《【書籍化】馴染彼のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった》雪代さんを守るために反撃を開始する

花火との話を終わらせて雪代さんと蓮池のもとに帰った俺は、すべての元兇が自分にあったと打ち明け、心からの謝罪をした。

「ある人とちょっと前にめて縁を切ったんだけど、その時の報復で俺の周りの人を苦しめようとしたみたいなんだ。本當にごめん……」

「一ノ瀬くん、顔を上げて……! 一ノ瀬くん全然悪くないよ……!」

「そのめた相手を今追いかけていったのか?」

「うん。俺たちの様子を見てたみたいだ。その相手が大道寺絵里花を唆して、噓をつかせたことも聞いてきた。大道寺絵里花のことは俺がなんとかするから、あと一日だけ時間をもらえるかな」

「一ノ瀬、何をするつもりなんだ? 俺も協力をーー」

「いや、俺一人に任せて」

花火と話しているときに、この件をどう解決するか頭の片隅で考えていた。

使えそうな案は浮かんだものの、場合によっては汚い手を取ることにもなりそうだ。

そんなことにこの二人を巻き込むわけにはいかない。

これは俺の蒔いた種なのだから、俺が責任を持って刈り取るしかない。

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「雪代さん、ごめんね。不安だと思うけれど、必ずなんとかするから」

「ありがとう。でも私は平気だよ。それよりめた人のことは大丈夫……?」

自分と花火の間にあったモラハラのことを的に話してもいいものなのか、この場では答えが出せなかった。

その話をしたら、被害者面をしているじになってしまうのではないだろうか?

おそらく雪代さんは俺に同して、また「一ノ瀬くんは何も悪くないよ」と言ってくれるだろう。

巻き込んでしまった俺としては、そんな狀況はできるだけ避けたい。

……でも、雪代さんには知る権利があるよな。

花火のせいでひどい目にあったのだから。

今回のことが解決したら、雪代さんと蓮池には改めて花火との間にあったことを話そう。

俺は心のうちでかにそう決意した。

◇◇◇

翌日の放課後。

昇降口の脇でできるだけ気配を消して待っていると、しばらくして目當ての人が姿を見せた。

運良く相手も一人きりだ。

壁にもたれていた俺はすっとを起こし、その人のもとへと向かった。

気配に気づいて顔を上げた相手がハッと息を呑む。

「阿川さん」

これまで知らなかった名前を呼びかける。

「ちょっと大道寺さんのことで聞きたいことがあるんだけれど」

俺がそう言うと途端に彼の顔に警戒のが宿った。

目つきが鋭くなり、あのカラオケで見せていたような表になる。

そう、彼はカラオケで口に興じていたもう一人のほうだ。

名前は阿川未來。

俺は阿川未來経由で、大道寺絵里花のSNSのアカウントを調達しようと思っている。

「大道寺さんてSNSやってるよね? 連絡が取りたいから、アカウントを教えてもらえないかな?」

「えっ。む、無理ですよ。そんなのルール違反だし。絵里花に怒られるの私なんですよ?」

「ルール違反なのはわかってるよ。でも、大道寺さんとはなんとしても連絡を取らなきゃいけないんだ。もちろん誰から聞いたかは言わないって約束する」

「でも……」

「それとも阿川さんが証言してくれる? 大道寺さんのそばにいた阿川さんなら、彼が雪代さんにいじめられてたって話が噓だってわかってたんじゃない?」

「そ、それは……」

「雪代さんは今回の件ですごく傷ついてる。だから手を貸してしいんだ」

俺が頭を下げると、阿川未來はじりっと後退した。

「悪いけど無理です。雪代さんが困ってるからなんなんですか? 私は別に雪代さんの友達じゃないし。無関係な人がどうなろうが興味ないっていうか……。そもそも絵里花が起こした問題だって、私は巻き込まれる筋合いないんで」

「大道寺さんと友達じゃないの?」

「友達っていうかオタク仲間? でも、微妙に解釈違いなとこあるから、そこまで庇えないし」

本當に迷そうな顔で阿川未來が言い放つ。

呆れすぎて、正直ちょっと笑ってしまった。

花火とは違う意味で、阿川未來も人としてどうかしていないか?

