《【書籍化】馴染彼のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった》注目を浴びたらクラスメイトに助けを求められた

その日のホームルームで、男両方を合わせたリレーの順番が発表されると、教室は授業の時以上の大騒ぎになった。

「一ノ瀬くん、イケメンなだけじゃなくて足まで速かったの……!?」

「運部でもないのにすごすぎない!?」

「あれ? でも一年の育祭では別に注目されてなかったよね。なんで?」

「そんなことより、一ノ瀬くん、かっこよすぎない? スポーツ萬能のイケメンって……好きになっちゃいそう……っ」

子たちがざわつきながら、俺のことをチラチラ見ている。

これはかなり気まずい。

足が速いだけで好きになるって、原始的なする子もいるんだな……。

◇◇◇

「一ノ瀬くん、また注目されてるね」

ホームルームが終わった後、帰り支度をしながら雪代さんがそう聲をかけてきた。

「雪代さん……。まあ、今回も一過のものだよ。將來的に運選手を目指すわけじゃないなら、足の速さなんて役に立つポイントないし」

「そうかな。學校の中ではヒーローだよ? 私も一ノ瀬くんみたいに運神経がよかったらなぁ……」

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雪代さんがはぁっと重い溜息をつく。

「スポーツ、苦手なの?」

「うん……。とくに走るのが……。だからリレーってすごく憂鬱なんだ。――ね、一ノ瀬くん。コツってないかな」

「どうだろ。あるのかもしれないけど、俺はわかんないな」

「そっか……。足の速い人に走り方を教えてもらったら、しはマシになるんじゃないかなって思ったんだけど……」

それは一理あると思う。

でも、俺なんかじゃなくて、走りに詳しいやつを頼らないとだめだろうけれど。

雪代さんはしょんぼりとして、機の上に突っ伏してしまった。

ふわふわした髪が窓からり込む風で揺れている。

……なんか床にぺたんと寢ているシーズーみたいでかわいいな。

子は絶対喜ばないであろう比喩だけど、ついついそんなことを考えてしまう。

「……育祭、休みたい……」

「そんなに嫌なの?」

「そんなに嫌なの」

オウム返しをしてきた雪代さんが、しだけ頭をあげて、いたずらっぽく笑う。

うーむ。

何か力になれればよかったんだけどな……。

「なあ、一ノ瀬。ちょっといいか?」

突然、話しかけられ、雪代さんと二人で聲の主を振り返る。

俺たちの機の前に立っていたのは、蓮池千秋というクラスメイトだ。

長が一八〇センチを超える長で、鋭い奧二重が印象的な強面タイプの男である。

部活は陸上部で、今朝のタイム計測ではクラスで二位の記録を出し、リレーのトップバッターに選ばれていた。

そんな蓮池が俺に何の用だというのだろう。

軽く首をひねりながら、次の言葉を待つ。

「――聞きたいことがある。おまえ、どれぐらい本気でリレーに挑むつもりでいる?」

「本気って……?」

「死ぬ気で勝ちに行く気があるのかと聞いている」

「いや、死ぬ気はないよ」

俺が即答すると、蓮池は眉間の皺を深くさせた。

「……それでは困る」

なんとも要領を得ない會話だ。

「言いたいことがあるんだよね? 遠慮せず言って」

「……わかった。俺は、今回のリレーで何があってもアンカーになるつもりでトレーニングしてきた。だが、一ノ瀬にあっさり記録を抜かれてしまった」

「ああ、アンカーの座を譲ってほしいって話? それなら別に――」

「違う。俺はおまえに負けただ。それは認める。だから俺の代わりに、命がけで二組のアンカーを打ち負かしてしいんだ……!」

俺と雪代さんは思わず顔を見合わせた。

さっきから『死ぬ気』だの『命がけ』だの選ぶ単語がやけに仰々しい。

「二組に何か負けられない理由でもあるの?」

「二組じゃない。二組のアンカーに選ばれている桐ケ谷太一、あいつをなんとしても打ち殺してやりたい……っ」

だから単語の選び方……!

