《【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-》第26話「お茶會を開く」
──トール視點──
翌日、アグニスとライゼンガ將軍は、領土へと帰っていった。
將軍は最後に「我が領土に、お主の工房と住居を用意する」と言ってくれた。今回の件へのお詫びとお禮も兼ねて、そういうことになったらしい。
そのうち下見に行っていいか聞くと、ライゼンガ將軍はうなずいてくれた。
アグニスも「楽しみにしてるので」って言ってた
アグニスの方は、私服姿で人前に出るのは初めてなのか、すごく照れた様子だった。
ちなみに彼が著てたのは、メイベルが渡した空のワンピースだ。まだアグニスは私服を持ってないから、メイベルが貸してあげたらしい。
將軍は「領土に戻ったら、アグニスに似合う服を仕立てるつもりでおります。楽しみにしてください」と言ってたっけ。
俺もそのうち、工房用の土地の下見に行くことになる。
そのときは、アグニスの私服姿を見せてもらうことにしよう。楽しみだ。
そうして俺はアグニスと將軍を見送って──
部屋に戻り、錬金(れんきんじゅつ)の研究を続けることにしたのだった。
「アグニスがくれたこの石は……『隕鉄(いんてつ)』か」
俺は『簡易倉庫』の中で、黒い石の鑑定(かんてい)をしていた。
アグニスはメイベルを通して、俺に錬金の素材をくれた。
黒い、小指くらいの大きさの石だ。
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高溫でも変化しない石で、鉱山の近くに落ちていたらしい。
『創造錬金(オーバー・アルケミー)』で鑑定すると──
──────────────────
『隕鉄(いんてつ)』
暗い宙(そら)より降ってきた石。
地上にある質とは別の屬・組を持つ。
屬:宙(そら)・宙・宙・闇・闇・地
──────────────────
「『宙屬(そらぞくせい)』なんて初めて見たよ」
そう思ったら『創造錬金(オーバー・アルケミー)』が反応した。
『隕鉄の鑑定に功したことにより「宙屬」に覚醒しました』
『作したアイテムに「宙屬」を付加することが可能です』
……魔王領に來てから、新しい屬がどんどん、使えるようになってきた。
『木・火・土・金・水』の、異世界の5行屬。
空から來た隕鉄に宿った『宙屬(そらぞくせい)』。
どれも、帝國にいたら知らなかったものばかりだ。
なんだか、わくわくする。
素材と居場所をくれた魔王ルキエに謝しないとな。
彼のためにも、新しいアイテムをどんどん作ろう。
『簡易倉庫』の中には、爐(ろ)と作業臺が設置されている。
ミノタウロスさんたちが部屋に屆けてくれたのを収納したものだ。
『簡易倉庫』のアイテム整理機能を利用して、いい合に配置してある。
小さなかまどとテーブルは、メイベルが持ってきてくれた。
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橫には茶が載(の)ったトレーがある。
こっちは俺とメイベル、魔王ルキエのためのお茶會スペースだ。
今日も午後3時ころに、みんなで集まることになっている。
「陛下も、楽しんでくれればいいけど」
俺は工房を出た。
隕鉄(いんてつ)でアイテムを作るには素材がいる。
適當なものを、隣の部屋の倉庫で見つけるつもりだったんだけど──。
「こっち部屋は、もうちょっと整理しないとなぁ」
自室の隣にある倉庫は、床が見えないくらい、様々なものが散らばっている。
魔王とメイベルは『ガラクタ』と言ってたけど、俺にとっては寶の山だ。
「とりあえず分類しよう。『簡易倉庫』にれておくものと、部屋に置いとくものを分けておかないと」
まずは本から。
勇者の世界の本は貴重だ。今後のアイテム作りのヒントになる。
濡らしたり破いたりしないように、自室の方に置いておくべきだろう。
「まずはどれから片付けようかな」
まず重要なのは『通販カタログ』のように、異世界のアイテムがたくさん載った本だ。
探すと……同じようなものがもう一冊あった。
念のため、容を確認してみよう。
「……なるほど。興味深いな」
座ってみた。
読み始めた。
1時間が経過した。
「──はっ! いかんいかん」
早く片付けないとお茶會の時間になってしまう。
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やっと魔王ルキエの予定が合って、初めての3人でのお茶會だ。
