《無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第65話 年王と悪魔、終結
そうして、僕は姉さんをフォルトナーに預け、ノートンに戻ってきた。
帰りもニーズヘッグに送ってもらい、戻りには、姉さん付きの侍や生活に必要になる類などを持って行ってもらった。
急がないが嵩張るものは、きちんと國から國への嫁り道として送れば良いだろう。
結婚式の日までに揃えば良いのだ。
僕は、自分のベッドに橫になって、ほっとため息をつく。
「ようやく、姉さんを安全な場所に逃してやることが出來た……」
嬉しくもあり、寂しくもある。
い頃からの姉さんとの思い出が、よき思い出として、蘇る。
「……エド、寂しい?」
ベッドにいる僕の橫が軋んで音を立てる。
そして、いつの間に現れたのやら、セーレが僕の隣に寢転びながら、しなだれ掛かってくる。
「願いが葉ったんだ。……いや、でも寂しいのは寂しいかな。ずっと一緒に生きてきた姉さんと遠く離れてしまったからね」
僕がそう言うと、セーレが僕の耳元にらかなをれさせて、甘く囁きかける。
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「……めて、しい?」
「……純潔をよこせと言うことか?」
僕が逆に問いかけて返すと、僕の真正面に顔を移させて、ぷうとを尖らせた。
「気、なぁい」
そう言いながら、まだ拗ねているのかブツブツと文句を言っている。
ーー全く、本當に悪魔なんだかなあ。……仕方ない。
「……僕を、一時の快楽で全て忘れさせてくれないか? セーレ」
おいで、と言うように、僕は両腕を前に差し出してう。
さあ、むままに僕の純潔を奪うがいい。そうして、今この時の寂しさを紛らわせてくれ。
なんで僕から請求しないといけないのかは、不明だけれど。
僕は腕はそのままに、目を瞑る。
すると、僕にしなだれかかっていたセーレの溫が離れていく。
ーーさあ、むがままに奪い盡くすがいい。
僕は、覚悟と、初めての験に好奇心を抱きながら、彼が覆い被さってくるのを待つ。
……
……
……
……來ない?
僕はうっすらと片目を開ける。
上を向いて寢ている僕の視界に彼はいなかった。
えーっと?
僕は目を開けて、起き上がる。
すると、セーレはいた。
僕の隣で、の前で両手を組んで目を瞑り、姿勢良く仰向けで寢ながら、……僕を待っている?
「……何してるの?」
なぜ彼が、この姿勢で行儀良く待っているのか理解できなかったから、素直に尋ねてみた。
すると、意外なことに、セーレは張混じりの聲でこう答えるのだ。
「あなたが來るのを待ってるの。……あ、あのね、私ね、初めてなのね」
ーーえ?
僕の驚きに気づかず、セーレは言葉を続ける。
「……だから……。優しく、して?」
そうっとセーレは瞳を開いて、潤み、懇願するような目で僕を見つめる。
ーーこの子、『』の悪魔で、僕の純潔が代償だったんじゃなかったっけ?
僕は頭がクラクラしてきた。
だから、思わず思ったことをセーレ自に言葉としてぶつけてしまった。
「……セーレ。君は、『』の悪魔じゃなかったっけ?」
そう僕に指摘されると、彼は顔を真っ赤にして、ガバッと起き上がる。瞳は潤んだまま涙目だ。
「しょーがないでしょー! 悪魔だって、初めては、初めてなのぉっ!」
そう言って、近くにあった枕を引っ張ってきて、僕の顔に投げつける。
「あっ、こら。やめろ」
けれど、僕の制止は無視しての赴くままにセーレは僕に攻撃をしてくる。
「エドの意地悪ぅ!」
外見二十歳のセーレが、十二歳の僕に、ポカポカを叩いてみたり、頬を橫に引っ張ってみたり。
セーレの行為をけ止めながら、はあ、と僕はため息をつく。
ーーまあ、僕も本音はまだそう乗り気じゃない。
むしろ、今は、神的に國のことで手一杯で、セーレの期待に沿えるかも自信はない。
「セーレ、いいよ、いいよ。……こういうことは、ゆっくり行こう」
可らしい抗議を続けるセーレを宥めて、僕のを叩くその両手首を摑まえる。
「……もう、馬鹿にしたりしない? 私のこと、呆れてない?」
僕は、上目遣いに僕を見る彼を、初めて『可い』と思った。
「うん、大丈夫。……好きだよ、セーレ」
利害だけじゃなくて。
初めて、その言葉を伝えると、セーレの瞳が大きく見開かれる。
「ほんとに……?」
「うん」
「浮気、しない……?」
「しないよ。……その必要もないからね」
だって、僕は、子供を儲けるつもりはないのだから。だったら、僕の気持ちを契約したこの子に全てを捧げようと、なんら問題はない。
初めて、僕からセーレのに、れるだけのキスをする。
それはまるで誓いのようだ。
「……人生は長い。ゆっくり行こう、セーレ」
「……うん」
結局、二人でただ抱きしめ合い、僕はセーレのらかなに顔を埋めて、甘い香りに包まれる。
ーーいつか、人間と悪魔という種族の壁を超えて、『』なんかが芽生えたりするのだろうか?
それも面白い、と思いながら、僕は睡魔に抗えずに眠りに落ちるのだった。
こうして、ゆっくりと僕達は二人で生きていくのだろう、ずっと。
年王編、甘めの、幸せ(?)エンディングです。
そして、次回からはまた舞臺は魔族領に戻る予定です。
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おかげさまで書籍化は決まっておりますが、作者の勵みになりますので……!
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