《【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-》第24話「メイベルとアグニス、ないしょ話をする」
しばらくして、お風呂場が本格的に開く時間になったので、俺たちはそこで解散することにした。
俺はそのまま自室に戻り、ライゼンガ將軍は魔王ルキエのところに、今回の件について報告に行くことになったんだけど──
「……メ,メイベル! ちょっとお話……いいですか」
アグニスが、戻ろうとするメイベルを呼び止めた。
それから、ふたりっきりで話をしたい、と言ったのだった。
──────────────────
──メイベル視點──
メイベルとアグニスが向かったのは、城のバルコニーだった。
すでには暮れかけて、山の稜線(りょうせん)は赤く染まっている。
まわりに人の気配はない。
緒話(ないしょばなし)には、ちょうどいい場所だった。
「こ、今回は、本當に……ありがとう。トールさまと一緒に、來てくれて。メイド服を、貸してくれて。おかげで落ち著いて、このペンダントの実験ができたので」
「はい、アグニスさま」
「メイド服は洗って返すので。それと、領地に戻ったら、ちゃんと、トールさまとメイベルのために、お禮の品を、用意するので。それから……それから!」
Advertisement
「あわてなくても大丈夫ですよ」
メイベルは夕の中で、優しい笑みを浮かべていた。
「私はいなくなったりしません。いつでもこの城に……トールさまのお側にいますので」
「……いいなぁ、メイベル」
「はい。私は、トールさまのお世話係になれたことを謝しています」
そう言って目を閉じ、祈るかたちに手を組み合わせるメイベル。
「トールさまが魔王領に來られて、まだ數日なんて信じられないくらいに……私は、トールさまのお側にいることが、自然なことだとじているのです」
「メイベル……」
「でも、陛下は『お世話係はひとりだけ』とおっしゃったわけではありませんよ? アグニスさまも同じお役目につきたいのなら、魔王陛下にお話されてみたらどうですか?」
「……わ、私は……まだ、無理だと思うの」
アグニスは真っ赤になって、首を橫に振った。
「私は鎧(よろい)をげるようになったばっかりなので……その生活に慣れるのが先だと思うの。今は、々なことを勉強して、きちんとトールさまを『ゆーざーざぽーと』できるようになりたいので」
「アグニスさま……ご立派です」
「そうじゃないと、トールさまやメイベルに迷をかけるかもしれないでしょ?」
夕方の風に髪をなびかせながら、アグニスは笑った。
「ちゃんとトールさまのサポートができるようになったら、そのときは……メイベルと同じお役目につくかもしれないの。その時はよろしくお願いします。先輩(せんぱい)」
「わかりました。そのときはお世話係の先輩と後輩、ですね」
メイベルはアグニスの手を取って、うなずいた。
「楽しみにしていますね。アグニスさま」
「うん」
「すいません。アグニスさまがそこまで考えているとは知らずに、勝手なことを言ってしまって」
「あやまらなくてもいいの」
アグニスは目の前にいるなじみに、困ったような顔で、
「メイベルっていつもそう。自分じゃなくて、他の人のことを優先しちゃうくせがあるの」
「そうでしたっけ?」
「そうだよ。子どもの頃、アグニスがメイベルに火傷をさせちゃったときも、泣きじゃくって……震えながら、でも『なんでもないです』って言ってたじゃない」
「あれは失敗でした。ちゃんと、笑って言うべきでした」
「……もう。メイベルってば」
アグニスはメイベルの手を取った。
「でも、よかった。こうしてまた、メイベルと友だちになれて」
「私もです、アグニスさま」
メイベルは優しい笑みを浮かべて、アグニスの髪をなでる。
「けれど、他の人がいるときは、もうし言葉遣いを考えた方がいいかもしれませんね。ライゼンガ將軍は許してくださいましたけれど、一応、分と立場があるのですから」
「わかってる。だからふたり……ううん、トールさまも含めて、3人でいるときは、気にしないことにしたいので」
「わかりました。3人でいるときだけですよ?」
「わかったの。それから……これを」
