《【本編完結済】 拝啓勇者様。に転生したので、もう國には戻れません! ~伝説の魔は二度目の人生でも最強でした~ 【書籍発売中&コミカライズ企畫進行中】》第7話 初めてのお友達

前回までのあらすじ

両親は週に一回のペースらしい。

「あっ、やべぇ……」

「お、おい、マズいぞ……」

ツルーっと赤いスジがリタの鼻から垂れる。

それを見た男児二人が、目に見えて揺し始めた。

鼻を拭ったリタの手袋には真っ赤なが付いて、彼はその手を凝視していた。

顔面に雪玉をぶち當てられたリタは、鼻からを出していたのだ。

それも盛大に。

簡単に言うと「鼻ぶー」である。

目の前の男児二人と自の手袋に付いた鼻互に見つめていると、次第にリタの瞳にるものが沸き上がる。

その様子を見た男児たちは、焦ったように近付いて來た。

「お、おい、泣くな!! 謝るから泣くなよ!!」

「ごめん、本當は當てるつもりじゃなかったんだ――」

「ふぇっ……ふぇ…… ふえぇーん、かかしゃまー うえぇーん!! あぁぁーん!!」

リタは泣いた。

大きな口を開けて空を見上げながら、思い切り大聲で泣きんだ。

それは齢212の老した大人の姿では決してなかったが、今の彼はどこからどう見ても完全に三歳児なので何の問題もなかった。

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冷靜に考えると、鼻が出るほどの勢いで顔面に雪玉をぶつけられたからと言って、大聲で泣きぶのはあまりにも大人げないだろう。

しかし自のその行いに何の疑問も持たないほどに、今のアニエスの神は退行していたのだった。

「ど、どうしたのリタ!? 何があったの!?」

「リタ、どうした!? 大丈夫か!!」

リタの泣き聲を聞いた両親が慌てて家から飛び出して來る。

その手にはかまど用の棒切れが握り締められていたが、家の前でおろおろと狼狽えている男児の姿を目にすると何処か気の抜けた顔になった。

そして反対側に目を向けると、そこには足元に多數の雪玉を転がした鼻ぶーな娘の姿が目にる。

それを見た瞬間、彼らはここで行われたであろう出來事を察したのだった。

「うわぁーん、かかしゃまー!!」

ぶーのリタがエメに向かって突進すると、そのかなに顔を押し付けて泣きじゃくる。

エメはそんなリタの頭を優しくでながら、著膨れで丸々となったを優しくギュッと抱きしめた。

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そんな二人を橫目に見つめながら、フェルは狼狽える男児に事を訊いたのだった。

話を聞くと、わざと彼らはリタの顔面に雪玉をぶつけたわけではないことがわかった。

それに二人が慌てて謝っている聲も聞いていたフェルは、彼らを叱ることなく優しく諭すと、そのまま家に帰らせたのだった。

リタが鼻を出して泣かされた日の翌日、彼の家には朝から來客があった。

それは前日にリタの顔面に雪玉をぶつけた男児たちで、カンデという名の五歳の男の子だ。

そしてその後ろに隠れるように佇んでいるのがシーロ、四歳だ。

朝早くから彼らが何をしに來たのかというと、他でもない、リタと遊ぶためだった。

この村には子供がない。

いや、子供のみならず村人自もさほど多くない國境沿いの寒村なのだが、その中で彼らは昨日新しい仲間を見つけていたのだ。

そもそもリタがこの狹い村に生まれてから既に四年近く経っているので、新しいという言い方も々おかしいのだが、生まれてからずっと病気で家に閉じこもっていた彼は、実際に村の子供達と會うのはこれが初めてだった。

