《【本編完結済】 拝啓勇者様。に転生したので、もう國には戻れません! ~伝説の魔は二度目の人生でも最強でした~ 【書籍発売中&コミカライズ企畫進行中】》第23話 報収集
前回までのあらすじ
昨夜は三回もしたことをバラされて、激おこパウラ
「痛ってぇ…… パウラ、お前何も本気で毆らなくてもいいだろ?」
「うっさいわね!! この無神経男、死ね!!」
「お、おい、ちょっと待てよ――」
日も暮れてすっかり薄暗くなった林道を三人と一頭が歩いていた。
辺りは既に日も暮れてすっかり暗くなっていたが、それでも彼らは歩き続けている。
夜に林道を歩くのは危険だ。
だから本來であればこの場でキャンプを張るべきなのだろうが、オルカホ村までは歩いて三十分ほどなので、彼らはそのまま歩いて行くことにしたのだ。
しかし暗い中を無理に歩き続ける理由はほかにもあった。
それはこの時間になっても帰って來ないリタを両親が心配しているからだ。
もしもこれ以上帰りが遅くなってしまえば、行方不明事件として村中が大騒ぎになってしまうだろう。
それは決してリタの本意ではなかった。
そもそも彼は両親の言いつけを破って一人で山にったのだから、これ以上彼らに心配をかけるわけにはいかないのだ。
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このまま家に帰っても、きっと両親から大目玉をくらうだろう。
しかし黙って一人で山にったのも、オウルベアを遠くまで追いかけたのも、こんな遅い時間まで家に帰らなかったのも、全てリタの責任だ。
だからそのことで両親から叱られるとしても、甘んじてそれをけようと思っていた。
もとよりそれは、リタの両親に対する反抗心から始まったことなのだが、いまさらそんなものは全く言い訳にはならないだろう。
しかしここで二人の客人を伴って帰れば、とりあえずその場では両親の説教を免れられるかもしれない。
叱られるのは自分のせいなので仕方ないが、やはりそれは嫌なのだ。できることなら、両親から説教などされたくはないのだ。
などと、そんな四歳児の勝手な思など一切知らずに、怒りで目と眉を吊り上げたパウラが早足で歩き続けていた。
そして鼻を出して左頬を腫らせたクルスが遠慮がちに追い縋る。
しかし彼は背後の相棒を一切振り返ることなく、ひたすら悪態をついていた。
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「まったく、あんたって人は…… 純潔!? 処!? よくもまぁ、あたしに向かってそんなことが言えたものね!! そもそもあたしのそれを奪ったのは何処のどいつなのよ!? ――あんたじゃないの!!」
「お、おぅ……」
「右も左もわからない十五歳の新人冒険者だったあたしに、強引に近づいてきたのは何処のどいつなのよ!?」
「お、俺だな……」
「あの時あたしのパートナーはもう決まっていたのよ!! それを無理やり変えさせたのは誰!?」
「俺だ……」
「あんたとの初めてはお灑落な宿じゃないとイヤって言っていたのに、結局なんであんな草むらだったのよ!! しかも旅の途中で何日も水浴びしていなかったのに!! あたし、凄い恥ずかしかったんだからね!!」
「す、すまん……」
「あれからもう八年も経つのに、一度もあたしを好きだって言ったことないじゃない!! あたしはずっと待っているのに、一言もないってどういうこと!?」
「い、いや、それは……」
「あたしはもう二十五歳なのよ!! こんな行き遅れなんて、もう誰も貰ってくれないんだから、あんたが責任取りなさいよ!! あたしはずっと待っているのに、あんたは何も言ってこないんだから!! そもそもあんたは、あたしをどう思っているのよ!? はっきり言いなさいよ!!」
「いや、あの……」
「あたしはさっき、あんたが死んじゃうって本気で思ったのよ!! あたしを置いて先にいなくなってしまうなんて、気が狂いそうだったわよ!!」
「あ、あぁ……」