まあ、おかげで遠慮せず次の手に出れるようになった。

本當はこの手段を取らないで済むのなら、それにこしたことなかったんだけどね……。

「ただ頼んだだけで協力してもらえないことはわかった。だったら換條件を出すよ。育祭の後のカラオケで、大道寺と二人になったの覚えてる? トイレの前の廊下で」

「え」

宙を見上げた阿川未來が、不意に表を強張らせた。

その時のことを思い出したのだろう。

「な、なんでそれを知って……」

「たまたま居合わせたんだ。それで二人がクラスメイトの悪口を名指しでしてるのを聞いた。もし俺がそのことをみんなに話したらどうなると思う?」

「……!」

鬱陶しそうにしていた阿川の表が、みるみるうちに変わっていく。

「あんたたちが悪口を言ってた相手は、うちのクラスの主要メンバーだ。そんな相手と対立したら、これから一年相當しんどいことになるよね」

悪口を言われてた側がどんな態度に出るかはわからない。

ただ、たとえいじめに発展しなくても、無視されたりする可能は高い。

自分を悪く言っていた相手と仲良くお付き合いしていく義理なんてないんだから、それも仕方ない話だ。

「しょ、証拠はあるんですか……!」

「そんなものないよ」

「私は否定するんで、誰も信じないですよ」

「本気でそう思う?」

「どういう意味ですか」

「雪代さんはいじめなんかしてなかった。本人も否定した。でもクラスの雰囲気はどうだろう? みんななんとなく疑心暗鬼になって、雪代さんに疑いの眼差しを向けているよね」

「……っ」

「こういう噂は一度たったら収拾がつかないんだよ。真実がどこにあるかなんてみんな気にしていないし。相當インパクトのある逆転劇でも起こらない限り、噂の當事者が泣きを見るだけだ」

それに今もう泣きそうな顔になっている阿川未來が、縋るように俺を見上げてくる。

「SNSのアカウント教えたら、私のことだけは黙っててくれます? 絵里花が悪口を言ってたって暴するのはいいけど、私は絶対に巻き込まれたくない……!」

俺はうんざりした気持ちを隠して笑みを返した。

◇◇◇

その夜。

計畫の第二段階に取り掛かった。

ちなみに今は、阿川未來から手にれたアカウントのメモを手に、自室のベッドの上にあぐらをかいて座っている。

右手にはスマホ。

花火が大道寺とSNSでも繋がっているかはわからない。

ただ、もし繋がっていた場合、連絡を取るのに使っているアプリは百パーセント、LINEだ。

なぜなら、花火はLINE以外のアプリは全て鍵垢にするタイプで、俺以外の人間にアカウントを教えることは絶対ないからだ。

それも當然だろう。

歪んだ本音を好き放題吐き散らかしてる裏垢なんて、本を知っている俺以外に見せられるわけがない。

その點を利用しようと思う。

話は単純。

とにかくLINE以外の手段で、大道寺絵里花に連絡を取ればいいのだ。

そうすれば、すでにアカウントを換していたなんていう間抜けな理由で、俺が花火の偽だとバレたりはしない。

花火の全てを把握させられていたおかげというのが、正直微妙ではあるけれど……。

でもそのおかげで、今回こちらはかなり行しやすくなったわけだしね。

「さてと、そうと決まれば」

俺は自分のスマホにSkypeのアプリをダウンロードし、新規で花火名義のアカウントを取得した。

それから阿川未來にもらった紙を取り出し、大道寺絵里花のアカウント宛にフォロー申請を送ってみた。

メッセージを送り様子を見ていると、五分もしないうちにスマホが鳴った。

えりかち@リバ地雷死ねや : こんばんは!!!

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あ!てか今日、雪代史たちが家に來たんですよ

wwww

よし。

がかかった。

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