その前に片付けないと。
次の本は……これは、こっちの世界の本か。
魔王領ができたころの記録だ。書いたのは、初代魔王さまかな。
この地に住む魔族や亜人の種類、その特徴や生活環境なんかが書かれている。
「……興味深いな」
座り直した。
読み始めた。
2時間半が経過した。
「いかん。片付けが進まない……」
もう本は読まない。集めるだけにしよう。
そんなことを考えていると──
「トール。部屋におるのかー?」
ノックのあと、隣の部屋のドアが開く音がした。
「──なんだ。おらぬではないか」
「ルキエさま……勝手にられては……」
「トールは、お茶會の時間になったら、部屋にって良いと言っておったではないか。余は、待ちきれぬのじゃ」
俺の部屋から、メイベルと魔王ルキエの聲がした。
お茶會の時間になったみたいだ。俺もあっちの部屋に移しよう。
読みかけの本は……この木箱にでもれておこうかな。
そう思って、俺が適當な木箱を持ち上げると──
「──あれ?」
木箱の下に、鞘(さや)にった剣があった。
見覚えのある形をしていた。
「玄関の彫像(ちょうぞう)が持っていたものと同じだ。魔剣か?」
よく見ると、違う。
長さが短すぎる。彫像が持っているのは長さ1メートル強の大剣だけど、これは長さ1メートルもない。
柄と鞘の模様も違う。彫像の魔剣は複雑な模様が刻まれているが、これは簡略化されたものだ。
「『鑑定把握(かんていはあく)』」
俺は『創造錬金(オーバー・アルケミー)』の『鑑定把握(かんていはあく)』を発。
魔剣について調べてみると──
──────────────────
『魔剣 (レプリカ)』
能力:強度アップ。
屬:特になし。
──────────────────
「なるほど。魔剣のレプリカか」
「トール。そちらにおるのか?」
「魔王陛下ですか。どうぞ」
ちょうどいいや。魔王ルキエに聞いてみよう。
「俺も陛下に會いたいと思ってました。ちょっと話をうかがってもいいですか?」
「う、うむ。では、失禮する」
壁側のドアが開き、金髪の魔王が顔を出す。
彼は俺を見て、うれしそうに笑った。
今の魔王ルキエは仮面もローブもに著けていない。素顔のままだ。
リボンがたくさんついた、漆黒(しっこく)のワンピースを著てる。
視線に気づいたのか、彼は俺の前で、くるり、と回ってみせる。
「お似合いですよ。魔王陛下」
「……ルキエでよい」
魔王ルキエは頬(ほお)を染めて、橫を向いた。
「お主はすでに、余の素顔を知っておる。そういう者に陛下と呼ばれるのは……よそよそしくて嫌なのだ」
「いや、さすがにそういうわけにも」
「ならば命令する。我を友と思うのであれば、このルキエを名前で呼ぶのだ」
「そんな命令ありなんですか?」
「帝國では、魔王は暴君(ぼうくん)ということになっておるのだろう?」
「まぁ、そうですけど」
「で、あれば、わがままを言っても構うまい」
にやり、と、白い歯を見せて笑う魔王ルキエ。
俺は両手を挙げて降參のポーズ。
「わかりました。ルキエさま」
「素直でよい。ところで、倉庫でなにをしておったのじゃ?」
「こんなものを見つけました」
俺は鞘にったままの剣を差し出した。
「これは、魔剣のレプリカですかね?」
「魔剣のレプリカじゃと?」
「付加されている効果は、強度アップだけですけど」
俺は魔剣を見つけた経緯と、その能力について説明した。
「あの彫像が持っているものとは長さが違いますけど、なんなんでしょう?」
「トールはどう思うのだ?」
「素材がただの鉄ですし、付加も強度アップだけなので、おそらくは試作品ですね。失われた魔剣を再現しようとした鍛冶屋(かじや)がいたんでしょう。でも、魔剣には遠く及ばなかったので放置しておいたんじゃないかと。刃も潰して、切れないようにしてありますからね。廃棄品(はいきひん)ですね」
「すごいなお主は。正解だ」
ルキエは苦笑いした。
「余のおじいさまの時代に、魔剣を復活させようという計畫があったのだ。そこでエルフとドワーフが協力して魔剣を作ったのだが──」
「実際は、強度アップが限界だった、というわけですか」
「うむ。お主の見立て通りじゃ」
「この剣、もらってもいいですか?」
俺が聞くと、ルキエはきょとん、とした顔で、
「なぜ聞くのだ? ここはお主の部屋だぞ。いいに決まっているだろう」
優しい笑みを浮かべながら、當たり前のようにうなずいた。
年相応──15歳のの顔で。
そういうのはずるいと思う。
友だちとして、々してあげたくなってしまう。