って待てよ。

「桐ケ谷太一って陸上部の?」

「ああ」

「甘ったるい顔したイケメンだよね?」

「いかにもたらしっぽいだらしのない顔をした男だ!」

そ、そういう言い方もあるか。

でも、どうやら俺の思い描いているヤツと蓮池の言っている男は、同一人のようだ。

俺が今朝も駅のホームで見た同級生、つまり花火の相手がその桐ケ谷だった。

「なんで桐ケ谷をそんなに負かしたいんだ? 同じ陸上部同士だから、ライバル関係にあるとか?」

「あいつは! 俺の彼をッ! 寢取ったんだ……っ!!」

「寢取ったって……」

とんでもない単語が飛び出し、俺は慌てて雪代さんを振り返った。

はかすかに頬を染めて、眼鏡の下の瞳を揺らしている。

そりゃあ揺もするよな。

真晝間の教室で話すような容じゃない。

でも怒りに我を忘れているのか、蓮池は俺と雪代さんから向けられる戸いの眼差しにも気づかず、悔しそうに歯を噛みしめている。

あれ、でも妙だな。

蓮池の彼を奪ったらしい桐ケ谷は、數日前から花火と一緒に登校している。

花火が桐ケ谷の腕にくっついたりしていたから、ただのお友達同士というわけではないだろう。

じゃあ蓮池の彼はどうなったんだ……?

俺が疑問を抱いていると、蓮池は絞り出すような聲で説明を続けた。

「……寢取られたことを恨んでるんじゃない。それは俺が不甲斐なかったから悪いんだ。俺から奪ったって、大事にしてくれたんならよかったんだ。俺だって潔くを引いたさ! でもあの野郎は、そうやって奪った俺の元カノをあっさり捨てて、一年生の子に乗り換えやがったんだ! 俺はあいつがどうしても許せない……!」

あー……そういうことか……。

「……あんたも大変なんだね」

他に言葉が出てこず、そう言って勵ますと、俺の機にバンッと手をついた蓮池がグワッとを乗り出してきた。

ち、近いな……。

「一ノ瀬……! おまえの実力を見込んで、頼みたい! 俺の代わりにあの調子に乗ったクズ男を懲らしめてやってくれ……!」

「うーん……」

桐ケ谷の新しい相手が花火だということはどうでもいいが、蓮池に対してはちょっと同心を抱いた。

間のいざこざの結果、苦労している人間だから、シンパシーのようなものをじてしまったのかもしれない。

的に何をすればいいの?」

「俺が走り方を教える。そうすればおまえは今より確実にタイムをばせるはずだ。そして萬全な狀態でリレーに挑んでしい!」

待てよ。

そうか。

こいつは陸上部だから、走り方に詳しいのか。

「わかった。協力してもいい。でも一個條件がある」

「なんだ。なんでも言ってくれ」

「走り方、俺だけじゃなくて彼にも教えてあげてくれる? そうしてくれるなら手を貸すよ」

そう言って雪代さんのほうを見ると、彼は「えっ」と聲を上げ、大きな目を丸くさせた。

「さっき走り方を教わりたいって言ってたから、どうかなって思ったんだけど」

「でも、私なんかのために……」

「遠慮しないで。彼を取られちゃった蓮池に同したのもほんとだから」

「……俺、彼を取られちゃったんだよな……」

やり取りを聞いていた蓮池がガクッと肩を落とす。

「さっき自分でも言ってたじゃないか」

「人に言われるとますます実させられるんだよ……」

そういうものなのか?

「で、二人はそれでいい?」

俺が問いかけると、雪代さんと蓮池は同時に頷いた。

「私はお願いできるなら、すごく助かる……!」

「俺も異存はない。二人ともよろしくお願いします」

「こちらこそ」

こうして俺は、雪代さんのコーチ役を依頼する代わりに、花火の彼氏を全力で負かしに行くことになったのだった。

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