男児たちにしてみれば、それはある日突然新しい子供がやって來たのと変わらなかった。

しかし相手は痩せてが小さくよろよろ歩くで、言葉も上手く話せない。

それでも彼らは新しい子供に興味津々だった。

だから両親からリタの素を聞いた彼らは、早速遊びのいに來たのだ。

そんな彼らのいをけたリタは、最初は胡(うろん)な顔をしていた。

昨日は自分の顔面に雪玉をぶつけた相手だ。

自分はまだ許したわけでもないのに、何をいけしゃあしゃあと……

それに自慢ではないが212歳の大人が四、五歳の児と一緒に遊べるわけが無いではないか。

自分は大人なのだ。

誰がお飯事(ままごと)など、そんない子供の真似事ができるものか。

などとエメお手製のお気にりのぬいぐるみを手にぶら下げながら、リタは思わず唸ってしまう。

「あら、どうしたの? せっかくお友達になったのだから一緒に遊びなさいな」

「いやじゃ。おのれら、らんぼうものは、きらいじゃ。また、はなぢがでたら、たまらん」

二人の男児からプイっと顔を背けると、リタは舌足らずな聲を出した。

212歳のいい大人ともあろう者が、児に対して完全にへそを曲げている。

もしもその姿を勇者ケビンが見たとしたら、彼はなんと言うだろうか。

「だからごめんってば。謝ってるじゃないかよ」

「もう雪玉ぶつけたりしないからさ、許してよ」

顔を背けたままのリタに、男児たちがひたすら謝っている。

その様子に何気に悪い気がしなかったリタは正面に向き直った。

「……ふむ、ええじゃろう。とくべちゅに、ゆるしてやろう」

バツの悪い顔をしながら男児二人が頭を掻いている前で、三歳児が腰に手を當てて偉そうに踏ん反り返っている。

なんという上から目線。

「顔に雪玉をぶつけたのは悪かったと思うけど…… でも、お前ずいぶん偉そうだな……」

確かに昨日の件では悪いのは自分達だったが、それにしてもどうしてこんなに上から目線なのだろうか、チビのくせに。

「あ゛っ? なんぞ?」

「な、なんでもないよ…… それじゃあ遊びに行こうぜ」

「あい」

なんだかんだと言いながら、それでも楽しそうに男児二人の後を追いかけるリタ。

その姿を見ているエメの目に涙が滲んでくる。

し前までは一人で満足に立つことも出來なかったのに、気付けば友達が出來て一緒に外を走り回っている。

もっともリタはまだよろよろとゆっくり歩くのが一杯で、走る事など到底出來ない。

それは彼らも理解しているようで、彼の歩く速度に合わせて何度も立ち止まってくれる。

エメからのお願いで、遊ぶ場所は自宅から見える範囲にしてもらったので、彼は男児たちに安心してリタを任せた。

彼らは言いつけを良く守り、小さなリタに手を貸しながら丁寧に面倒を見てくれる。

そんな彼らにリタも信頼を寄せるようになり、その日以來楽しそうに一緒に遊ぶようになった。

それから彼らは毎日のようにリタを遊びにいに來るようになった。

するとその遊び自が彼のリハビリとなり、日に日に足腰も強くなっていく。

そして同年代の子供たちと屈託なく話をすることも、彼の言葉の回復にとても役に立っていた。

――――

雪解けも進んですっかり春らしくなってきたある日、カンデとシーロの二人は新しい友達を連れてきた。

その子は村に唯一ある雑貨屋の店主の娘だ。

は最近四歳になったばかりだと言っていたので、五月で四歳になるリタとは同い年だった。

「初めまして、あたしはビビアナ。あなたはリタね。この二人から聞いていたけど……隨分とちっさいわねぇ」

ビビアナは初対面のリタに向かっていきなり「ちっさい」などと言い放った。

確かに彼は四歳児にしては背が高く大人びて見えるので、痩せて小さいリタは年下に見えたようだ。

ずっと病気で臥せっていた発育不良のリタは、ビビアナよりも二回りは小さく見える。

見ようによってはまるで彼の妹のように見えなくもない。

それは男児二人も思ったようで、揃って微妙な顔をしていた。

「はじめまちて。わたちはリタよ。よろちくね」

初対面の相手には慎重に児言葉を繰り出すリタだった。

間違っても「わしはリタじゃ。よろしゅう頼む」などとは口が裂けても言えないのだ。

しかし、彼の気遣いもビビアナには通じなかったようだ。

はまたしても無遠慮に口を開いた。

「……あなた、赤ちゃんみたいな喋り方をするのね。――まぁいいわ、妹みたいで可いし。特別にお友達になってあげる」

勝手に人の家にやってきて「友達になってあげる」とは隨分と上から目線である。

その態度はリタがカンデ達にとる態度の數倍は上をいっていた。

もちろんそれはリタもじていたが、ここは212歳の大人の余裕を見せつけて敢えてれないことにした。

リタはスルー能力が高いのだ。

大人だから。

「ありがと。――しょれで、なにちてあしょぶ?」

「そうねぇ……お飯事(ままごと)は飽きちゃったし……」

「おぉ、おままごと――」

お飯事(ままごと)…… ぜひそれをして遊びたい。

いつもは男の子と一緒なので、たまにはの子同士で飯事(ままごと)がしたいと思うリタだった。

ここにはエメ特製のお気にりのぬいぐるみもある。

これを赤ん坊に見立てて飯事(ままごと)などとても楽しそうではないか。

リタのらしい灰の瞳が期待に輝いていた。

しかしそのささやかな願いはあっさりと裏切られてしまう。

「あたし、探検ごっこがいい!! リタの家の裏にお山があるでしょ。そこを探検したいな」

まさに「鶴の一聲」だ。

男児二人はその言葉に逆らおうとはせず、その様子からは彼らの普段の力関係が容易に想像できるものだった。

彼らは互いの顔を見合わせると、遠慮がちに口を開いた。

「で、でもさ、リタは早く歩けないから、山は無理じゃないかな」

「それじゃあカンデがおぶってあげればいいじゃない。あなたがこの中で一番年上なんだから」

「えぇ、俺が?」

「なによ? なんか文句あるの?」

「い、いや……」

そんな二人のやり取りを見ていたリタは、その間に割ってると自信ありげにを反らす。

本人はどや顔で踏ん反り返っているつもりだったが、その姿はなんとも可らしかった。

「らいじょうぶ、らいじょうぶ。わちはへいき。きにしない」

が言う通り、リタは今では歩くのもかなり早くなっていた。

以前に比べるとそれなりに長い距離も歩けるようになっていたし、短い距離であれば小走りもできるようになった。

もちろん自分に何かあれば友達や両親に心配をかけることは十分承知していたが、それでも勝手知ったる裏山なのでそれほど心配していなかったのだ。

リタの両親も、いつも通りに姿が見える範囲という條件を出したうえで、彼らが裏山で遊ぶ許可を出したのだった。

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