「ルキエさま」
「どうした。トールよ」
「ルキエさまはとてもかわい──」
いや、魔王陛下に対して「かわいい」は失禮か。
いくら友と呼ばれたからといって、最低限の禮儀はわきまえないと。
「ルキエさまは大変に魅力的(みりょくてき)なのですから、仮面のない狀態でうかつに笑いかけるのはよくないと思います。なんでもしてあげたくなりますので」
「──な!?」
ルキエが目を見開いた。
「な、なにをいきなり!?」
「いえ、思ったことを言っただけですが」
「お、お主、そういうことをすぐ口にするのはどうかと思うぞ!!」
「あー、それはですね。俺は帝國では戦う力のない下(した)っ端(ぱ)だったんで、あんまり話ができる人がいなかったんですよ。でも、陛下──じゃなかったルキエさまやメイベルは、俺の話を聞いてくれますよね? だからうれしくて、つい」
「お主も苦労していたのだな……」
「でも、気になるなら直します」
「……直さなくてよい。率直なのは、お主の徳(びとく)であろう」
「優しいのはルキエさまの徳ですよね。そういうところ、いいと思います」
「おーぬーしーはっ!」
「だからなんで怒るんですか陛下!?」
「怒っておらぬ! それと、ルキエと呼べと言ったであろう! お主はまったく──」
「お茶が冷めてしまいますよ? 陛下。トールさま」
気づくと、ドアの向こうからメイベルがこっちを見ていた。
エルフ耳をぴくぴくとかして、なんだか、複雑そうな表だった。
「ごめん。メイベル」
「う、うむ。今そちらに行く。ではトールよ、この剣はお主のものだ」
ルキエは、床に置かれた黒い魔剣を捧げ持つ。
「その証明として、ここで、正式に下賜(かし)しよう」
「ありがとうございます。ルキエさま」
俺はルキエの顔を見上げて、それから、
「陛下──いえ、ルキエさま」
「なんじゃ、トールよ」
「このレプリカ魔剣を、本の魔剣に作り替えてもいいですか?」
「なんじゃと?」
「俺の夢のひとつは『帝國にある聖剣を超える剣を作ること』なんです。でも、俺には戦闘能力がないですからね。すごい剣を作っても、寶のもちぐされになっちゃうんですよ」
「……なるほど」
「だから、すごい魔剣を作って、ルキエさまに使ってもらいたいんです。將軍から聞きましたけど、近々魔の討伐(とうばつ)に行かれるんですよね? その時にでも使ってもらえれば」
「その気持ちはうれしいぞ。ありがとう、トールよ」
ルキエは、俺の頭に手を乗せた。
それから、すぐに優しい笑みを浮かべて、
「じゃが、そこまで気を遣う必要はないのじゃよ」
「気を遣う、というと?」
「余が自分自の的な弱さを気にしていることを……お主は、考えてくれているのじゃろう?」
ルキエは両手で、俺の頬(ほほ)を包み込んだ。
息がかかるくらいの距離で、靜かにつぶやく。
「だが、もういいのじゃよ。お主のおかげで、余はライゼンガ將軍より絶対の忠誠を得ることができた。そのことが広まれば、余の強さを疑っていたものたちも態度を変えるじゃろう。余は……近いうちに仮面を外すこともできるかもしれぬ」
「……陛下」
「じゃから、お主が急いで魔剣を作る必要などないのじゃ。お主は、自分の作りたいものを作るがいい」
「いえ。俺としては、ルキエさまが魔剣使ってるところが見たいだけなんですが。むちゃくちゃかっこいいと思うんで」
「──な!?」
「でも……そうですか。ルキエさまが仮面を外されるなら、それに見合った魔剣じゃなきゃいけませんね。いっそ、仮面を外すと同時に真の姿を現す魔剣とかどうでしょう? 『認識阻害(にんしきそがい)』の魔剣……真の姿は魔王と共に……うん。いいかもしれません」
「待て待て待て待て!!」
ぽんぽん、ぽん、と軽く叩いてから、俺の頬をふにふにする魔王ルキエ。
「おーぬーしーは! どうしてそうなのじゃ!」
「えー。だって普通は、親しい人にマフラーとか手袋とかプレゼントするじゃないですか。そういう時って、前もって似合うかどうかを考えるでしょう? それに、もらう方の意見も聞いておかないと」
「マフラーと手袋覚で魔剣を贈(おく)るのかお主は!」
まったくもう、と、言って、ルキエは俺の顔を解放してくれた。
「それに、今回の魔獣討伐に魔剣は不要じゃ」
「そうなんですか?」
「兵を率いて行くのだ。慘敗(ざんぱい)でもしない限り、魔王自らが剣を振ることはないじゃろう?」
「確かに、そうですね」
