《【書籍化】馴染彼のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった》俺は隅で目立たずいたいのだが……
レビューを2件もいただいてしまいました!
ありがとうございます!
育祭のお疲れ様會には、クラスメイトのほとんどが參加していた。
蓮池によると、クラス委員がちゃんと全員に聲をかけてくれたらしい。
俺の今までの経験から言うと、普通は絡みがないとそもそもわれないものだから、なかなか珍しいパターンだなと思った。
まだクラスメイト達のことは詳しく知らないけれど、クラス委員の二人はなくとも仲間外れを作ろうというようなタイプではないらしい。
ただ、われたところで、大勢と群れるのが苦手な人間もいるし、參加するかどうかの意思は本人に委ねられたとの話だ。
俺は參加する前に蓮池に、目立ちたくないから歌は歌いたくないと伝えておいた。
おかげで歌を強要されることもなく、隅の席に座っていられた。
隣には同じように歌を歌わない雪代さんがいる。
ただまったく音楽を知らないわけでもないので、時々「この曲いいね」「俺も歌詞が好き」などという言葉を雪代さんとわし合った。
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「次は俺が歌う! これは俺から一ノ瀬へ送る友の歌だ。聞いてくれ!」
「……!?」
突然マイク越しに名指しされ、ぎょっとなった。
周囲から、「なんだなんだ」「ホモー? いいぞもっとやれー!」などというヤジが飛ぶ。
「俺が彼に振られたのはみんな知ってると思う」
ねとられー、NTR-、などというヤジも飛びはじめた。
うわ、蓮池が自分でばらまいた刃で傷を負って、涙目になってる。
「その憎き寢取り男に、今日、一ノ瀬が報復してくれた! 一ノ瀬、ほんとにありがとう!!」
蓮池の告白で、今日あったことを本當の意味で理解したクラスメイト達は、驚きの聲をあげたあと、一斉に拍手しはじめた。
「一ノ瀬くん、かっこよすぎ……! リレーで活躍しただけじゃなくて、友達のための行だったなんて……!」
「やばい、男同士の友……むねあつ……!!」
俺は雪代さんの練習に付き合ってしかっただけなんだけどと言っても、大盛り上がりなクラスメイトたちは聞いちゃいない。
「まいったな……」
俺がソファーにを沈めて呟くと、雪代さんが勵ますように微笑んでくれた。
「一ノ瀬くんはヒーローだもん。みんなが騒ぐのも無理はないよ」
「ヒーローって……」
そこからみんな、友ソング縛りをはじめて、いかに暑苦しい友を歌った曲を探してこれるかで競いはじめた。
ほとんど大喜利狀態で、強烈な歌詞が出てくるたび笑が起きる。
そんなじで、広いルームには友を歌った歌と、楽し気な笑い聲が絶えなかった。
でも、どうやらこの會を楽しんでいる人間だけではないらしい。
トイレに立ったときに、廊下の隅でクラスの子二人がひそひそと話しているのを、偶然聞いてしまったのだ。
「皆口さんたち、ほんと苦手なんだけど。一ノ瀬くんに近づきたくて仕方ないじでしょ。ああいうのキモくない? 雌犬かよ」
「ねー、なんかああいうのはちょっとねー」
「自分たちがクラスの人気者みたいなつもりでいるじゃん。勘違いするなっての。絶対みんなあいつらのこと心の中ではビッチ集団だって思ってるよ」
「うんうん、そんなじするー」
「そもそも一ノ瀬くんだけじゃなくて、他の男子ともすぐ絡みたがるのが意味不明なんだけど。男子とか存在がキモいし。あんな生きにチヤホヤされてなにがうれしいわけ? 私がそんなことされたら鳥ものだよ」
「ねー、男子は二次元だけでお願いします」
「まじでそれ!!! 男は二次元の形以外滅びろ!!!」
本當は気にせず通り過ぎるつもりだったのに、俺の名前が出たせいで、思わず足が止まった。
皆口というのは、例の読者モデルをやっているという派手な子だ。
今、緒話をしている子の名前は、殘念ながらわからない。
主にしゃべってる子のほうは、ちょっと太っていて、長い黒髪を無造作に一つ縛りにしている。
相槌を打ってる子のほうは、逆にものすごく痩せている。
ふたりとも、自分の外見を著飾ることには無頓著のようで、皆口奏達グループとは真逆のタイプだから、気が合わないのも納得がいった。
……まあ、口はちょっとね。
多分、妬みと劣等が混ざったを抱いているのだろう。
それなら斷って來なければよさそうなものだけれど、それはそれで蚊帳の外にされているじがして嫌なのかもしれない。
俺は聞かなかったことにして、靜かにその場を立ち去った。
◇◇◇
俺が部屋に帰ってしばらくすると、廊下にいた二人もこそこそ戻ってきた。
それからしして、今日の會はお開きになった。
會計係がまとめて支払いを済ませ、カラオケボックスの外に出る。
みんな立ち去りがたいようで、しばらくの間はふざけあったり、談笑したりしていた。
「クラスでこうやって集まるの初めてだけど、楽しかったね!」
「ほんとほんと! またみんなで遊びたいね」
「ねえ、一ノ瀬くん、次も來てくれる?」
「子はしつこいからなー。一ノ瀬、今度は男子だけで遊ぼう!」
「ちょっと! 男子ずるい!!」
取り囲まれてしまった俺は、苦笑しながら「じゃあ、また時間があったら」と返した。
その直後、背中のあたりがゾクッとした。
……なんだ?
強烈なを向けられているような、そんなじがして、背後を振り返る。
ビルとビルの間の暗い路地裏で、一瞬、影がいた気がしたけれど、目を凝らしても何も見えない。
……気のせいか。
「一ノ瀬くん、どうしたの?」
「あ、ううん。なんでもない」
きっと野良貓だろう。
「よかったら途中まで一緒に帰らない?」
「もちろん」
野良貓のことは頭から追い出し、俺は雪代さんに笑い返した。
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