「それを……それを……あんたは……あんたは…… うぅぅ……う……うえぇーん、ぐすっ、うぇぇーん――」
遂に極まったのか、散々悪態をついてが高ぶったパウラは、大きな口を開けてそのまま泣き出してしまう。
その姿はまるで小さな子供のように無防備に見えた。
空を仰いで子供のように泣きじゃくるパウラを、背中からクルスが抱きしめる。彼の顔からは直前までの戸った表はすっかり消えて、優し気な微笑みだけが殘っていた。
「すまねぇパウラ…… 悪いのは全部俺だ――俺はお前に甘えていたんだ。お前と一緒にいると心地が良くて、気付けばすっかりお前に寄りかかっていた」
「ぐすっ、ぐすっ……」
「おかしいよな。お前よりも俺の方が年上だし、ずっとも大きいのに。それなのにお前に甘えていたなんて」
「ぐすっ、クルス……」
背中からクルスに抱きしめられて、パウラはし落ち著いたようだ。
彼はしゃくりあげる聲を次第におさめると、クルスのにその小さく華奢なを預けた。
そしてしばらくそうした後、真剣な顔をしたクルスが突然口を開いた。
「なぁ、パウラ。アニエスも無事に見つかったことだし、やっとこの依頼も完了だろう。この後はアルガニルに戻ることになるが、帰ったら……そのぅ…… 結婚してくれないか?」
「えっ……?」
「さっき魔獣にやられて死にかけた時、俺ははっきりわかったんだ。俺はお前が好きだ。お前がいなければ生きていけない」
「クルス――」
「俺は本気だ。決してお前に言われたからじゃない。お前が好きだから、俺はお前と一緒になりたいんだ」
「――あたしなんかでいいの?」
「あぁ、お前じゃないとダメなんだ」
「クルス……」
「パウラ……」
「はいっ、しょこまでじゃ!! しょれ以上は児教育にわるいわ、このボケどもがっ!!」
「ブヒヒン、ブヒンブフン!!」
せっかくいい雰囲気になっていた二人の間に、些(いささ)かイラっとした口調のリタの聲が割ってる。
そしてユニ夫も何か言いたげなジトっとした目で見ていた。
両親の説教を避けるためにできるだけ早く帰りたいリタなのに、こんなところで無神経アホ男と行き遅れ釣り目のプロポーズシーンなど見ている暇はないのだ。
そんなことは、このあと待つであろう両親の説教を回避してからゆっくりとやってほしいと思うリタだった。
とりあえずクルスのプロポーズはあとで仕切り直してもらうとして、村に帰る道すがらリタと冒険者二人は今後の打ち合わせをしていた。
一世一代のプロポーズを四歳児に水を差されたクルスは々ヘソを曲げていたが、そんな事にはお構いなしにリタは話を続ける。
「しょれで、おまぁらはこのあと、どうしゅるのじゃ?」
「それはあなたの出方次第でしょうね。それでどうするの? 今はまだ國に戻らないんですか?」
「ふむ。しょのまえに、々とじょうほうが知りたいのぉ。魔國はいま、どうなっちょる?」
「魔國は未だ混したままだ。次の魔王が臺頭しつつあるようだが、奴らも一枚巖ではないらしい。この先數年は自國のゴタゴタで手が一杯だろうな」
さすがは冒険者と言うべきだろうか、いざ仕事の話になると直前までの私などはすっかり橫に置いたクルスだった。
「ほう……しょれでは、やちゅらの侵攻はしばらく無さそうじゃの」
「えぇ、恐らくそれどころじゃないのでは」
「ふむぅ…… それでは、ブルゴー王國はどうなっておりゅ?」
ここでやっとリタが一番知りたかった案件を切り出した。
実はリタは報に飢えていた。
これまで何度も両親から世を聞き出そうと試みたが、彼らは殆ど何も知らなかったのだ。
それもそうだろう。行商人が行き來する大きな町であればいざ知らず、こんな辺境の村などには人の噂以上の報など端からってなど來ないのだ。
それに天気や狩り、農作のことにしか興味のない村人が、たとえ噂話だとしても他國のことまで聞き耳を立てる者はいない。
それも遠く離れた魔國や直接行き來もないブルゴー王國のことなどであれば尚のことだろう。
そう考えると、こんな辺ぴな村でブルゴー王國の狀況など知り得ようもないのだった。