「そうじゃ。今回必要なのは、安全に、遠距離から魔獣を攻撃できるものじゃろうな。しかも、誰でも使えるものがましい。武ではなく、戦闘を支援するアイテムがよいな。それなら宰相(さいしょう)のケルヴも、なにも言わぬはずじゃ」
「……なるほど」
いいアイディアをありがとうございます。陛下。
「攻撃支援のアイテム。遠距離から、ルキエさまたちが安全に魔獣を攻撃できるもの、ですね。わかりました。そういうものができないか、考えてみます」
「う、うむ」
俺の言葉に、魔王ルキエはし考えてから、
「余(よ)の錬金師(れんきんじゅつし)がやる気になっておるのじゃ。止める理由はあるまい。トール・リーガスよ。任せる」
「はい。魔王ルキエさま」
確かさっき読んだ本の中に、遠距離戦で使えるようなアイテムがあったような気がする。
あとで見つけて、使えるものに仕上げよう。
魔王ルキエや魔王領の人たちが、安全に魔獣討伐をするためにも。
「それではトールさま。お茶の時間といたしましょう」
「そうだね。じゃあ、隣の部屋へ……」
「こら、トールよ。アイテムが載(の)っている本の方をちらちらと見るでない」
ルキエが腰に手を當てて、あきれたように俺を見てる。
「お茶の時間に、大事な話をするつもりなのじゃ。ライゼンガに頼まれた書類を作るためにもな」
「書類、ですか?」
「というより、設計図じゃ。ライゼンガの領土に作る、お主のための工房と家の」
そう言って手を挙げるルキエ。
後ろに控えていたメイベルが、羊皮紙とペン、それとインクを取り出す。
「え? 工房と家って、俺の意見を取りれて作るんですか?」
「當たり前じゃろう?」
「さっきトールさまもおっしゃったじゃないですか。プレゼントは、渡す相手の意見を聞いて選ぶものだと」
ルキエが笑い、メイベルは俺に向かって片目をつぶってみせた。
「ですので、お茶を飲みながらお話をしましょう。トールさまが近い未來、手にれる工房とおうちについて」
「うん。そうだね」
「あ、でも、お主の本宅はここじゃからな。あちらの領土に行きっぱなしになるでないぞ? わかっておるじゃろうな」
「わかってます。陛下」
「……ルキエと呼べと言ったじゃろう?」
それから俺たちは『簡易倉庫』の中へ。
3人でお茶を飲みながら、將軍の領土に作る工房と家の間取りについて話をしたのだけど──
「トールよ。お主は工房の話ばかりではないか。しは居住スペースにこだわったらどうなのだ?」
「うーん。そっちは、寢て起きる場所があればいいかな、と」
「いけません。住む場所は大切です。健康のことも考えてくださらないと」
そう言われても、居住スペースにあんまりこだわりはないんだけど。
帝國にいたころに住んでた役所の宿舎も、部屋にはベッドがあるだけだったからなぁ。
かといって公爵家(こうしゃくけ)の屋敷(やしき)ことは思い出したくもないし……。
「居住スペースの方は、メイベルが考えてくれる?」
「いいのですか?」
「もちろん。向こうでも、の回りの世話をしてもらうことになるだろうし、メイベルが使いやすいようにしてくれればいいよ」
「わかりました! お任せください!!」
「ずるいぞメイベル。余にも考えさせよ!」
「はい。ではふたりで考えましょう。陛下」
俺たちはそれぞれ、新居のアイディアを出すことにした。
──そして、みんながお茶を飲み終わったころ。
「よし。工房の方はこんなじかな」
「居住スペースもできました。トールさま」
「確認してくれ。トールよ」
メイベルとルキエは、居住スペースの設計図を俺に見せてくれた。
結構、きれいに描かれていた。
かなり部屋數が多い。建てるのはライゼンガ將軍だけど、予算とか大丈夫かな。それに──
「寢室の部分を書いたのはメイベル?」
「はい!」
「なんでベッドが2つあるのかな?」
「トールさまのお世話をするためです」
「3人はれそうなお風呂場は?」
「トールさまのお世話をするためです」
「もうちょっと詳しく」
「トールさまは錬金のお仕事をされるのですから、お風呂のときは他の人の手で、すみずみまでを洗った方がいいと思うのです。たとえばに木片や金屬片などがついていた場合、錬金の作業中に落ちて混ざってしまうかもしれませんから」
理にかなってるな……。
まぁいいや。このまま將軍に渡そう。
おかしいところがあったら、ライゼンガ將軍が直してくれるだろ。
「……なぁ、メイベル」
「どうされましたか、陛下」
「お風呂場が広いのはよいとして、その隣の湯沸(ゆわ)かし場も妙に広いような気がするのじゃが。これにはどういう意味があるのじゃ?」
「そ、それはですね……」
メイベルはなぜか、顔を真っ赤にして、
