《【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-》第3話「覚醒。『創造錬金(オーバー・アルケミー)』」

今日、3回目の更新です。(今日は1話と2話と3話を更新しています)

はじめて來られた方は、第1話からお読みください!

「トールさまは、わたくしどもを恐がらないのですね」

メイド服を著たエルフの、メイベル・リフレインは言った。

俺たちがいるのは魔王領のり口。背の高い木々が茂る森の中だ。

先頭を歩くのは4のミノタウロス。

その次に俺。隣にはエルフのメイベル・リフレイン。

最後尾を殘りのミノタウロスが守っている。

「魔王領が近づくと、人間はなぜかおびえるのですけれど……あなたのように勇気のある方ははじめてです」

「別に勇気があるわけじゃないです」

でも、メイベル・リフレインの言う通りだった。

俺は彼やミノタウロスたちを、怖いとは思っていない。

ここは人ならぬ者が住む、魔王領。

味方はどこにもいない。

エルフは強力な魔力を持っている。

その魔は、俺を簡単に殺せる。

前後には8人のミノタウロスがいる。武はもっていないけれど、俺をくびり殺すくらいはできるだろう。

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でも、怖くはない。

今のところは、ミノタウロスたちは俺を客として扱ってくれてる。

歩きにくいところは手を貸してくれるし、転ばないように、 (意外と)つぶらな瞳で見守ってくれている。

帝國の兵士たちに比べれば、天と地くらいの差があるんだ。

でもまぁ、とりあえず──

「人間の領土と魔王領は、不戦の協定を結んでおります。むやみに恐がるのは失禮ですから」

──そういうことにしておいた。

「……なるほど。単ここに來られるだけのことはあります。ご立派な方……」

メイベル・リフレインはすみれの目をらせて、こっちを見てる。

いい人のような気がした。たぶん、だけど。

「疲れたらおっしゃってくださいね。ミノタウロスさんたちが運びますから」

「いえ、大丈夫です」

俺は首を橫に振った。

地面は歩きにくいけれど、疲れはじない。

というか、魔王領にってから調が良くなっているような気がする。

不思議な魔力をじる。帝國にいたときにはじなかった魔力だ。

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それがを満たしていく。

そして──頭の中で、聲が響いた。

『闇の魔力の吸収が完了しました』

・地・水・火・風屬の魔力と合わせて、基本6屬の魔力吸収が完了しました』

『スキル「錬金」が「創造錬金(オーバー・アルケミー)」に進化しました』

『「素材錬」スキルが完全に覚醒しました』

『「屬付加」スキルが完全に覚醒しました』

『「鑑定把握」スキルが完全に覚醒しました』

──なんだこれ。

思わずスキルを確認すると──

──────────────────

『創造錬金(オーバー・アルケミー)』

無から有を生み出すスキル。

最高位の『錬金』スキルでもある。

」「闇」「地」「水」「火」「風」の基本6屬の魔力をれられる者のみが、このスキルに覚醒する。

アイテムの外見・効果・能力についての報があれば、同等のアイテムを作り出すことができる。

『素材錬

魔力から質を生み出すことができる。

質を合し、新しい素材を作り出すことができる。

質を加工し、好きな形に変化させることができる。

作り出せる質は、現在のレベルによって変化する。

『屬付加』

対象の質に、好きな屬を付加できる。

付加できる屬數は、対象の質によって変化する。

『鑑定把握』

対象のアイテムの屬・素材・効果を鑑定する。

鑑定した報は、スキルの中にデータとして記録される。

──────────────────

──『錬金』スキルが変化した?

どうして!?

しかも──魔力から質を作り出す……って。そんなスキルがあるのか?