アグニスは、メイド服のポケットから、黒い石を取り出した。
小さな石だった。小指の爪ほどもない。
その石を両手に載せて、アグニスは、
「これは、前にアグニスが領土で見つけた石です。これを、トールさまに渡してしいの」
「錬金(れんきんじゅつ)の素材ですね?」
「さっき、トール・リーガスさまは、錬金の素材になりそうなものをしい、っておっしゃってたので。これは小さすぎて、使えないかもしれないけど」
アグニスは小さな黒い石を見つめながら、続ける。
「これは高溫でも溶けない……不思議な石。だからお守りに持っていたの。これならトールさまが興味を持ってくださるかな……って」
「わかりました。でも、アグニスさまが直接渡された方がいいんじゃないですか?」
メイベルは首をかしげた。
「その方がトールさまも喜ばれると思いますよ?」
「そ、それは……」
アグニスの頬が真っ赤になった。
メイド服のを、真っ白な手の平で押さえる。
そのがしずつ赤くなっていくのを見て、メイベルは『健康増進ペンダント』が順調に効果を発揮しているのだと再確認。
彼はうなずきながら、アグニスの言葉を待つ。
「い、今はやっぱり……顔を合わせるのが恥ずかしいかな。出會ってから今日までの間に、トールさまには……々と見られてしまったので」
「それは……もしかして」
メイベルは、思わず熱くなった頬を押さえた。
「さっき、下著をつけずにジャンプしたときのことですか? でも、あれは一瞬のことですし、それほど気にする必要は……」
「…………」
「あれ? 違いました?」
「……そ、それは」
「教えてください、アグニスさま。トールさまにお仕えするときの參考にしますので」
「參考にするの!?」
「私もトールさまにはご恩がありますから。このメイベルは……す、なくとも、さっきのアグニスくらいのことは……その、トールさまがまれるなら、して差し上げても……」
「……わ、わわわ」
「……ア、アグニスさまは、他にどのようなことをされたのですか?」
「…………えっと」
「照れていらっしゃいます。『健康増進ペンダント』もってます。ということは、さっきのジャンプと同じようなものだと考えられますね」
「メ、メイベル? 推理(すいり)しないで!!」
「で、でもでも……私には、トールさまのお世話係なのです。アグニスさまの先輩(せんぱい)でもあります。トールさまがよ、よろこばれるのであれば、アグニスさまと同じことをする覚悟が……」
「ま、待ってメイベル。待って」
あわあわするメイベルとアグニス。
メイベルは覚悟を決めたようにうなずいて、アグニスは真っ赤になった顔を押さえてる。
それからふと、メイベルは「はっ」と顔を上げて、
「そういえばトールさまとアグニスさまは、昨日、お風呂場で出會ったのですよね? ということは、あの場所でなにかあったのでしょうか。もしかしたら湯沸かし場のサラマンダーなら、なにか知ってる可能が──」
「降參! メイベル、推理力(すいりりょく)ありすぎ! 教えるので!!」
こうしてアグニスは、昨日湯沸かし場でサラマンダーたちと一緒に、服を著ないで『火の魔力』をる練習をしていたことを話して──
ついでに、それにトールがどう反応したのかも語ってしまい──
最終的にメイベルとアグニスは「このことは、トール以外には緒にする」という約束をわしたのだけれど──
メイベルがトールに仕えるための新たなイベントを思いついてしまったのは、また、別の話なのだった。
第25話は、明日の午後6時ごろに更新する予定です。
このお話を気にった方、「続きが読みたい」と思った方は、ブックマークや、広告の下にある評価をよろしくお願いします。更新のはげみになります!
【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】
▶9/30角川ビーンズ文庫で書籍版発売しました! ▶コミカライズ、決定しました! 絶望、悲しみのドン底に落とされたナタリー。クソ夫に死んでみろと煽られ、カッと勢いで死んだ…と思ったら!? 同じ失敗はもうしない! ユリウス・ファングレー公爵に嫁いだ伯爵令嬢ナタリー・ペティグリューの逆行劇! ※皆様のおかげで、完結まで書けました…!本當にありがとうございます…!