「トールさまが、ご自宅を錬金で改造したくなることもあると思いますので、余裕をもたせた作りにしてみたのです」
「なるほど! さすがメイベルじゃ」
「うん。確かに、それはあるかもしれない」
勇者の世界の『湯沸かしアイテム』も、そのうち見つかるかもしれないからね。
そしたら俺も、自宅の湯沸かし場を改造したくなるだろう。
そうしやすいようにメイベルはスペースを取ってくれたってことか。
「ありがとう。メイベル」
「い、いえいえ。トールさまと私がこの家に住むことを考えたら……あの場所には、踴(おど)れるくらいのスペースがあった方がいいと思いますから……」
「でも、コストがかかりそうだからね。ライゼンガ將軍が駄目だって言ったらあきらめようね」
「それは大丈夫だと思いますよ? トールさま」
そう言ってメイベルは、にやりと笑う。
「きっとアグニスさまが口添えしてくださいます。あの方なら、きっとこうした意図を(・・・・・・)理解してくださるはずですから」
「……そうなの?」
「そうなんです」
とりあえず自宅と工房の図案は、このままライゼンガ將軍に提出することにした。
今ごろ、將軍とアグニスはどうしてるかな……?
魔獣討伐(まじゅうとうばつ)のことで、帝國と話し合うって言ってたけど、し心配だな。帝國の方が、魔王領に無理難題(むりなんだい)をふっかけなければいいんだけど。
帝國がなにか言ってきたときのために、『遠距離戦用のマジックアイテム』を作っておいた方がいいな。
帝國を警戒させることなく、魔王領が危険を冒すこともなく、魔獣を倒せるアイテム──そういうものがあれば、向こうとの渉が決裂(けつれつ)しても問題はないわけだし。
そういうものも『通販カタログ』にはあると思う。
なんたって、あれは勇者の世界のアイテムリストなんだから──
──そんなことを考えながら俺は、ルキエとメイベルとのお茶會を楽しんだのだった。
第27話は、明日の午後6時ごろに更新する予定です。
このお話を気にった方、「続きが読みたい」と思った方は、ブックマークや、広告の下にある評価をよろしくお願いします。更新のはげみになります!
ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最兇生體兵器少女と働いたら
大規模地殻変動で崩壊した國の中、その體に『怪物』の因子を宿しているにもかかわらず、自由気ままに暮らしていた元少年兵の青年。 彼は、數年越しの兵士としての戦闘の中、過去に生き別れた幼馴染と再會する。 ただの一般人だった幼馴染は、生き別れた先で優秀な兵士となり、二腳機甲兵器の操縦士となっていて……!? 彼女に運ばれ、人類の楽園と呼ばれる海上都市へ向かわされた青年は……。 気がつけば、その都市で最底辺の民間軍事會社に雇用されていた!! オーバーテクノロジーが蔓延する、海上都市でのSFアクションファンタジー。
8 156転生して帰って來た俺は 異世界で得た力を使って復讐する
*この作品は、8~9割は殘酷な描寫となります。苦手な方はご注意ください。 學生時代は酷い虐めに遭い、それが影響して大學に通えなくなってからは家族と揉めて絶縁を叩きつけられて獨りに。就職先はどれも劣悪な労働環境ばかりで、ブラック上司とそいつに迎合した同僚どもにいびられた挙句クビになった俺...杉山友聖(すぎやまゆうせい)は、何もかも嫌になって全て投げ捨てて無職の引きこもりになって......孤獨死して現実と本當の意味でお別れした...。 ――と思ったら異世界転生してしまい、俺に勇者としての素質があることに気付いた國王たちから魔王を討伐しろと命令されてしぶしぶ魔族たちと戦った末に魔王を討伐して異世界を平和にした。だがその後の王國側は俺は用済みだと冷たく言い放って追放して僅かな褒賞しか與えなかった。 だから俺は―――全てを壊して、殺して、滅ぼすことにした...! これは、転生して勇者となって最終的にチート級の強さを得た元無職の引きこもり兼元勇者による、全てへの復讐物語。 カクヨムにも同作品連載中 https://kakuyomu.jp エピソードタイトルに★マークがついてるのは、その回が過激な復讐描寫であることを表しています。
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8 176一臺の車から
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