いや、確かに自分の中のスキルは、それができると教えてくれてるけど。

でも、便利すぎる。

俺に戦闘用のスキルがなかったのは、この『創造錬金(オーバー・アルケミー)』に、能力を全振りしてたからじゃないか、って思うくらいだ。

そうじゃなかったら、こんなスキルに覚醒(かくせい)する理由がわからない。

「どうされましたか? トールさま」

気づくと、すぐ近くにメイベル・リフレインの顔があった。

心配そうに、俺の顔をのぞきこんでいる。

「お疲れですか? それとも、慣れない土地だから気分が……」

「い、いえ。大丈夫です」

俺は急いで首を橫に振った。

「気分が悪くなったのならおっしゃってくださいね。魔王領では、人の領域とは魔力の強さが違いますから」

「そういえば、魔王領では『闇』の魔力が強いんですよね?」

「おっしゃる通りです。そして人間の領域には『』の魔力が満ち満ちているのでしょう?」

「帝國では『火』と『地』の魔力も強いです。『火』は敵を焼き盡くす力を、『地』は決して折れない鋼(はがね)のような強さを意味して──あ」

気づいた。

スキルが覚醒したのは、『闇』の魔力を取り込んだからだ。

人間の領域は『』の魔力が強く、『闇』が弱い。

魔王領では『闇』の魔力が強く、『』が弱い。

『創造錬金』に覚醒するには、基本の6屬──・闇・地・水・火・風の魔力をれなければいけない。

俺はたぶん、この森で大量の闇の魔力を吸収してる。

それで、必要な魔力がそろって、『創造錬金』に覚醒した。

今、わかるのはこれくらいだ。

「どうかしましたか? トールさま」

「……なんでもないです」

「そ、そうですか」

エルフのメイベルはうなずいてくれた。

俺のすぐ近く、息がれるほどの距離で──というか、この人、俺のことをまったく警戒してないな。

いくら魔が使えても、この距離なら、俺がメイベルを拘束する方が早い。

まぁ、そんな気にもなれないくらい、彼は無警戒なんだけど。

逃げるのは、いつでもできる。

今はそれより、この『創造錬金』を試したい。

そう思って、俺はまた、エルフのメイベルと並んで歩き始めた。

「とぉるさま、めぃべるさま」

不意に、先頭を歩くミノタウロスが聲をあげた。

「このあたりは、道が悪くなって、ます。気をつけて、ください」

「ありがとう……っと。あら」

ぐらり、と、メイベルがよろめく。

思わず手をばして、そのを支える。

「大丈夫ですか?」

「も、申し訳ありません! 使者の方の手をわずらわせるなんて……」

メイベルは慌てて俺から離れる。深々と、頭を下げる。

「トールさまに注意しておいて自分がつまづくなんて……お恥ずかしい」

ぱきっ。

メイベルの首のあたりで、なにかが割れる音がした。

がつけていたネックレスが、しゅる、と、地面に落ちた。

「……あ」

「めぃべるさま!?」

慌てたミノタウロスが、地面に落ちたネックレスを拾い上げる。

青い石のついたネックレスだった。

の鎖が、砕けていた。

「よろけたとき、木の枝に引っかかったのですね」

「すいまません。めぃべるさま。じぶんたちが注意、するべき」

「よいのですよ。元々、鎖がこわれかけていたのですから」

「しかし、それはめぃべるさまのお母さまの形見で……」

「いいのです。気にしないでください」

メイベルの手の平には、青い石のついたペンダントだった。

鎖はさっきよろけたとき、枝に引っかかって切れたらしい。

「それを、直してみてもいいですか?」

気づくと、言葉が勝手に口をついて出ていた。

「切れた鎖なら、何度か直したことがありますから」

「トールさまは、細工師なのですか?」

「いえ、錬金師(アルケミスト)です」

自分から錬金師と名乗ったのは初めてだ。

でも、しっくり來る。

「俺は帝國から來た錬金師のトール・リーガスです。たぶん、その鎖を直せると思います」

メイベル・リフレインとミノタウロスたちは、おどろいたように俺を見た。