「あぁ……噂話程度でしか話せないが、それでもかまわないか?」
「うむ、かまわにゅ」
「わかった。――最近の話だが、ブルゴー王國の宮廷魔師が変わったらしい。もっとも先代がずっと行方不明なんだから仕方ないのだろうがな。――つまり、あんたの席に別の人間が就いたってことだ」
「ほぅ…… して誰が就(ちゅ)いた?」
「えぇと、誰だっけな……」
クルスが思い出そうとしていると、橫からパウラが口を挾んだ。
「イェルドよ。イェルド・ルンドマルク、確かそんな名前だった」
パウラも顎に指を當てて斜め上を見ている。
どうやらその記憶には自信がないようだったが、リタはその名前を知っていた。
「ほぅ、あやちゅか…… あのひよっこが、よくぞあの席を止められたものじゃのぉ」
些(いささ)か馬鹿にしたようなリタの話しぶりから、どうやら新しい宮廷魔師は大した人ではないらしい。
「なんでも彼は第一王子派から推薦をけたらしいわよ。そのせいで第二王子派からは煙たがられているみたい」
「今まで中立の立場だったあんたが抜けたせいで、王宮のパワーバランスが々変わってきたようだな。しかし、兄弟で跡目爭いなんぞしている暇があるのかねぇ。お隣の魔國だって、いつまでもおとなしくしてないだろうに……」
その言葉を聞いたリタは、その可らしい小さな口から溜息を吐いた。
彼は彼なりに、現在の王宮の狀況に何か思うところがあるらしい。
「ふぬぅ……まったく面倒なやちゅらじゃ…… それでケビン――勇者はどうしておる?」
「勇者ケビンねっ。そうそう、あなたは彼の養育者なんでしょう? 噂では彼って相當のイケメンだって聞くけれど、本當なの?」
「あぁ――確かにあやちゅの面は整っておりゅし、どもには人気がありゅのぅ…… しかし、あやちゅが寢小便をたれておる頃からずっと面倒をみてきたから、わちには、よぉわからんわ」
「おいおい、お前そんなに面食いだったのか? なんだよイケメンって」
パウラの言葉に我慢ができずに、クルスが橫から口を挾んだ。
彼は「イケメン」という言葉に敏に反応しているように見える。
「いいじゃない、べつに。の子がカッコいい男に憧れるのは普通でしょ」
「お前、いまさらの子って歳でもないだろ…… な、なんだよその目は。――へいへい、すいませんねぇ、熊みたいな男で」
微妙に拗ね始めたクルスに、パウラは面倒くさそうな視線を投げた。
「ごほんっ!! えぇと、それでその勇者ケビンだけど、そろそろ第二王との結婚式があったはず。――えぇと、再來月だったかな、確か」
「ほぉ、ついにあの二人が結婚しよるか――こりは益々(ましゅましゅ)面白いことになりしょうじゃのぉ。しゃて、あ奴らがどう出るか、見ものじゃわい……」
突然口調が変わったリタの顔に二人が視線を向けると、可らしい児の顔には何か含んだような表が浮かんでいた。
魔力ゼロの最強魔術師〜やはりお前らの魔術理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】
※ルビ大量に間違っていたようで、誤字報告ありがとうございます。 ◆TOブックス様より10月9日発売しました! ◆コミカライズも始まりした! ◆書籍化に伴いタイトル変更しました! 舊タイトル→魔力ゼロなんだが、この世界で知られている魔術理論が根本的に間違っていることに気がついた俺にはどうやら関係ないようです。 アベルは魔術師になりたかった。 そんなアベルは7歳のとき「魔力ゼロだから魔術師になれない」と言われ絶望する。 ショックを受けたアベルは引きこもりになった。 そのおかげでアベルは実家を追放される。 それでもアベルは好きな魔術の研究を続けていた。 そして気がついてしまう。 「あれ? この世界で知られている魔術理論、根本的に間違ってね?」ってことに。 そして魔術の真理に気がついたアベルは、最強へと至る――。 ◆日間シャンル別ランキング1位
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