8 64【書籍化&コミカライズ】私が大聖女ですが、本當に追い出しても後悔しませんか? 姉に全てを奪われたので第二の人生は隣國の王子と幸せになります(原題『追放された聖女は、捨てられた森で訳アリ美青年を拾う~』
☆2022/11/4 スターツ出版様 ベリーズファンタジーより発売予定です☆ 改題「私が大聖女ですが、本當に追い出しても後悔しませんか? 姉に全てを奪われたので第二の人生は隣國の王子と幸せになります」 ☆2022/6/12 白泉社マンガpark様にてコミカライズです☆ 原題「聖女は、捨てられた森で訳アリ美青年を拾う~今の生活が楽しいので、迎えに來られても帰りたくありません!~」でコミカライズ中です。 リアは九歳のとき、十二歳になる姉プリシラについて神殿に行く。そこで、姉妹ともども聖女と認定されてしまう。 この國ではひと家庭で二人以上聖女認定された場合、一人を差し出さなければならない。両親は聡明で美しく魔法を使えるプリシラを手放すのが嫌で、迷わず妹のリアを差し出した。 神殿に召し上げられたリアは聖女候補として厳しい修行を積み、六年後晴れて聖女となる。神殿の聖女の中でも、最も強い神聖力をもつリアは、神託により王太子の婚約者となった。 リアは金髪で美しく優しい王太子に淡い戀心を抱く。しかし、順風満帆に見えた將來に陰りが生じはじめた。 アリエデ王國の最北にある黒の森で魔物が大量発生したのだ。リアはこの國の聖女として討伐隊に參加しなければならない。王都と愛しい王太子に別れを告げ討伐隊とともに旅立った。 そして二年にわたる戦いののち、魔物の封印をなしとげ、王都に凱旋するはずだった。 だが王都に帰ったリアを待ち受けていたのは同僚聖女と戦友のうらぎり。 王太子との婚約もいつの間にか破棄されていて、新たに姉のプリシラが護國聖女の名を冠し、王太子の婚約者におさまっていた。 魔物討伐を長引かせた責をおわされ、役立たずの聖女として國を追放されたリアは、西側の隣國との緩衝地帯である惑い森へ捨てられる。そこにたくさんの魔物が巣食っていて……。 森をさまよううちに彼女は、魔獣に襲われた瀕死の金髪美青年を拾う。 ≪全51話予約投稿済み! 毎日18時ごろ更新予定≫ 流行りの追放聖女テンプレのつもり。聖女は無自覚でざまぁ(予定)します。題そのものがあらすじです。足の不自由な人が出てきます。タグ注意、地雷のある方はお逃げください。 誤字脫字報告ありがとうございます!!
8 95嫌われ者金田
こんな人いたら嫌だって人を書きます! これ実話です!というか現在進行形です! 是非共感してください! なろうとアルファポリスでも投稿してます! 是非読みに來てください
8 133殺人狂の隣に
―あなたは正義と愛どちらを貫く?― 川橋高校3年、橘明日翔はごく平凡で充実した毎日を過ごしていた。しかし、とある事件がきっかけに彼の人生は崩れゆく。 *ほぼ毎日投稿 *グロ描寫あり
8 196魂喰のカイト
――《ユニークスキル【魂喰】を獲得しました》 通り魔に刺され、死んだはずだった若手社會人、時雨海人は、気がつくと暗闇の中を流されていた。 その暗闇の中で見つけた一際目立つ光の塊の群れ。 塊の一つに觸れてみると、なにやらスキルを獲得した模様。 貰えるものは貰っておけ。 死んだ直後であるせいなのか、はたまた摩訶不思議な現象に合っているせいなのか、警戒もせず、次々と光の塊に觸れてゆく。 こうして數多のスキルを手に入れた海人だったが、ここで異変が起きる。 目の前に塊ではない、辺りの暗闇を照らすかのような光が差し込んできたのだ。 海人は突如現れた光に吸い込まれて行き――。 ※なろう様に直接投稿しています。 ※タイトル変更しました。 『ユニークスキル【魂喰】で半神人になったので地上に降り立ちます』→『元人間な半神人のギフトライフ!』→『魂喰のカイト』
8 74ダーティ・スー ~物語(せかい)を股にかける敵役~
ダーティ・スーとは、あらゆる異世界を股にかける汚れ役専門の転生者である。 彼は、様々な異世界に住まう主に素性の明るくない輩より依頼を受け、 一般的な物語であれば主人公になっているであろう者達の前に立ちはだかる。 政治は土足で蹴飛ばす。 説教は笑顔で聞き流す。 料理は全て食い盡くす。 転生悪役令嬢には悪魔のささやきを。 邪竜には首輪を。 復讐の元勇者には嫌がらせを。 今日も今日とて、ダーティ・スーは戦う。 彼ら“主人公”達の正義を検証する為に。
8 93