「……使者の方にこんなことをお願いしても、いいのですか?」

メイベルは俺にペンダントを差し出した。

「これは母の形見で……本當に大切なものなのです。直せるなら、お願いしたいのですが……」

「わかりました」

俺は木の元に腰を下ろした。

ペンダントをけ取り、鎖にれて──『創造錬金』の『鑑定把握』を発する。

目の前に、ペンダントの報が浮かび上がる。

『水霊石のペンダント』

水の霊の祝福をけたペンダント。

ペンダントヘッドには水の魔石がついている。

鎖は金屬製 (れたことのない素材のため不明:分析中)。

:水

切れたのは劣化していた鎖の部分だ。直せる。

その部分の金屬を生み出して、さらに水屬を付加すればいい。

「発──『素材錬(そざいれんせい)』」

俺は、切れた鎖に指を當てた。

俺は魔力で金屬部分を『創造』していく。

金屬は『地の魔力』から生まれる。どんな金屬でも基本的には同じだ。

まわりの鎖に合わせて、魔力から金屬を錬して──『水屬』を付加すればいい。

スキルを起すると頭の中に、魔力を注いでかき混ぜるようなイメージが浮かぶ。

これが錬金師の使う、錬金釜の代わりらしい。

「『素材錬』実行。修復開始」

てのひらに載せたペンダントが、しゅう、と音を立てた。

鎖の欠けた部分が、生きのようにき出す。

そして──

「──お、おぉ。めぃべるさま、これは!?」

「──鎖が、直っていきます」

「──素材もなにもないのに? 金屬が……生まれている!?」

ミノタウロスたちがびっくりしている。

実は俺もおどろいてる。

魔力だけで素材生って、本當にできるんだな。

しかも、イメージ通りに鎖ができあがっていく。

これが『創造錬金(オーバー・アルケミー)』の力か。

かちゃん。

しばらくすると、ペンダントの修復(しゅうふく)が完了した。

欠けていた鎖は、元の形を取り戻している。

「できました。はいどうぞ」

「…………」

「応急処置なので、なにか不備があるかもしれません。念のため町に戻ったら、専門の人に見てもらってください」

「…………」

「もちろん、念のためです。いい加減な仕事はしてないです。俺はこう見えて、錬金師ですから。なったばかりですけど、錬金師と名乗ることにしましたから」

「…………」

「あの、メイベル・リフレインさん?」

「使者さま……いえ、トールさま!」

がしっ。

いきなりだった。

メイベル・リフレインは両手で、俺の手を握りしめた。

「ありがとうございます! 母の形見が……完全な姿(・・・・)に……」

「完全な姿?」

ああ、つなぎ目の跡がわからなくなってるってことか。

鎖の切れた部分は、跡形もなく修復されている。うまくいってよかった。

「トールさまは、さぞ高名な錬金師なのでしょう……」

メイベル・リフレインはペンダントを握りしめて、涙ぐんでる。

「自分もしました、とぉるさま」

「これが人間の世界の技かー」

「ほんの數分で直すなんて、どわぁふの細工師でも無理だよ……」

「すごい人が、人間の世界から來たものだ……」

ミノタウロスたちも聲を震わせている。

こんなふうに謝されるのは初めてだ。

俺は正式な錬金師として仕事をしたことがない。

なので、まわりの人たちにこうして謝されると……くすぐったくなる。

「……そうか。世の中の錬金師って、いつもこういう気分だったのか」

そうしてまた、俺たちは魔王領に向かって歩きはじめた。

エルフのメイベルは、いつの間にか俺の隣で歩調を合わせている。

笑いながら「どうか、メイベルとお呼びください」と言っているから、トールは彼をそう呼んでみた。

メイベルはうれしそうな顔で──

「はい。錬金師トールさま!」

──錬金師としての、俺の名前を呼んでくれたのだった。

第4話は、明日の午後6時ごろに更新する予定です。

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