無雙 ~仲間に裏切られた召喚師、魔族のになって【英霊召喚】で溺スローライフを送る【書籍化&コミカライズ】》第82話 勇者、音を上げる

「もう嫌だぁぁ!」

何度目か分からないほど、を再生させた後、勇者ハヤトはそうんで、闘技場の地面に座り込んだ。

それを見て、殘りの二人も泣きじゃくりながら地べたに座り込む。

「己の非を認め、謝罪するか?」

立ったままの陛下が、三人を見下ろしながら尋ねる。

「……何が間違いだったのか、分からない」

そう呟いて、ハヤトは一筋涙を流した。

その言葉に、殘りの二人はハヤトの方を見る。

「……どういうことだ。言ってみよ」

投げた問いに対して、逆に問いのようなものを返され、陛下は理解できないといった顔をする。

「俺は、日本という、この世界とは全く違う世界から、急にこの世界のノートンという國に呼び出されたんだ。日本には、母さんも父さんもいるし、妹だっている。本當は、真っ先に帰りたかった」

ぽつぽつと語り出す、ハヤトの自分語り。

そして。

「……そもそも、呼び出されたくなんかなかったよ! 飯はまずいし、不衛生だし! 貴族とか教會とか、えっらそうだし! 元の世界の方がよっぽどいい世界だったんだよ! 母さんの飯は味いんだ!」

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そう言って、歯を食いしばって泣き出した。

「……」

陛下は無言だ。

勇者というものと語り合うことなどなかったのか、ただ、その言葉を靜かに聞いている。

「しかもさ、勝手に呼んでおいて、帰る方法なんてないって言われるんだぜ?……ふざけんな。俺の人生返せよ」

その時のことを思い出したのか、ハンッと鼻先で笑う。

「じゃあ、代わりに何をしてくれるんだって聞いたら、全ての悪の源たる魔王さえ倒せば、姫をやろうって、フェリシア姫と會わされたんだ。彼、すごく綺麗な人で。この人を得られるなら、この世界で生きるのもいいのかもしれないって、そう思った……」

ーーん? ノートン。フェリシア姫?

私は思い當たることがある。

抱っこされているアドラメレクに、「おりたい」と伝えて、そのまま、彼らの元へ下ろしてもらった。

「ねえ、ハヤト。フェリシアひめは、こんにゃくが、きまっているわよ?」

婚約、と聞いて、ハヤトの表が泣き顔から絶へと変わる。

「それに、もう、あなたにめいれいしたノートンおうも、すうきけいも、かわってましゅ」

私は、かわいそうだとは思ったけれど、追い討ちをかけるように、彼のよすがにしてきたものを言葉で破壊する。

「……じゃあ、俺は何のために」

「もう、いみはないんじゃ、ないんじゃないでしゅか?」

ハヤトの前に立ち、彼の頭の上に、ぽん、と手を乗せる。

「もう、……意味はない、のか」

「うん」

泣き縋りたいのだろうか。ハヤトの両手が私の方へ差しべられた、そう思ったとき。

「あ〜る〜わ〜よ〜」

気の抜けた聲で、やや険のある高めのの聲がした。

「私の道化をするって役割があるじゃない〜」

頭に漆黒のツノ、背にコウモリの羽を持つが、いつの間に現れたのか宙に浮きながら、嘲笑う。

見覚えがある。最後の『災厄』の日に見た、ア(・)レ(・)と同じ。

「あく、ま?」

私は震える聲で呟く。

アドラメレクは、陛下を庇うように移して、陛下を自分の背後にする。

アスタロト、ベルゼブブも遅ればせながら陛下の元に駆けつけ、三人で陛下を取り囲む。

「マスター!」

観戦席にいたままのマーリンとフェルマー、パズスが駆けつけ、私の周りを囲む。

「つまんない。まーったく、つまらなかったわ〜!」

そう言って、はハヤトたちを睨め付ける。

「でも、この世界には、『怠惰』を倒した者がいるのよねえ……。そして、あなたを筆頭に、危なそうな気配を発している輩が沢山いるわ〜」

赤い艶やかに彩られた爪で、陛下を指さす。

「勝機のない勝負はしない主義なのよね〜、私」

私は、その言葉にしほっとする。再びの悪魔との戦闘など、できれば避けたい。

「じゃあ、あなた達。あげた種のびて、脳まで達したら、自分の意思もなく破壊し続ける、不死の人形の出來上がりだから。が〜んば〜って〜」

ハヤト達三人を目を眇めて見て笑うと、彼の背後に黒い裂け目が出來る。

「なっ!」

「ちょっと、聞いてない!」

「いやぁ!」

狼狽する三人を置き去りにして、甲高い笑い聲を上げる悪魔を飲み込んで、裂け目は消えていった。

「陛下……」

アドラメレクが、侮蔑と憐憫の混ざったような複雑な表でハヤト達を見下ろしながら、陛下に問いかける。

「……ああ、放って置くわけにもいくまい」

「……助けて、くれるのか?」

ハヤトが、縋る目で陛下を見上げる。

「勘違いするな!」

陛下の強く諌める聲に、三人はびくりと肩を震わせる。

「……お前達を助けるわけではない。俺は、國を守るために必要なことをするのだ」

そう言って、陛下は厳しい眼差しで、三人を見下ろした。

陛下、最後かっこいいのに、実は著ぐるみは頭しかいでいない。

(読了のを臺無しにする著者←コラ)

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