僕と姉さんが隣り合って座り、その向かいに、フォルトナー王と王妃、そしてアベル王子が座る。

サイドにある一人用のソファに、リリス姫とカイン王子、そして宰相が座る。

僕が連れてきたノートンの兵二人には、部屋の隅に待機させている。

「今回の縁談の件だがね、いただいた姿絵にアベルが一目惚れをしてしまったようでしてな。カインでも良いというお話でしたが、進めるのであれば、アベルとの婚姻を前提に考えていただけたらと思っております」

口火を切ったのは、フォルトナー王。

「ちっ、父上っ!」

そして、名指しされて『一目惚れ』をばらされたアベル王太子が真っ赤になっている。

當然、僕の橫にいる姉さんも、恥じらっているのか、頬を赤らめて下を向いてしまった。

「……その場合、姉は王妃として迎えれていただけるのでしょうか。我々の間には、ごく最近諍いがあったばかり。ノートンのを、貴國の後継にれたくないと思われていても、當然ですが……」

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僕は、最大の懸念、姉さんの扱いについて尋ねる。

これだけは譲れないのだ。姉さんを日になどさせたくはない。

「ノートンは、近年こそ政治が腐敗していたが、元は、人間の國の統一を果たした建國王のを継ぐ由緒ある筋。そして、フェリシア王の母君のご実家の侯爵家も、その建國王の統治の一翼を擔った古く尊い家柄。『』と言う意味では、気になどしておりません」

フォルトナー王がそう言うと、僕と姉さんが、揃ってほうっと安堵の吐息をついて、で下ろす。

「では……」

僕は、姉さんの置かれる分が知りたい。その思いで、を乗り出す。

「それは……、アベル。お前が姫に願い出ることではないのかな? お前の妻を迎えるのだからね」

フォルトナー王がそう言って、アベル王子に行を促そうとする。

ーーちょっと待て。ノートンは、この地に多大な迷をかけた可能があるはずだ。

黙っていればいいのだろうか。黙っていれば、この場は良い方向に収まるかもしれない。

けれど、のちの禍になったら?

「ちょっと待ってください! 我々には、先に謝罪せねばならないことがあります!」

僕は、そうぶと、必死に一瞬で荒くなった呼吸と悸を抑える。

姉さんは、どうしたのかわからないようで、心配そうに僕の背をでてくれる。

「……し、休まれるといい。それから、お話を聞きましょう」

僕の必死の表を見てとったのか、フォルトナー王の和だった表が、厳しい施政者としての顔に変わる。

「この大陸を大地震が襲った日に、この地で封印されていた悪魔が復活したと、アベル王子とリリス姫にお聞きしました。……それは、ノートンが、ガイアス教に関連があるかもしれないのです」

僕はを引き結び、疑の告白をすることを決意し、そして、口を開いた。

「……私は見ました……。あの日、地下の祈りの間の怪しげな魔法陣の上で、ガイアス教の樞機卿が自決しており、父はを刃で突かれて絶命していました。……封印の解放に二人が、関わっているかもしれないのです!」

悪魔の解放など、邪法中の邪法だろう。父のしでかしたかもしれない罪が、自らのもののように思えて、が震えた。

すると、フォルトナーの一家は、皆で顔を見合わせた。その表に、なぜか驚きはなかった。

「……驚かれ、ないのですか……」

僕の目が、自然と大きく見開かれるのをじる。

「薄々ですが、教會の関與を疑っておりましたから……。ただ、貴公の告白を聞いたとしても、我々が袂を分った前王と樞機卿のした愚行。あなたの罪ではない。あなた方のお人柄と、ご苦労された日々のことは、宰相から聞いておりますよ」

フォルトナー王の聲は優しい。

そして、むしろ僕達のことを慮る言葉に、僕は目に浮かんだ涙を隠すように、謝の念と共に頭を下げた。

「では、姉は……」

僕はこっそり、服の袖で潤んだ目元を拭ってから顔を上げる。

フォルトナー王も、他の皆も僕達兄弟に微笑んでくださっていた。

「いやね。アベルの結婚相手には困っていたところなんだよ。辺境伯だった頃は、面倒な土地の跡継ぎということで良い縁談が來ない。獨立したらしたで、今度は王妃の座を巡って貴族からの猛烈なアプローチでな」

「にーさま、おんなのひと、けしょーくさいから、やだ! ってにげてた!」

フォルトナー王とリリス姫が笑いながら、アベル王子が二十歳ととっくに適齢期を迎えても婚約者のいなかった理由を教えてくれる。

そして、アベル王子は、リリス姫に「こら! そこまで言うな!」と笑いながら、形だけ睨みつけていた。

そんな兄妹のやりとりに、姉さんが隣で微笑んでいる。

「やっと、息子が重い腰をかしてくれたのです。さあ、アベル、姫に言うべきことを言いなさい」

そうフォルトナー王に促されると、アベル王太子は父王の顔を見て頷く。そして立ち上がった後、姉さんをうように手を差し出す。

「姫、こちらに來ていただけますか?」

その言葉に頷いて、姉さんが立ち上がって、アベル王太子の元へ歩み寄る。

向かい合って立つ、二人の顔はどちらも仄かに赤い。

アベル王子が片膝を突く。そして、小さな箱を姉に向かって差し出した。

「フェリシア姫。私の想いをれて、私の妃となっていただきたい」

真っ直ぐな言葉に、姉さんの顔はいまにも泣き出しそうだ。

「ノートンの……、私で、本當に良いのでしょうか」

「あなたが良いのです。あなただけに心を惹かれたのです。……この指は、代々、領主の正(・)妻(・)に引き継がれてきたもの。次は、あなたに嵌めていただきたい」

そう言って、アベル王太子がその小箱の蓋を開いて見せる。

そこには、意匠は古いものの、ローズカットのらかいを放つダイアモンドと思われる石が嵌まっていた。

「さあ、嵌めて、私に喜びをください」

頬に涙を伝わせている姉さんに、アベル王太子が指を嵌めてしいと、答えがしいと懇願する。

「アベル様……。お優しい方。そして、お優しいご家族。私も、その中の一人に、させてください」

そう言って、姉さんが差し出された指を手に取り、左手の薬指に嵌めた。

「お慕い申し上げております。きっと、幸せにしてみせます」

「……私も。王太子殿下のよき妻となり、そして、よき後継を産み、この國のために盡くしましょう」

部屋全が微笑みと祝福の雰囲気に包まれる。

こうして、姉さんは無事、フォルトナーへ輿れすることが決まったのだった。

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